作品一覧

  • ビッグテックはなぜSF作家をコンサルにするのか SFプロトタイピングの実践

    ビッグテックはなぜSF作家をコンサルにするのか SFプロトタイピングの実践

    ビジネス・実用

    4.0
    1巻1,980円 (税込)
    変化の激しい時代を生き残るには 現在の延長線上で 物を考えていてはダメだ。 正解/不正解でなく 必要なのは現実を超越した想像力。 SF作家の力が未来の企業を刺激する。 ビッグテックの多くが導入する SF作家をコンサルに迎えた 未来の世界観構築「SFプロトタイピング」。 日本でも浸透し始めたこの手法を ITジャーナリスト・佐々木俊尚氏と SF作家・小野美由紀氏が共同起業。 実践を基に記す一番わかりやすい SFプロトタイピングのテキスト。 第1章 SFプロトタイピングにできること なぜアメリカの大手企業は SF作家をコンサルに雇うのか?            文責・佐々木俊尚 文学がテクノロジーとビジネスに橋を渡す 未来の戦争を想像する欧米軍部 日本の技術者が想像できなかった           スマホ支配の社会 未来都市「カルデサック・テンペ」の挑戦 他 第2章【実践編】 国内大手企業が見据える未来図 私が見た日本企業 「SFプロトタイピングの現場」            文責・小野美由紀 「ありえない未来像」から         現状の課題を炙り出す 日本のSFプロトタイピングの現状 必ずしも面白い小説である必要はない 小説を書くことでチームビルディング 他 第3章【特別収録】 SFプロトタイピングatワコール 『私の、美しい皮膚』 小野美由紀 第4章【特別収録】 SFプロトタイピングatカミナシ 『カミナシビジョン2030』 小野美由紀 SFプロトタイピング導入を経て――    株式会社カミナシCEO・諸岡裕人氏 第5章 社内ワークショップをやってみる 未来の印刷会社はどうなる?     「ありえそうな未来」を想像する! 「世界で一着、一冊」の     プレミアム感が生まれる 「推し活」を支える未来の印刷会社の役割 他
  • メゾン刻の湯

    メゾン刻の湯

    小説・文芸

    3.7
    1巻1,650円 (税込)
    どうしても就職活動をする気になれず、内定のないまま卒業式を迎えたマヒコ。 住むところも危うくなりかけたところを、東京の下町にある築100年の銭湯「刻(とき)の湯」に住もうと幼馴染の蝶子に誘われる。 そこにはマヒコに負けず劣らず“正しい社会”からはみ出した、くせものばかりがいて――。 「生きていてもいいのだろうか」 「この社会に自分の居場所があるのか」 そんな寄る辺なさを抱きながらも、真摯に生きる人々を描く確かな希望に満ちた傑作青春小説!
  • 路地裏のウォンビン

    路地裏のウォンビン

    小説・文芸

    -
    1巻1,199円 (税込)
    スラムで育ち、幼いころからスリで身を立てていたルゥとウォンビン。いつかこの生活から抜け出すことを願いつつも、生き延びるために汚れ仕事を避けることはできない。そんな二人を引き裂く出来事が起こる。養父母に引き取られ文化的な生活を手に入れたルゥにとって気がかりなのは、願ってもない別れ方をしたウォンビンのことだった。そして、偶然の邂逅からまたしても二人の運命が大きく動き始める。非力な二人がもがいた先に幸せはあるのか--。
  • 人生に疲れたらスペイン巡礼~飲み、食べ、歩く800キロの旅~

    人生に疲れたらスペイン巡礼~飲み、食べ、歩く800キロの旅~

    ビジネス・実用

    3.9
    1巻1,188円 (税込)
    もしあなたが、長い人生の中で、数日間もしくは数十日間を個人的な楽しみのために確保できるなら。または、人生につまずき絶望しているのなら。もしくはお金をなるべくかけずに行ける、刺激的な旅先を探しているのなら。迷わず本書を手に取ってほしい。100キロから証明書をもらえ、全ルート800キロの「スペイン版お遍路」。アウトドアとしても旅としても面白い、この道の醍醐味を伝える。ジャーナリスト・佐々木俊尚氏推薦!
  • ピュア

