山崎史郎のレビュー一覧
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制度の考え方や、雇用等の問題の背景をわかりやすく解説して提言に入ってくれているので、とても勉強になる。
提言をものすごく雑にまとめると、
- 子育て両立をしやすくし、非正規雇用から正規雇用への移行を強め、高齢者がさっさと引退せず現役期間を長くできるようにする
- 社会保障の縦割りを「地域」のヨコでつなげて、効率化
- 同じく、ICT活用や人材活用で効率化
ということ。
社会保障の給付を受け取る側を攻撃したりする論になりがちだが、実際にこれからの社会で給付側を安易に抑制はできないし、年金などはそもそも仕組み上抑制ルーチンがかかっている。
それよりも、制度の持続可能性という点で、負担を担える人を増 -
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ネタバレ人口減少対策について、真正面から書ききった。元官僚だから書ける立法府の内情はさておき、子供保険を含む対策案の説明は理路整然としていた。なかでも親世代が子供世代に投資・支援するという発想は、国債発行しまっくって子世代に借金を押し付けている現状を変えるすばらしいプロパガンダ案と言えよう。未来への投資を箱物やインフラにするのではなく、子供たちにする! この発想を日本国民が共有できれば・・・・
公表されている統計データを読み解くだけで、日本の暗い未来が想像できてしまう。老人ばかりが多く、若い世代が極端に少ない国に、若い世代が住み続けたいと思うわけがない。子供をつくる・つくらないは個人の自由だが、人口 -
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日本における2020年の合計特殊出生率は1.33。人口減少を止めるには、これを2.07以上に回復させるしかない。それは容易なことでないにしても、早急に何らかの打開策が必要なのは多くの国民が認めるところ。
ただ、ただちに解決策を講じても人口減に歯止めがかかるには長い期間を要する。また、結婚・出産は個人の問題であり、国が介入すべきでないという根強い意見もある。 それでも、スピードをあげて進む少子高齢化に対する国民的議論は必要というのが、元厚労省幹部の著者の考え。 本書は、政府内に立ち上げられた「人口戦略検討本部」で官僚や専門家が真剣な議論を行い、法案を立ち上げ、国会に -
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フィクションではあるが、人口をめぐる歴史や現状や将来推計は事実に基づく情報なので、人口減少という社会問題を理解する事ができた。
また、官僚や政治家がどのようなプロセスで、制度づくりを行うのかというプロセスをあまり意識した事がなかったため、興味深かかった。
なぜ、一億人国家なのか引っかかりながら読んでいた。総理答弁で語られた内容は理解でき、将来世代にとって希望を持てる国にしていく必要があることも理解できできるが、国土も狭く、食料自給率も低い日本が、人口を維持することが本当に必用なことなのかは語られておらず、国家より、もう一段上のレイヤでも、この問題を考えるべきではないのがと思った。 -
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介護保険制度の立役者であり、地方創生総括官などを歴任した元官僚である著者が、小説形式で人口減少問題とその対策について解説。
人口減少問題に関する様々な論点やその対策の方向性がよく整理されていて、非常に理解が深まった。
本書一押しの施策である子ども保険については、以前に構想が浮上した際には、保険にはなじまないのではないかと思って違和感があったが、本書を読み、社会全体で連帯して子どもの養育を支え合う仕組みとして結構いいんじゃないかと思えてきた。
介護保険制度の立案から施行までに携わった著者だけあって、制度設計や法案化のプロセスが臨場感のある形で再現されていて、国の政策立案過程を仮想体験できるという -
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人口減少と社会保障 山崎史郎
職業柄、社会保障を勉強しているが制度面を覚えるにあたり、現在の社会保障制度がある背景や、今後の展望についてより深く知りたいと考え、本書を手に取った。本書は長らく厚生労働省の官僚を務め、介護保険導入等に携わった山崎氏の著書であり、現在の社会保障制度が構築された背景となる社会状況を概観した上で、社会が変化する中で社会保障制度も変わらねばならない状況にあると力説されている。
社会保障制度は社会の鏡であるべきであり、社会保障制度もまた、社会を構築するパワーを持ちうる。そうしたポリシーの下、まずは第一章で現在の日本社会の状況を述べた後に、第二章では社会保障制度を概観し、第 -
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介護保険の創設という一大仕事などに関わった厚労省の元官僚が記す日本の社会保障の”これまで”と”これから”の概説書。新書として必要なエッセンスがコンパクトにまとめられており、年金・医療・介護・子育て支援などの様々な社会保障を手始めに知るには大変優れた一冊というのがまず読み終えた所感。
本書では日本の社会保障の特徴を「個々のリスクに個別に他書する縦糸」(疾病などのリスクに対する健康保険、老後のリスクに対する年金や介護保険、困窮などのリスクに対する生活保護など)と、「国民皆保険・皆年金を構成する職域・地域という横系」の2軸にあるとしつつ、特に”横糸”を構成する職域・地域による包含というのが、非正規 -
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実務に基づき年金、国民健康保険、介護保険などのしくみと財政運営の現状、少子高齢化と人口減少社会に向けての打開策を述べた。もうすぐ年金をもらう身、のほほんと頂いていいのか実情を知りたくて読んでみた。
著者はミスター介護保険と呼ばれた元厚労省の役人。社会保険のしくみを、戦後国民皆保険となった歴史的経緯と、財政の現状と考え方を分かりやすく説明。実務担当者にとっても考え方を整理するのに役に立つのでは。
後半で人口減少社会に向けた展望を述べているが、生涯現役で働けるうちは働くべしと言っていて、組織に属するのはもうたくさん、と思っている身には耳が痛い。