小峰隆夫の作品一覧
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ユーザーレビュー
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官庁エコノミストの第一人者である著者が、バブルとその崩壊から始まり、金融危機とデフレの発生、小泉構造改革、リーマンショック、民主党政権の誕生等を経て、アベノミクスに至る平成経済史をマクロ経済という視点で振り返っている。
単に事実を述べるだけではなく、多くの出来事の相互関係を明らかにし、できるだけスト
...続きを読むーリー性を持たせるようにしてあるとのことで、バブルはなぜ生まれたのか、バブル崩壊による経済への影響がなぜ深刻なものとなったのか、デフレの何が問題か、小泉構造改革は経済にどのような影響をもたらしたのか、民主党政権のマクロ経済運営の問題点は何だったのか、異次元金融緩和をはじめとするアベノミクスの成果と限界は何か、といったことについて明快に解説されており、それらについて理解が深まる内容となっている。
また、地域振興券の経済学的ナンセンスさの解説や国際収支赤字悪玉論の否定など、これまでのおかしな経済政策や日本経済に対する俗論を一刀両断する内容も随所にみられ、痛快である。
バブルなど経済には現れる前例のない大きな課題を我々の社会が全体としてその課題を認識するには非常に長いタイムラグがあるこということや、標準的な経済学的な議論を踏まえて政策的対応を考える必要があることの指摘など、平成経済史から導かれる政策的教訓も多く指摘されており、今後の経済政策を考える上でも参考になろう。
本書は、経済面での平成の歴史を掴み、今後の政策形成に活かすのに、最適な名著といえる。
Posted by ブクログ
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経産官僚を経験している経済の専門家による、平成の経済について分析した書。分析が詳細で正確だと思う。説得力がある。いろいろな政策が評価されており、そういうことだったのかと納得する箇所が多々あった。勉強になった。
「(バブル批判)人々の幸福感は、経済状態の絶対水準に依存するのではなく、他人との相対水準に
...続きを読むよって決まるということが改めて確かめられた」p17
「(バブル崩壊後のキャピタル・ロス)1990~2000年の間で総額960兆円にも達している」p31
「(バブル崩壊)実際に景気後退に入ってから約1年を経過して、ようやく政府も景気後退入りを認めたのである(月例経済報告)」p47
「(バブル期の評価)①バブル期の政策運営は過度に景気刺激的だった ②バブル崩壊後の当初は、過度にバブル警戒的であった ③金融政策の引き締めから刺激への転換は遅すぎたという評価が一般的である」p56
「(1992.8)宮沢総理は、抜本的解決のためには公的資金の導入が必要だと考え、8.30の自民党軽井沢セミナーの講演で発言したが、誰も賛同しなかった」p64
「不良債権は、今にして思えば、バブルが崩壊したらほぼ必然的に増大するものである。担保である不動産価格が下落すれば、担保であっても回収は難しくなる。バブルの崩壊は経済を低迷させるから、企業の経営状態は悪化し、これも債権の回収を難しくする」p65
「(不良債権問題の過小評価)92年度経済白書は、92年3月末における7兆~8兆円程度という数字を紹介した後、次のように書いている。「これを銀行全体の資産と比較すると、延滞債権は貸出総額351兆円の一部であり、銀行資産に占める割合は小さいこと、さらに、有価証券の含み益は17兆円程度に達することなどから、不良債権の問題が銀行経営にとって危機的な問題ではないことがわかる」「不良債権の回収・整理には、今後数年間を要すると考えられ、その間、収益の圧迫要因になるものとみられるが、銀行の体力からみて処理可能な範囲と考えられる。このようなことから、銀行の経営基盤が揺らいでいるとは考えられず、信用面での問題が生ずることはないであろう」こうした文章を見る限り、当時の政府は、①不良債権の規模を控えめに観測していたこと、②株の含み益の存在がバッファーになると考えていたこと、③銀行の経営基盤は安定していると考えていたこと、などの面で不良債権の影響を過小評価していたことがわかる」p66