    ピュア

    小説・文芸

    3.8
    1巻1,100円 (税込)
    妊娠を義務付けられた女性が男たちを「食べる」世界を描く表題作や単行本未収録作等、今を反映し性と人間に鋭く切り込む全6篇!
  • メゾン刻の湯 上
    完結

    メゾン刻の湯

    少女・女性マンガ

    4.0
    全2巻715~726円 (税込)
    足りない僕らと、過剰すぎる社会の物語――。築100年の銭湯「刻の湯」で暮らす「ハミダシもの」たちの青春群像劇!
  • 小説でしか表現できない私たちの気持ち

    小説でしか表現できない私たちの気持ち

    ビジネス・実用

    -
    1巻660円 (税込)
    「エッセイは、上半身しか使ってないけど、小説は全身で書いてるって感じ」というのは、2017年9月にはじめての小説集『通りすがりのあなた』を刊行したはあちゅうさん。 一方、2018年2月にはじめての小説『メゾン刻の湯』を出した小野美由紀さんは「物語によって動かせものの大きさが見えた」と話します。 エッセイも人気の二人が、なぜ小説を書いたのか? 書かねばならなかったのか? 具体的な書き方から、自分で決めた毎日の決まり、書けない苦しさまで、創作の方法をおおいに語りあいます! <目次> ・ネットで書き始めた二人の作家の共通点 ・小説は修業だ ・3つのタイプの書き方 ・書きたかったのは、名前の付けられない関係 ・「書きたいものを書く」と「本を売る」こと ・炎上と伝わらない悔しさ ・「#MeToo」は自分の経験を語っているだけ ・はあちゅうは、フェミニスト? ・本当に戦う相手は、男じゃない ・Q&A ※この作品は2月7日に幻冬舎にて開催された、『「自分」を仕事にする生き方』刊行記念セミナーで小野美由紀さんをゲストにお呼びした第2回の内容を再構成したものです。
  • 傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった

    傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった

    小説・文芸

    3.9
    1巻606円 (税込)
    過剰すぎる母、自傷、パニック障害、就活失敗、女もこじらせ気味…… 問題てんこもり女子、再生なるか!? 生きる勇気が湧いてくる、強烈自伝エッセイ。 過剰に教育的な母に抑圧され、中3で不登校。 キラキラキャンパスライフに馴染めず大学も仮面浪人。 でも他人から見てイケてる自分でいたくて、 留学、TOEIC950点、ボランティア、インターン等々。 無敵のエントリーシートをひっさげ大企業の面接に臨んだ。 なのに、肝心なときにパニック障害に! 就活を断念し、なぜかスペイン巡礼の旅へ――。 つまずきまくり女子は、問題の本質と向き合えるのか? 衝撃と希望の人生格闘記。
  • キョーレツがいっぱい

    キョーレツがいっぱい

    小説・文芸

    -
    1巻330円 (税込)
    いつから世の中はこんなにカオスになったのか?! 共同体からはみ出した問題児たちの渦に巻き込まれていく、痛快エッセイ。 個性的な面子を笑っていたつもりが、 いつの間にか背中にナイフが刺さっている――?! ブスとは何か、セックスとはなにか、女の友情とは何か。 日常で覚える違和感を克明に炙り出す。 <目次> ・アナルを開いて心を開いて ・即断即決のフリチンGUY ・さみしいナンパ ・百合のススメ ・痴漢とわたし ・ディズニーランドは女の友情の試金石である ・女子力とはなんぞや ・嫉妬狂(ジェラシスト)に捧ぐ ・「ブス」という呪い ・セックス・アンド・ザ・気功、そして虚しさ ・キョーレツがおっぱい ~小野美由紀、乳がん検診に行く~ ・「キャロル」を見て感じた、“男が悪者”映画へのモヤモヤ ※本作品は、幻冬舎plus(http://www.gentosha.jp)で、2015年02月~2016年4月にかけて連載していた「キョーレツがいっぱい」をまとめたものです。
  • 時代の動かし方 日本を読みなおす28の論点

