40年前からの愛読書(三一書房刊行のもの)
不条理をしみじみと味わうような物語と思っていたのだが、3.11原発震災以降、これらの物語群の描く不条理が他人ごとではなくなってきている感じがします。
街中の人たちが何年も何年もかけて掘ってきた巨大な穴、その大工事の目的が実は何もなくて、無為に暮らしていると
...続きを読む街に諍いが絶えないから始まった工事だった、次は何年もかけてそれをみんなで埋めていく。
あるいは、何の役に立つのかわからない巨大な機械が街の中心に据えられていて、それを撤去しようとすると機械が作動して妨害する。そうやってそこにあることだけが目的の黒々とした機械。
親があちこちの街でお星様を売りつけるという詐欺をやり、その結果困窮してしまった街が随所にあり、その息子がその後始末に、お星様の行商を…
これらの不条理と、我々が現在抱え込んでしまっている原発に代表される不条理を重ねると…ぞっとする。この本の肌合いが、全く変わって迫ってくるのです。