長谷川貴彦の作品一覧
「長谷川貴彦」の「イギリス現代史」「サッチャリズム前夜の〈民衆的個人主義〉 福祉国家と新自由主義のはざまで」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
本書は産業革命史研究の泰斗であるロバート・C・アレン教授による入門書(原著:The Industrial Revolution : A Very Short Introduction , Oxford Univ. Press, 2017の翻訳)である。アレン教授はすでに A Very Short Introduction シリーズの1つとして Global Economic History , Oxford Univ. Press, 2011.があり(翻訳は『なぜ豊かな国と貧しい国があるのか』NTT出版、2012)、本書の内容と重なる部分もある(とくに第2章「産業革命の前提条件、1500〜1750年」)。
アレン教授は、第2章で近世における最初のグローバル化(それは交易の拡大によるアジア物産のインパクトでありその模倣の過程でもあった)のなかでのイングランドの対応が高賃金経済と安価なエネルギーの利用をもたらし、さらにその高賃金が労働者の健康と体格を改善して教育への投資を有利なものにしていったことを実証的に示している。
さらに第3章「なぜ産業革命はイギリスから始まったか?」では、グローバル化とはほとんど関係のない17世紀の「科学革命」が「産業的啓蒙」「技術革新」(蒸気機関)と結びつきつつ、産業革命を推進していったことが述べられている。1760年代において紡績と捺染から始まった機械化は1840年代に力織機が手織りを駆逐することで完了するが、さらに1870年代までにはほかの産業における機械化が完了し、産業革命は終了する。
第4章と第5章は産業革命によってイギリス社会がどのように変容したのか、またそれによって政治改革がどのように進行していったのかについて階級格差、階級内格差などを中心に論じられている。訳者の長谷川氏は「やや包括生を欠くとい印象を否めない」と訳者解題で述べているが、私自身は第5章の時系列的な説明はわかりやすかった。
最後の第6章に話は、前著とほぼ重なる。周辺国の「標準モデル」や「途上国のビッグプッシュ」など。
なお訳者解題での近年の産業革命史研究の整理は大変有益なものであった。
Posted by ブクログ
リン・ハントは、フランス革命を専門とするアメリカの歴史学者。
彼女の「フランス革命の政治文化」には、大きな衝撃をうけた。内容も面白かったが、それ以上に方法論として、言葉だけでなく、象徴・イメージ・シンボルも含めて解釈していく記号論というか、ポストモダンな定性分析とハードな定量分析が組み合わさっているところが、すごいなと思った。
伝統的な歴史学から考えると、定性分析、定量分析の手法がそれぞれ新しいもので、さらにそれをひとりの著者が組みあわせて、アプローチするというのが、すごいと思ったし、歴史学に限らず社会科学の一つの理想的なありかたと思った。
わたしは研究者ではないけど、なんか仕事をしたり、考えたりするときに、定性、定量を組み合わせることは意識するようになったな〜。レベルはまったく比較不能だけど、なんか影響をうけた人。
さて、「フランス革命の政治文化」がでたのは、1982年で、当時は、ポストモダーン的であったり、フェミニズム的な視点があったりする、新進の学者という感じだったが、今やアメリカ歴史学会の会長をつとめるなど、功成り名遂げた状態。
そんな彼女が、「なぜ歴史を学ぶのか」という一般の読者を対象とした「そもそも」な本を書いているのを遅ればせながら発見して、読んでみた。
これは、2018年の本で、トランプ政権のポスト・トゥルースな状況を念頭に書かれている。そして、アイデンティティ・ポリティクス、ポスト・コロニアル、ジェンダー論などなどが渦巻くなかで、なにが真実かわからない、歴史の解釈が多様なものになるだけでなく、事実も一つのものではないかもな状況のなかで、なぜ歴史を学ぶのかという本。
それに対する著者の答えは、わたしにとっては、とても明快で、説得力があった。
そんなに難しい本ではないので、著者の主張をサマリーする必要はない気がするし、最後のほうに訳者の簡潔な要約もついているので、興味をもった人は読んでほしい。
一つだけコメントすると、リン・ハントは、いわゆるポストモダーン的な視点をもった学者ではあるが、ポストモダーン的な相対主義にはとどまっていないということ。歴史の複数の解釈、事実の相対性を認めつつも、歴史的な事実について、研究を重ねることによって、すこしづつ真実に近づいていく、という立場をとっている。
このあたりは、ポストモダーン思想というより、ポパーの反証可能性をベースにもつ「科学」的な思想に近いものだと思う。
リン・ハントは、こうした姿勢があったからこそ、アメリカ歴史学の主流派とも生産的な関係を作ることができたのだと思う。
また、最近、彼女が提案している(と思われる)グローバル・ヒストリーも、マイノリティなど多様な視点をとり、文字以外のイメージの分析も踏まえつつ、長い時間軸、自然環境と人間との関係を自然科学の研究、DNA鑑定なども取り入れながらの学際的な研究を含むものになっている。
こうした複数の手法を組み合わせていくのは、「フランス革命の政治文化」から一貫した彼女の姿勢だと思った。