この『弁明』に記されている裁判では、かの世界的に有名な偏屈哲学ジジイを極刑に処すべきか否か、二度にわたって聴衆による投票が行われます。
ソクラテスが罪に問われた背景としては、皆さまもご存じのとおり、「無知の知」という盾を構え、「問答法」という武器を振りかざして、そこら辺にいる知識人にレスバを仕掛けて一方的に論破しまくっていたことも理由ではありますが、それだけではありません。
当時暴政を行っていた偉い人たちの師であったことや、まともに神を信じずに、ダイモニオンとかいうよく分からない存在からの天の声を聞いて、危険な思想を若者たちに吹き込んでいたため、「異端」扱いされていたというのも大きかったようです。
法廷に立ってひたすら弁明をするソクラテスは、裁判の冒頭で「70歳にもなって初めてこういう場に立つものだから、話し下手なのは許してほしい」と述べていて、意外と謙虚ですし、告発者(原告)のひとりであるメレトス君の話もしっかり聞いてあげた上で論理的に反駁しています。そのため、ソクラテスがただのネチっこい老害だというイメージをもってこの本を読んでみると、若干拍子抜けするかもしれません。
しかし、投票によって死刑が決まった瞬間、やっぱり悔しかったのか急にネチネチし始めるので笑ってしまいました。実際の口調は至極冷静なふうに書かれているものの、ソクラテスはだいたい以下のような内容の捨て台詞を吐いて、その判決を受け入れます。
彡(゚)(゚) は? ワイ死刑なん? あーもうええわ。ぽまいらほんまにワイを死刑にしたかったんやな。でも正直、ワイが取り乱したり泣きわめいたりせんかったのが気に食わんかっただけやろ?w ワイが淡々と論破してくるから悔しかったんやろ?w まぁええけどな。ワイに死刑票入れたやつ、あとでめっちゃ後悔すると思うで。てか死ぬの怖いとか、よう言うわ。死んだことないのにビビってるやつ乙wwww ワイは死ぬの別に怖くないし、むしろ気持ちええかもしれんやん? 夢も見んでグッスリ寝てる感じやろ? それ最高やん。あと言っとくけど、ワイ怒ってへんからな?w お前らが裁判しかけてきたから、しゃーなしでレスバしただけやしww ほな、じゃあな雑魚共www 生きるのと死ぬの、どっちがええかは神しか知らんっちゅうことでww
こんな面白い人物が3000年も前にすでに存在していたと知れるだけでも、この本を読む価値は十分にあります。
世界一有名な哲学者について聞こえの悪いことをたくさん書いてしまいましたが、ソクラテスの信念が現代社会にも通じる大切なものであることは間違いありません。
相手を質問攻めにして、無理やりにでも論破へ導く問答法はともかく、自分の無知を自覚することは大切です。少なくとも今の時代、ネットの掲示板やSNSに入り浸り、自分の知りもしない話題に首を突っ込み、一方的にまくし立て、相手が悔しがっている姿を想像して気持ちよくなっているような人たちにならないためには。
かくいう小生も、ちょっと本を読んだ程度で理解した気になり、読書感想文をにわかに投下して、このアカウントをフォローしてしまっている不運な皆様に強制的に見せつけているという点では、「無知の知」が足りていないのかもしれません。
結局、何も学んでいないのでありますが、せめて読んだ内容をアウトプットする場を設けることで、少しでも読んだ内容を自分の血肉にしたいという魂胆ですので、大目に見ていただければ幸いです。
ちなみに、ソクラテスは自ら著作をひとつも残していません。そのため、私たちが『ソクラテスの弁明』を読めるのは、弟子のプラトンが頑張って裁判の内容を面白おかしく文字起こししてくれたおかげです。ありがとう、プラトン。