【感想・ネタバレ】人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのかのレビュー

あらすじ

コロナ禍で出生数が急減、このまま我々は手をこまねき「小国」への途を受容するのか。

人口は国力の源である。国際関係の基本構造は「大国」が定め、「小国」はその中で生き残る方策を考えるしかない。人口急減に直面する日本は、一億人国家の維持すら危うい状況にある。このままでよいのか。

本書は、介護保険の立案から施行まで関わり「ミスター介護保険」と呼ばれた著者が、豊富なデータと学識、政策現場での深い経験をベースに、危機的な日本の人口問題を正面から論じた超大作。

人口問題は、社会経済に深く関係し、国家存亡にも影響を与える重要テーマ。それだけに我々の価値観に関わる根深い意見対立も存在する。そこで様々な登場人物が異なる視点から語る小説形式をとっている。

政府、政党、国会がどのように関わりながら政策・法案が練られ、諮られていくのか、超リアルなストーリーに沿って、人口問題の深刻さを知り、解決策の手がかりが得られるまったく新しいタイプの書籍である。

※本書はフィクションである。登場人物は著者による創作で、モデルは存在しない。しかし、登場人物が語り、取り組む人口減少問題の内容は、すべて公開資料に基づく事実である。

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Posted by ブクログ

小説形式ではあるものの、言及されているデータはほぼほぼ実際のもので、現実に起きている少子化問題をわかりやすく描いている。
行政による法律提案から国会での審議までの様子も描かれていて、元官僚の著者ならではの臨場感が感じられた。

データを多用しており、ちょっと間違うと単なる資料的な文章になりそうなところ、小説形式にされているため読みやすく、内容も整理されていてとてもわかりやすかった。

少子化は現実にまだ解決していない問題なので、今後自分たちが何を選択して、どうしていくのかも考えさせられる内容だった。

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2025年01月11日

Posted by ブクログ

小説形式で読みやすく、基礎知識からはじまりながらも網羅的に人口問題の個別テーマが語られていて、且つその対策案の設立の難しさを介護保険設立との対比から説明されていて、とにかく面白い。
500ページを超えるが読み物なのでサクサクいける。テーマ違うけど、三枝シリーズを読んでる感じ。

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2024年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人口減少対策について、真正面から書ききった。元官僚だから書ける立法府の内情はさておき、子供保険を含む対策案の説明は理路整然としていた。なかでも親世代が子供世代に投資・支援するという発想は、国債発行しまっくって子世代に借金を押し付けている現状を変えるすばらしいプロパガンダ案と言えよう。未来への投資を箱物やインフラにするのではなく、子供たちにする! この発想を日本国民が共有できれば・・・・

公表されている統計データを読み解くだけで、日本の暗い未来が想像できてしまう。老人ばかりが多く、若い世代が極端に少ない国に、若い世代が住み続けたいと思うわけがない。子供をつくる・つくらないは個人の自由だが、人口減少は悪いことだというコンセンサスが必要だ。有識者(健全なマスコミ、文化人、科学者、経営者、政治家等)は本書を読んで勉強し、将来世代のために日本の人口減少に歯止めを打つ必要性を強く感じてほしい。
以下、個別案の感想。
・子供の授かりやすさの原因の一つが、個人差の大きい卵子の数であり、これはAMH検査をすると推定できるというのを初めて知った。成人祝いにAMH検査をやるべきでは?
・世代別に比較したコーホート出生率で、1992年以降生まれの適齢期(20代)での出生率が前の世代に比べ下がっている事実はもっと危機感を煽るべきだと理解した。このままでは10年後にはさらに深刻な事態になる。
・子供保険のターゲットが常勤で働く母親だけでなく、パートや働けない親の子も対象にするべきだという主張は腹に落ちた。育児休暇ではなく、育児手当を全ての親に渡すための子供保険は現政権で実現してほしいものだ。
・介護保険は最近の政府施策では良い保険だと思っていたが、成立まで6年もかかったのか。このへんの舞台裏をNHKあたりでドラマ化しないかなあ?廃案になりそうになったら、細かいことを反対していた市町村の担当者たちが慌てて賛成すべく立ち上がったくだりは参考になる。現場力が日本にはまだあることを誇りに思う。

