昭和初期に売られて吉原で働いた女の子の手記。
強烈な内容のルポ。彼女はすごく強靭な知性と理性の持ち主だと思う。
騙されて毎日男に春をひさぐ仕事をさせられる時点で死ぬか狂うかという心境だと思うのに、それをたんたんと日記につけるとは。
家族のためにという大義が、個人の意思を上回っていた時代とはいえ
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ちらりと、「母はこういう仕事だということを、わかっていて私を行かせたのか?」という疑念。もう家族のもとにも、帰りたくはないだろう。
時折やってくる大学生たちとの交歓が、一瞬、青春を感じさせる。本やマンドリンを貸してもらったり。けっこう対等な会話もできるから、人気になってしまったのかも。
中には、花魁たちの生活実態を知ろうと質問してくる、社会主義走った青年もやってきたり。
借金や、毎月の差し引き費用について調べたり、なかなか賢い。
けれども、「今日は忙しかった。12人客を取った」という凄絶な一行に、何も言えなくなる。
たびたび体調不良で入院したりと、壮絶な肉体労働を窺わせる。
脱走、廃業した少女に喝采を送りたい。