先日、森永氏の最新本である「投資依存症」という本を読みました、「今回のバブルが弾けたら今までのバブルと違って、もう株価は戻ることはない、一刻も早く持っている株を手仕舞いなさい」という強烈なメッセージを受けました。
ブラックマンデー(1987.10),は大学生でしたが、貧乏だった私は株に割くお金などなく無害でしたが、リーマンショック(2008)の時には、かなり痛手を被ったのを覚えています。それなので今まで何冊もお世話になってきた森永氏の指摘を無視することもできず、これからどうしようかを想いを巡らしていました。彼のアドバイスは「現金保有」でしたから。
そんな時、先月あたり(2024.8)頃に購入して読みかけになっていた本が目について昨晩一気に読み終えてました。筆者の武者氏の本は初めて読みますが、本の帯にあった「株高4万円を予測したアナリスト」とあり、興味を持ちました。30年前に4万円目前になった日本企業と、今では中身が異なる、最終製品でなく部品・中間財で消費者相手でなく企業相手で「オンリーワン」の技術を持つ企業が増えているというポイントが印象的でした。もう少し株式投資を続けても良いかなを思い直せた本でした。
以下は気になったポイントです。
・地政学が経済に与える影響がある、日本が戦後大復活したのも、ジャパンアズナンバーワンの座から転落したのも、このところの円安、日経平均株価が市場最高値を更新して4万円を超えたのも、全てこの「地政学」が影響している、具体的には、米中対立に直面して、アメリカが日本を強い味方にするという戦略を明確化させたから(p6)
・アメリカにとって日本は世界一大切な同盟国である、米ソ冷戦時代は対ソ戦略において欧州のNATOが最重要であった、しかし米中冷戦においては、中国の太平洋側にフタのように存在している日本が最も重要です、また日本の産業力は中郷依存のサプライチェーンを変革するためには必須である、万が一日本が中国陣営に与したら、アメリカの覇権は終る(p22)
・強いドルがアメリカ主導の世界秩序再構築の大きな武器になる、こうした急激な変化は少し前までは専門家でも予測できなかった、こうした形で歴史と現状分析をすると、これから将来が保証されている国は2つしかない、第一はアメリカ、第二は米中対立という地政学の最大の恩恵を受ける日本である、2024年以降は日米二人勝ちになりそうである、サイバー世界はアメリカ、ハードウェア生産は日本ということになり、この2国が世界経済を引っ張っていく(p39)
・この急激な円安については、日米の金利差で説明する人が多い、アメリカはインフレで利下げできない、日本は2%のインフレが達成できなくて利上げできないので金利差が広がっているのが円安の一員であることは確かである。しかし円安局面でアメリカ財務省がウォッチしている、為替操作対象国監視リストから日本を外したことはサプライズであった。急激な円安の理由は、アメリカの国益が背景にある、円安をアメリカ自身が望んでいる(p52)
・リンカーンが考案したのは、人々の生活をよくするという新しいパラダイムによる需要創造、これを経済の重要なメカニズムの中に組み込んだ、もし南軍が勝っていたら、メキシコと同じ状態になっていたはず。収奪する側が奴隷を使って儲けたお金を個人の贅沢に費やしたり、生産物を欧州の貴族に売るだけで国民の需要は増えない。奴隷解放の結果、人々の生活が向上してアメリカ国内に大きな市場が生まれたことが需要である、だからリンカーンは偉大な大統領である(p60)
・アメリカ以外の投資対象はどこか、中国包囲網、あるいは米中デカップリング(具体的には、半導体を日本で作る、そのためにはアメリカはなんでもやるから日本も協力しろ、p84)を考えると、もう中国ではない、インド、ラテンアメリカ、アフリカでもない。中国に代わる次の成長マーケット、それはサイバーの世界である。そのサイバーの世界を支配しているのはアメリカである(p76)日本にハイテク生産を集約させないと、思うように中国と対峙できないとアメリカが腹を決めた(p84)
・EV車の部品数は1万点で部品が劇的に少なくなりEVの方が安く作れると思われがちだが、まだEVの方がはるかにコストが高い。肝心のリチウムイオンバッテリーが高値、それぞれの部品の製造コストがまだ高い。その結果、EV車の売れ行きがかなり鈍って、アメリカでは在庫が溜まっている。世界の自動車総保有台数は15億台、年間販売台数は9000万台、それに対してEVは累計販売で2000万台、全保有台数の1%強に過ぎず、コスト高を余儀なくされている(p94)
・投資とは会計的には「費用の先送り」のことである、100億円を投下してモノを使ったとすると、その費用は減価償却の形で回収されていく。従って、作った時には全く費用が発生しない、つまり目先の成長を目指すだけなら、投資が大きな武器となる。しかし住む人がいない家だったり、車も通らない高速道路なら、不良資産として残るだけである。そういうものが積み上がっているのが、今の中国バブルの本質である、日本のバブルとは根本的に違う(p111)