「(国民の反対)宮沢構想の時に「(不良債権処理の)税金の投入は国民の支持を得られないだろう」と懸念されたのだが、その懸念は全く正しかったことになる」p75
「1995年以降アメリカが「強いドル政策」を取り始めると、ドルに連動していた(固定相場制の)タイ・バーツも増価し、このため輸出も伸び悩み、96年には貿易収支が赤字となった。これに目をつけたのがヘッジファンドである。ヘッジファンドは東アジア諸国の通貨が過大評価されていると考え、大規模な空売りを仕掛けた」p76
「(アジア経済危機(98年度世界経済白書))①実質的な対ドル固定為替相場制の維持-自国通貨を実質的にドルにペッグさせていたため、ドル高の進展とともに実質為替レートが実力以上に増価してしまった。②大幅な経常収支赤字と短期資本流入の急増-経常収支赤字を短期資本の流入でファイナンスするという構造になっていた。このため、海外投資家が経済の先行きについて懸念を持ち始めると、短期資本が急速かつ連鎖的に海外に逃避した。③金融システムの脆弱性-短期資本の流入と国内経済をつなぐ金融システムの基盤が脆弱であったため、流入した短期資本が必ずしも生産的な用途には向けられず、過大な設備投資に向けられたり、株式や不動産に対するバブル的な投機に向けられた」p78
「物価の下落傾向が経済にとって是正すべき大きな問題だと認識されるようになったのは、2000年頃からである。それまでの物価問題とは物価の上昇のことであり、物価に関連する経済対策とは物価上昇率を引き下げようとすることであった(だから、物価下落が大きな問題と認識されなかった)」p83
「(羽田内閣の経済対策(低成長と賃金が上がらないことに対する対策(1994.5)))①5年間で物価を2~3割り下げる努力をする。②池田内閣の「所得倍増計画」に匹敵する「実質所得倍増計画」を検討する(以後のデフレが諸悪の根源であるとの考え方からすると、全く気が遠くなるような真逆の考え)」p86
「(GDPデフレータ)なんと1999年から2013年までの15年連続でマイナスという、世界でも極めて稀な姿を続けた。このことは、景気が上昇していたにもかかわらず名目GDPはほとんど上昇しなかったことを意味している。事実、2000年の名目GDPは527兆円だったのだが、06年の時点でも527兆円であった」p114
「今にして思えば、バブルは日本的な現象ではなかった。アメリカでもサブプライム問題という形で明確にバブルが発生したことがそれを示している。そして、バブル崩壊への政策的対応が難しかったのも日本だけの問題ではなかった。アメリカのバブル崩壊後の対応は、結果的に世界経済全体を大混乱に陥れたからである。日本を非難していたまさにそのことがブーメランとなってアメリカ等の先進国に打撃を与えたのである」p183
「(民主党マニフェスト(2009.8))この時掲げられたマニフェストを読み返してみると、やや驚くほどの力を入れて、官僚支配からの脱却と政治主導が強く打ち出されている」p190
「経済的に見た時、民主党政権の最大のつまずきは、十分な財源の手当てのないまま、バラ色の公約を提示し、それをそのまま実現しようとしたことであろう」p195
「(震災の経済的影響)震災直後(フェーズ1):震災によるストックの毀損(2011.6内閣府防災担当が、16.9兆円程度という推計を出している)ただしこのストックの毀損はGDPには反映されない。フローの打撃(フェーズ2):被災地では生産・消費活動がストップし、物流網や生活設備が打撃を受けて生産活動が停滞し、心理的な影響もあって消費も低迷する。このため成長率(実質年率)は、2011.1-3月マイナス5.6%、4-6月もマイナス2.6%となった。(経済的影響はかなり大。特に電力供給制約とサプライ・チェーンの寸断が原因)。最後の(フェーズ3):復興のための建設需要が現われ、ストックが回復して、フローの需要が増えるため、経済にはプラスとなる局面」p210
「経常収支を黒字が善、赤字を悪とする考え方は誤りである。輸出と輸入を両建てで拡大することこそが国民福祉を高めるというのが経済学の常識的考えである」p214
「(アベノミクスによる消費の伸び)所得によって消費が伸びたのでないとすれば、消費が伸びた理由は株価の上昇による資産効果しか考えられない」p234
「定期的な転勤や数年で職務内容が変わる総合職の正社員とパート社員は仕事の内容が同じでも、待遇差はあってよい」p245