    時代の動かし方 日本を読みなおす28の論点

    ビジネス・実用

    -
    1巻202円 (税込)
    政治・経済から歌舞伎、恋愛、アートや相対性理論まで、各分野で活躍中の著者28名が「これだけは言っておきたい!」ことをテーマに執筆。 次々新しい出来事が起こっても、時間は地続き。情報の波にのまれそうになったら、これら28個の視点を、前に進むとき、考えるときの指針にしてください。 【収録作品(一部)】 飯田泰之 日本経済にまず“実力通り”の力を発揮させよ 生島淳 東京オリンピックもWCラグビー日本大会もすぐにやってくる 大栗博司 まさか毎日アインシュタインのお世話になるとは 沖田×華 北陸新幹線開通でおとずれた幸せと誤算 開沼博 『福島第一原発廃炉図鑑』が埋める「空白」 國分功一郎 無人島をどう生き延びるか? コグマ部長 仕事始めにテンションの上がる読書案内 今野晴貴 本当に恐ろしい「奨学金」という時限爆弾 坂口孝則 万全のリスク管理は無理だと認める勇気を持とう 佐藤慶一 “分散型”が進むメディア業界ではWebライター/編集者の“身体性”が鍵を握る 辛酸なめ子 印象に残ったフェス10選 鈴木大介 貧困問題をオワコン化するな! 武田砂鉄 2016年に求められるのは、「五郎丸ピケティ」的な語感 中川右介 海老蔵をもっと歌舞伎座に――これにつきる 中田考 難民問題が“先進国”に突きつけたもの 中村淳彦 2015年、介護という社会保障は破綻した 速水健朗 聖子とマッチとハムスターとしての僕たち 久田将義 山口組分裂で抗争勃発?乗じて半グレがのし上がる? 北条かや 上司の方々、『タラレバ娘』にきちんと向き合って下さい。 ※本作品は「幻冬舎plus http://www.gentosha.jp/」で連載した“言っておきたい!!2016”の記事をまとめたものです。

ユーザーレビュー

  • ピュア

    Posted by ブクログ

     恐竜のような鱗に覆われた女たちと彼女たちに食べられる男という衝撃的な『ピュア』や全身の染色体を書き換えて男になった親友との関係性に主人公が思い悩む『バースデー』など性と人間のありようが如実に描かれたSF短編が6編収録されていて、どの作品も性的描写やグロ描写が過激だったけどそれを遥かに上回る一途な恋愛模様を見届けたいと思っている自分がいた。

    0
    2025年07月18日
  • ピュア

    Posted by ブクログ

    僕たちが生きている世界とは異なる世界、でもひょっとしたらありうる世界。
    かなり心が揺さぶられる。
    簡単なパッピーエンドは許されない厳しい現実があって、僕達は何とか納得できる正解を出そうと足掻いている。

    0
    2025年04月26日
  • ピュア

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    この短編集を貫くテーマは、性とジェンダー。大半はヘテロセクシャル・シスジェンダー同士の関係性を描いていますが、一部は女性同士の強固な結びつき、シスターフッド的な風味を感じさせます。そして、ほぼ全編に漂う暴力性。
    現代に生きる女性作家が、直球ストレートに性を扱った作品群ですが、決してセンセーショナルではありません。むしろ、いろいろと考えさせられます。

    惜しむらくは、全作品が既存のジェンダー規範に囚われていること。「SEX=暴力」という現実の側面を全面に押し出し、男は搾取する側、女は搾取される側、という前提で価値観が構築されているところが、極めてコンサバティヴです。表題作は、暴力の方向性が男→女ではなく女→男に逆転している点が新規的ではありますが、最終的に「強い母親が愛する男と結ばれて子供を守り育てる」という従来の規範に収まってしまうのが、ちょっと勿体無いな、と思いました。
    ・・・ただ、ね、これが現実なんですよね、実際のところ。この短編集を「性の描き方が浅い」と批評するコメントも散見されますが、だって、実際そうなんだから、仕方ないじゃん。と、鴨は思います。
    所々に漂うシスターフッド風味には正直違和感を覚えないでもありませんが(鴨自身がそういう経験がないので)、女同士の結びつきを強固にすることによってしか女は自分を守れない、という側面を強調した結果なのかな、と鴨は理解しました。

    オンナSF者の一人として、読んでおいて損はない作品だと思います。でも、この作品について誰かと語ろうとは思わないかなー。自分の心の中だけで、じっくり噛み締めたいです。

