森光子のレビュー一覧
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昭和初期に売られて吉原で働いた女の子の手記。
強烈な内容のルポ。彼女はすごく強靭な知性と理性の持ち主だと思う。
騙されて毎日男に春をひさぐ仕事をさせられる時点で死ぬか狂うかという心境だと思うのに、それをたんたんと日記につけるとは。
家族のためにという大義が、個人の意思を上回っていた時代とはいえ。
ちらりと、「母はこういう仕事だということを、わかっていて私を行かせたのか?」という疑念。もう家族のもとにも、帰りたくはないだろう。
時折やってくる大学生たちとの交歓が、一瞬、青春を感じさせる。本やマンドリンを貸してもらったり。けっこう対等な会話もできるから、人気になってしまったのかも。
中に -
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1924年、実際に群馬の田舎から吉原に売られた女性の日記。
1924年といえば大正13年、谷崎の痴人の愛や、宮沢賢治の春と修羅が世に出た年だ。
そう考えると、案外最近までこういった文化が残っていたんだなと思う。
今までいろんな文献や資料を見るに、廓の女性は大変だと思っていたが、実際に存在が確認できる人の手記は重みが違う。
本当の吉原の実態が廓の内で生きた者の言葉で語られる。
森光子さんは、歌人の柳原白蓮を頼って、吉原から脱走する。
柳原白蓮について以前調べたことがあって、妙なところで繋がるもんだと思った。
白蓮は華族出身で、縁戚や炭鉱王と政略結婚させられたが、青年記者と駆け落ちした当時スキ -
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大正時代、吉原の遊郭を脱出して、白蓮夫人(大正三美人と言われた、大正天皇のいとこ)の家に逃げ込み、助けてもらった花魁の、日記。先日読んだ「光明に芽ぐむ日」と同じ著者。
生きながら牢屋の様に逃げることができなかった、吉原の遊女。彼女は文学が好きで、日記をつけていた。
遊郭における遊女同士の人間関係、お客さんの様子が細かく書かれている。病院でリンパ腺の手術を受ける部分は、壮絶である。
自分を売った母親の死に目に会うことができたものの、葬式に参列することは親戚が世間体を気にして許してくれない。
政府ぐるみでこの恐ろしい伝統的な売春が行われていたというのは、日本の恥の歴史だ。
涙なくしてこの本は読めな -
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大正の末期。文学の好きな女の子がいた。酒飲みの父が死んで借金が残り、周旋屋に騙されて吉原の遊郭に売られ、日記をつけていた。それが大正15年に出版されたものがあり、数十年を経て3年前に再出版された。
表紙が少女漫画風の花魁なので子供が女性史の勉強のために読むような本かと思ったが、とんでもなくヘビーな涙なくして読めない体験記録である。
6年の年季とは言え、借金は簡単に返さないようなからくりになっていて、警察に届けられるので逃げることもできない。病気になっても入れられる病院は牢屋のようなところ、関東大震災の時経営者は被災した女性たちを見殺しにする。
恥ずかしい日本の歴史がよくわかる。
読んで -
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世にこのような本が出ていたなんて。復刻するのが遅すぎやしまいか!とも思うけれど、自分が生きているうちに読めて良かった。
江戸時代のような「格」が失われた吉原、ずさんな・悲惨な環境で春駒は自分を見失っていない。遊女の生活が手に取るようにわかるのがいい。数々の作家さんや映画監督などが、この本を資料として読んできたんだろうね。遊女にも色んなんが居るけれど、遊客も千差万別。素敵な殿方もチラホラ出てくる。それにしても楼主のタヌキめ!どうかロクな死に方してませんように!!
巻末に「著作権継承者探しています・・・」の一文が。
旦那共々、怖い方々に追われていた為、身元を隠しながら生きたのもあるんだろうけれど、 -
無料版購入済み
興味深い
大正時代の吉原の花魁を描いた作品。
実は原作者の「森光子」というのは当時の実在した人物であり、この物語の主人公そのもの。
後に周囲の支援を得て花魁を「自主廃業」し、「光明に芽ぐむ日」「春駒日記」の2つの本を出版している。
本作はこの2冊を原作としているのだろう。
巻末にズラリと「参考文献」が並ぶように、良く研究されていると思う。
これをマンガ化してほぼ100年ぶりに再び世間に出すことは、十分意義のある事だろう。
一方、タイトルにある「残酷」のフレーズは人の目を引くために付けたとしか思えず、正直余計に感じる。
もう少し気の利いたタイトルにすべきではなかったのかと思われ、この点は非常に残念。 -
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廓に売られ書いた日記。
基本、恨みつらみばかりで、暗いです
そして、廓の出来事や、人間模様がリアルです。
吉原の花魁というとドラマでは華やかなイメージですが
そんな吉原より時代も少し後
1日に10人以上客を取っても借金が減らない
壮絶な毎日です。
個人的には、
この時代の田舎の貧困な家庭で育った女性が
ここまで文章を書けるものなのかと、興味を持ちました
文章も綺麗でしっかりしていますし、
日記とありますが、
同僚や客、出来事がでる順番が良く
構成が出来すぎている気もします
白蓮に手ほどきを受けたのしょうか
そういった憶測をしてしまう意味でも
オススメの本です
それにしても、男というのは -
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吉原の廓に売られ、花魁として生きた女性の記録。作者の森光子は、19歳で1000円と引き換えに吉原の遊郭へと売られる。そして、初見世で見ず知らずの男に処女を奪われ花魁•春駒としての生活を始める。彼女は、そこでの生活を「復讐」として日記に克明に記録する。そうして生まれたのが本書となる。
吉原に関する文献は多く残されているが、花魁本人の手による記録というのは数が極めて少ない。搾取される側の声はかき消されてしまうのが常であるし、そもそも字を書くことのできない花魁も多くいた。その中で、森光子はおそらくそれなりに高い教養を持ち、そして自らの境遇とその環境を冷静に見る観察眼を持っていた。だから、花魁の世界を -
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吉原に身売りされ、毎日のように客を10人も取らされる日々。そんな中でも自分を失わないように日記をつけ、歌を詠む春駒。白蓮を知ることによって、自分の置かれている場所から逃げるという道を選ぶ。白蓮夫妻が、彼女を吉原に返さず、親身になって社会運動家に彼女を繋いだことに安堵した。ほんの70年ちょっと前、戦前は女性の地位は低く、貧しさを理由に人身売買が行われていたこと、水揚げの4分の3は遊郭の主人が受け取り、女郎はたった4分の1しか受け取れない。そこから借金を返し、医者代や衣裳代、髪結い代などを引かれたら、いくらも手元に戻らず、いつまでも借金は返せない。ひどい仕組みだったということもよくわかった。