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2023年09月26日

Posted by ブクログ

日本における2020年の合計特殊出生率は1.33。人口減少を止めるには、これを2.07以上に回復させるしかない。それは容易なことでないにしても、早急に何らかの打開策が必要なのは多くの国民が認めるところ。 
ただ、ただちに解決策を講じても人口減に歯止めがかかるには長い期間を要する。また、結婚・出産は個人の問題であり、国が介入すべきでないという根強い意見もある。   それでも、スピードをあげて進む少子高齢化に対する国民的議論は必要というのが、元厚労省幹部の著者の考え。             本書は、政府内に立ち上げられた「人口戦略検討本部」で官僚や専門家が真剣な議論を行い、法案を立ち上げ、国会に提案する過程を描いた小説。
登場人物やストーリーはフィクションだが、素材はすべて公開された資料や文献に基づく事実。
この本で提示されている「人口戦略(案)」は非常に勉強になった。そのポイントを以下に記しておく。
①非正規雇用や専業主婦も含めすべての子育て家庭に対し産休・育休給付や児童手当を大幅に拡充するため、「子ども保険」を導入する。②不妊治療や妊娠・出産、ライフプランに関する相談支援、ライフコースの多様化           ③若者に焦点をあて、子育てのしやすい地方の創生を目指した地方大学の強化や地域の人材教育推進、二地域居住、多拠点居住、地方体験の推進
なお、移民政策については、西欧諸国の事例から失敗すると大きな問題になることもあり、意見の集約が図れなかったという設定。
人口戦略検討本部における様々な角度からの議論に圧倒されたが、それとともに、制度設計のできる官僚へのリスペクトが高まった。
また、法案の与野党への根回し、与党内議論のプロセス、国会提出のタイミングなど、経験を積んだ著者ならではの現実的なストーリー展開もさすがだなと感心させられた。

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2023年03月10日

Posted by ブクログ

フィクションではあるが、人口をめぐる歴史や現状や将来推計は事実に基づく情報なので、人口減少という社会問題を理解する事ができた。
また、官僚や政治家がどのようなプロセスで、制度づくりを行うのかというプロセスをあまり意識した事がなかったため、興味深かかった。
なぜ、一億人国家なのか引っかかりながら読んでいた。総理答弁で語られた内容は理解でき、将来世代にとって希望を持てる国にしていく必要があることも理解できできるが、国土も狭く、食料自給率も低い日本が、人口を維持することが本当に必用なことなのかは語られておらず、国家より、もう一段上のレイヤでも、この問題を考えるべきではないのがと思った。

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2022年05月29日

Posted by ブクログ

介護保険制度の立役者であり、地方創生総括官などを歴任した元官僚である著者が、小説形式で人口減少問題とその対策について解説。
人口減少問題に関する様々な論点やその対策の方向性がよく整理されていて、非常に理解が深まった。
本書一押しの施策である子ども保険については、以前に構想が浮上した際には、保険にはなじまないのではないかと思って違和感があったが、本書を読み、社会全体で連帯して子どもの養育を支え合う仕組みとして結構いいんじゃないかと思えてきた。
介護保険制度の立案から施行までに携わった著者だけあって、制度設計や法案化のプロセスが臨場感のある形で再現されていて、国の政策立案過程を仮想体験できるというのもポイントである。
500頁を超える大作ではあるが、読み進めるのに苦を感じることはなく、小説としての出来は別にして、政策関連書籍としてかなりの良書だと感じた。

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2022年01月26日

Posted by ブクログ

広範に渡る人口問題を押さえながら小説の形態で読みやすくまとめてられており、官僚のリアルな働き、与野党との距離感などが感じられて良かった。地方からの若者の流出や、地方への移住の点では、特に『地方に対する意識、しがらみ』について、その対策も含めもっと踏み込んでみてほしかった。

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2025年04月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

NHKのニュースで紹介されていたことをきっかけに読んだ。小説の体をとっているが使用しているデータはすべて実在のものであるため内容は極めてリアルであり、人口減少がはらむ問題とその解決策が詳細に議論されている。最終的にこの小説内では「人口戦略法案」は廃案となってしまったが、首相の「今回のことは”『始まり』の終わり”でなければならない。人口戦略の第一幕は終わったが、第二幕、第三幕が開かなければならない。さもないと日本の本当に”『始まり』の終わり”になってしまう」の言葉は日本国民みながしっかりと受けとめるべき。

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2023年01月25日

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