    0
    2024年12月07日
  • 人生に疲れたらスペイン巡礼~飲み、食べ、歩く800キロの旅~

    Posted by ブクログ

    1067

    小野美由紀
    1985年東京生まれ。著書に銭湯を舞台にした青春小説「メゾン刻の湯」(ポプラ社)、韓国でも出版された「人生に疲れたらスペイン巡礼」(光文社)「傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」(幻冬舎文庫)絵本「ひかりのりゅう」(絵本塾出版)など。2020年4月に刊行された”女性がセックス後に男性を食べないと妊娠できない世界になったら?”を描いた恋愛SF小説『ピュア』は、早川書房のnoteに全文掲載されるや否やSNSで話題を呼び20万PV超を獲得した。イタリアでの出版が決まっている。ウェブメディア・紙媒体の両方で精力的に執筆を続けながら、SFプロトタイパーとしてWIREDの主催する「Sci-Fiプロトタイピング研究所」の事業にも参加している。オンラインサロン「書く私を育てるクリエイティブ・ライティングスクール」を主催。

     巡礼路には、世界中からあらゆる人種・階層・職種の人々が集まってくる。アメリカの大企業の経営者から、ギャップイヤーで人生を考えに来た学生、失業中の若者、5歳の男の子、リタイヤしたおじいちゃん、ブラジルのエリート、メキシコの牧師、南アフリカの大金持ち、ホームレス……。多種多様な人々が、それぞれの出自や身分などまるで関係なく、助け合い、聖地を目指す。  中にはもちろん 敬虔 なキリスト教信者もいるけれど、最近ではもっぱらこの道もレジャー化し、目的は「自分探し」だったり、「リタイア後の人生を考えるため」だったり、カップルの新婚旅行だったりとさまざまだ。ピーク時には、毎日200人ほどの「人生の夏休み」状態の人たちと共に、人生について語りながら、ワインを飲みつつ、楽しく道を歩くことになる。

    スペインといえば世界遺産。当然、歴史の古い巡礼路には有名な世界遺産建築がゴロゴロある。ブルゴスやレオンといった街の大聖堂や、ガウディが設計したアストルガの教会、ポンフェラーダのテンプル騎士団の 要塞 であった城などである。その美しさ、精工さは筆舌に尽くしがたい。歴史好きや建築好きにとってはまさに「お宝」。美しい世界遺産を見るだけでも、訪れる価値がある。

    また、大自然の美しさも、この道を歩く大きな楽しみである。800キロにわたる巡礼路は、山あり谷あり、多種多様な地形の上を通っている。ピレネー山脈越えに始まり、見渡すかぎり一面のひまわり畑や、もののけ姫の舞台のような、 苔むす深い森、岩だらけの峠など、多彩な表情を持つ大自然の中を抜けてゆく。スケールの大きさは、スペインならでは。その美しさ、刻々と変わる表情に、胸を打たれっぱなしになること間違いなし。

    毎日、長時間を歩いていると、嫌でも一人になる時間がやってくる。一人きりで大自然の中をひたすら歩くのは、まさに「自分との対話」の時間だ。なんの目的もなく、ふらっと何時間も歩くことなんて、人生のうちにそう多くはない。その「空白」の時間のうちに、自分の内側から、日頃から抱えてきた悩みや疑問に対する答えがぽっかりと浮かび上がってくることがある。その「空っぽの自分」になれる浄化作用が、この巡礼の道にはあるのだ。

    私たちは普段「こうしなきゃ」とか「こうあらねば」という、「べき論」に縛られて、ついつい生きてしまう。そうなっているうちは、自分が本当に望んでいることや、悩みに対する答えを見つけるのは、案外難しい。しかし、この巡礼の道には「べき」がない。自分のペースで歩き、自分のペースで休む。あるのは大自然と、己の肉体のみだ。やるべきことは、たった一つ。「歩くこと」。

    「自分探し」って、なんだかかっこ悪いし照れくさい。でも、人生には一度くらい、どん底にまで追い詰められて、生きる気力も湧いてこず、「もう自分探しくらいしか、することねーよ……」とつぶやきたくなる時があったり、する。そんな時に、もうどうにでもなれという気持ちでこの道を歩けば、不思議と心が軽くなり、「次に行こうかな!」と思えてくる。