「四点セット(「長期雇用」「企業にフィットした人材」「無限定の仕事」「職能給」)の働き方は「メンバーシップ型」と呼ばれる働き方である。これに対して「ジョブ型」すなわちジョブを中心にキャリアが形成され、賃金が支払われていくようになれば、自ずと同一労働同一賃金が実現する。更には雇用の流動化が進み、女性も参画しやすくなる。働き手も増えて生産性が上がりやすくなるから成長も促進されるはずだ」p247
「(一極集中是正)各府県では府県の中心へ、各地域では中心都市へという具合に、各階層において集中が起きている。そして多層的集中が起きているのは、多様な集積のメリットが作用しているからであって、それを無理に抑制することはかえって地域の活力をそぐことになるというものだ」p252
「(選挙に勝つために)国民の意思に従っていたのでは、財政・社会保障問題の解決は望めないということを意味しており、日本が深刻な「民主主義の失敗」状態に陥っていることを示している」p274
「(財政赤字には、毎年の赤字を示す「フロー」と赤字が累積した債務残高を示す「ストック」がある)ストック赤字の名目GDP比率が上昇経路に乗っている(「発散している」という)かどうかが決定的に重要である。この比率が発散するか否かは、2つの要因で決まる。「プライマリ・バランス(基礎的財政収支)」と「名目成長率と長期金利の相対関係」である。要は、名目成長率と長期金利がほぼ等しいとすると、プライマリ・バランスが均衡または黒字であれば財政赤字は発散しないということである。ところがOECDの資料によると、2016年の日本のプライマリ・バランスのGDP比は、3.3%の赤字であり、やはりOECD諸国中最大である」p276
「国民から政策運営の負託を受けた政治家は、単に世論に迎合するのではなく、時には世論を説得して、長期的な道を誤らないようにする責務がある。(消費税増税時の)軽減税率の採用は、政治家がその責務を放棄したように私には見える」p284
Posted by ブクログ
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以前ライフネット証券の出口さんが推奨していたのを思い出して読んでみた。
5回の講義をもとにして書かれた本であることもあり、日本経済において何を論点としているのかが、非常に分かりやすく整理されている。
アベノミクスの成果と限界、働き方改革が叫ばれているマクロ視点での理由、後回しになっている財政再建、
...続きを読む人口減少を踏まえての今後などが分かりやすく説明されており問題とされている内容をよく理解できた。
財政再建は、国民に理解を得ないといけないし、選挙もあるし、国民全体がゆでがえるというかグループシンクになっているというか、合理的になっていないことはよくわかったが、どこかで啓蒙しない限りはいつまでたっても着手されないような気もした。
最後の章の人口減少下の話は、人口が減るからと言っても、必ずしも市場が小さくなるとは限らないという話も分かってされているのだと思うが、一人ひとりの生産性が上がるわけでもないし、すべてがいきなりプレミアム市場に移るわけでもないから、話の持って行き方として若干苦しい感じに思えた。
まずはそれぞれでコンパクトシティー的なアプローチをして、スマートシュリンクをやろうという方向性だったけど、AIなどを駆使するとかして人手を介してやらずに提供できるようなサービスに置き換えるなどしないと、GDPベースだと生産性があがっていくような感じにはならないような気もした。
必ず更新しなかればならない社会基盤がある中での話だから結構難しい話だなと思えてきた。
Posted by ブクログ
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人口オーナス時代こそ市場原理を生かす方向への構造改革が求められるのであり、グローバル化のメリットを最大限に生かしていくことが必要。
Posted by ブクログ
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日本の人口問題の現状、今後の課題などを非常にわかりやすくまとめた良書。人口に関して、いろいろな考え方や切り口を広く網羅しているので、入門書的な存在。
Posted by ブクログ
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