・中国は、投資はダメ、消費もダメ、となると残る期待は輸出となる。しかし米中対立、中国のでカップリングを進める諸国はそれを許さないだろう(p118)
・イギリスはユーロ圏の一員であることのメリットを自ら捨てた、EUにいるからこそユーロ金融の中心であるロンドンのシティが活性化していた、でも離脱によって金融拠点は、シティからフランクフルト(ドイツ)に写ってしまった、今後を考えると日本がドイツのGDPを抜き返すことはまず間違いない(p124)
・日本の半導体自体のシェアは落ち込んでいるものの、半導体製造装置、半導体材料では今も日本のシェアはとても高い(p139)
・日本政府が投資をしてうまくいくか、うまくいかないわけがない、なぜなら米中対立の決着がつくまで、日本の国の半導体復興が成功するまで、この投資は続けられるから。この投資に失敗したら、アメリカの覇権は終了しアメリカ経済が没落する(p143)
・バブルの頃の日本経営者に経営の目的を聞くと「シェアを奪う」「売上を伸ばす」という認識しかなかった、資本主義的経営には本来、投資した資本をどのくらいの速さで大きくしていくかのプランが必要である、企業経営者は土地や株のバブルの含み益という打ち出の小槌を持っているので、何をやっても許される時代が続いた。結局、現在の中国と同じで、そんな高コストでガバナンス不足の企業は破綻するしかない、日本のバブル経済は潰れるべくして潰れた(p148)モノを作るやサービスを提供するのではなく「世界に感動を届ける」、つまり「人々が求めているソリューション」を企業の重要なキーワードとしている(p164)
・日本企業は、直に消費者に向ける製品でなく、産業向けの中間品である材料、部品や装置など、ニッチの部分にシフトして、そこで圧倒的なシェアを獲得するようになった。それがここ10年来の私(筆者)の見立てである(p150)日本の企業のお客さんは、消費者でないので巨大な看板を出して宣伝する必要がない(p150)市場規模が小さい製品の世界市場でのシェア60%以上を占めるものが270にもなり、それは全製品の30%強となっている。日本ならでは、のものの比率は世界最大である(p151)
・外国人がなぜ日本企業の株主となるのか、それは日本企業を信頼しているから、信頼できなかったら、自分で経営にタッチする、日本の企業を信頼するから日本企業に資金を投じる(p155)
・パソコンに代わってAIが主役になると、劇的に半導体の需要構造が変わる、そういう転換期なので、今まで一敗地に見舞われていた日本が一気にシェアを取り戻すチャンスが出てくる(p156)集積回路あたり部品数が1.5年で2倍になるというトレンドが40年にわたって続いたが、これ以上微細にするのが不可能になった時、限界を突破するのは立体化であり複合化「チップレット」というが、これにより長期的な機能向上のトレンドが維持できると期待されている。この技術可能性(特に後工程など)がある国として日本に注目が集まっている(p157)
・経済の複雑性・世界ランキング(EC1)において、実はこれまで日本がずっと世界のナンバーワンである、産業の多様化が進んでいることを示している(p168)
・株価=利益要素x金利要素x人気要素=1株利益xPER=1株利益÷(金利+イールドスプレッド:株式利回りと10年国債利回りの差)(p188)日本は金利が1%以下と低いのに、株式の益周りは6%と極めて高く、イールドスプレッドは大幅なプラスで、これが日経平均が史上最高値を更新してもなお、日本株の割安さは全く代わっていないことを示している、2000年からもう20年以上この状態は続いている、イールドスプレッドが今のアメリカのようにゼロになったとすると、日本国債利回りは3%程度まで上昇しているだろう、とすれば益周り3%、PER33倍が妥当、一株あたり利益が今のままでも日経平均株価は、8万円が適正という評価になる(p191)
・円安のメリット、1)世界の需要が物価が安くなった日本に集中する、日本は外需を獲得することによって成長力を高めることができる、2)日本の価格引き上げ圧力を高め、デフレ脱却を確かなものとできる(p202)
・金投資はお薦めできない、金を持つならアメリカ株、理由は、金が必要なのは「不安」に備えるからであって、今のアメリカは不安がないので、あえて金を持つ必要がない。金が上がっているのは、中国、ロシアなどがドルを持ちにくくなっているので、それの補完として金を買っている。金がいいから保有しているのではなく、ドルの決済システムから外されそうになっているので、ドルの代わりに金を持つということ(p211)ならずもの国家の金の保有は、そう長くは続かないだろう、合理的な投資対象ではない(p212)
2024年9月13日読破
2024年9月14日作成