宮崎駿監督の『もののけ姫』など、ありとあらゆる伝説、物語のルーツとなった作品「ギルガメシュ叙事詩」。その日本語訳である。
シュメールに起源をもつこの物語は楔形文字で書かれており、古代オリエントに広く流布された。伝播の過程で様々な言語に編纂され、新たなパートも取り込まれており、完本は現存しない。本書
...続きを読むも所々抜け落ちた状態である。おそらく全体の半分ほどしか伝わっていないのではないかとされる。
しかし訳者の矢島氏は、それらいくつかのバージョンをパッチワークのように組み合わせ、英雄王ギルガメシュとその友エンキドゥの物語を、筋が通るように訳出した。
あくまで一般向けとの配慮から、1965年の刊行ながら、その訳文はわかりやすく、ゴテゴテした修辞は排されている。とても面白い。文庫化に伴い、イシュタル(イナンナ)の冥界下りも収載された。
興味深いのは、ギルガメシュもエンキドゥも頻繁に夢見をすることだ。当時のメソポタミア、オリエントではそのような占いが存在したということか。
師匠から矢島氏の話はたびたび聞いていた。本文以外の氏のコラムも、非常に示唆に富み、興奮を覚える。実在したというギルガメシュ。その4000年前の姿に想いを馳せる。