「アンコールの王国 世襲しない王権」
権力を保持するために、土着の進行とインド由来の宗教的神秘性を視覚的に演出し、君臨した。それが、発信元のインドには見られないアンコール遺跡群の存在理由だそうだ。
作者は、アンコール遺跡調査の学者で、遺跡様式、碑文、回廊浮彫りの研究は勿論、13世紀末中国の周達観の
...続きを読む記録「真臘風土記」なども含ませて8〜15世紀のカンボジアの歴史を熱量込めて描いている。
舌を噛みそうな“ながーい”カタカナばかりの中、地理や歴史を大雑把に把握していき、苦労して読み切ると、今までの“誰もいない遺跡”のイメージに“確かに人の営みがあった”ことが少しわかる。
もう少し、他の地域の歴史が知れたらと思ったが、作者自身が最終章で語っているように“東南アジア”という括りが、実はまとまっていないため、どうしても地域ごとの歴史を全て網羅しなければならず、ましてや植民地化と独立の過程も相違していることで、概要としても一冊では無理のようだ。
今後は「海のシルクロード史」や「植民地時代と独立の現代史」など、テーマを決めるのも面白い。
その意味で今回は「アンコール史」だった。