    徒歩の巡礼者の次に多いのが、マウンテンバイクなどの自転車で巡礼をする人々だ。  2004~2014年の統計を見ると、巡礼の手段別に、徒歩 85・4%、自転車 14・2%、馬0・4%。ヨーロッパは特に自転車人口が多く、巡礼路は有数のサイクリングロードとして知れ渡っているのだ。  道を歩いていると、ヘルメットをかぶった自転車の集団が、山林、湿地、オフロードをものともせずに、びゅんびゅん横を通り過ぎてゆく。歩行者用巡礼路の近くには国道が沿っているので、アスファルトと山道をそれぞれ走り分けつつ、爽快な旅路をエンジョイしているようだ。  宿は、徒歩の巡礼者と同じで公営・私営に限らずアルベルゲに泊まれるが、村や街によっては自転車置き場がある宿は限られるため、ガイドブックでチェックを。私営の宿はだいたい問題ない。また、日本人でも若干名ながら、自転車でのカミーノを体験した人もいるので、彼らのブログを読んでおくと心強いかもしれない。  祖国から自転車を持ち込む人もいるし、マドリードやバルセロナ、サン・セバスチャンなどの都市で自転車を買ってスタートする人もいる。大きな街なら、巡礼路上にも自転車用品を売る店や修理店があるので安心だが、万が一の事故や故障に見舞われた時は、周りの自転車巡礼者に助けを求めよう。また、そのためにも、山に雪が降り、人の少なくなるオフシーズンは避けたほうが無難かもしれない。  夏や秋、季節の美しいシーズンに生い茂る森の中を疾走するのは、さぞかし気持ちがいいだろう。

    語学ができなくても、まったく問題ない。この本の担当編集者Mは、英語もスペイン語も話せないまま9月に一人で巡礼の旅に出かけたが、思いっきり満喫して帰ってきた( コラム2 参照)。片言の英語しか話せなくても、コミュニケーションを取ろうとする心意気さえあればなんとかなる。そもそも、道を歩くスペイン人やイタリア人の中にも英語が話せない人はたくさんいる。しかし、なぜか相手の言っていることが伝わるから不思議だ。語学ができないから……と尻込みしているのはもったいない。

     これは、自分探しという名の現実逃避かもしれない。旅に出て、何かが見つかると思うほど子どもじゃない。けれど、部屋で一人、膝を抱えているよりましだ。全部を捨てた時、万が一でも、次の道が見えてきたとしたら。どんなにしょぼい自分だって、私はまだ、人生を諦めたくはない……。  私はそうして、スペイン巡礼の旅に出ることに決めた。 35 日をかけて、フランス南部、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーから、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで、800キロの道のりを歩く、巡礼の旅に。

    この道には、なぜか、パートナーと死に別れた人が多く訪ねてくる。大切な人と死に別れた気持ちを整理するのに、「歩く」という行為は、役に立つのだろうか。結婚も死別も経験していない私には、まだ分からない。

    高齢者が、冷えきった床で寝るのは酷だ。迷ったすえ、私はマットレスのチケットをあげることにした。仕方ない。薄っぺらい寝袋でも、パーカーとフリースを着れば、なんとかなるだろう。ジョアンナはうれしそうにサンキュー、サンキューと繰り返し言う。それを聞いていたもう一人のアメリカ人のおばさんの申し出で、2枚のマットレスを縦にくっつけ、最終的に、3人でそれに横たわることになった。日本で、人に会うのを避けるようにしていた自分が、今こうして、会ったばかりの人と協力し合っていることが、不思議で仕方ない。

    が、「イギリスやドイツ人など、ゲルマン系の人々は、みな、辛そうな顔をして黙々と歩いている。それにひきかえ、スペインやイタリアなどのラテン系の民族たちは、朝遅く出て、のんびりと景色を見ながら歩き、たっぷりのうまい食事とおしゃべりを楽しみ、シエスタをして、夜はワインをあおって寝る。出自の違いがはっきり分かるね」。  確かにその通りだ。彼らは昼間から豪快に飲み、豪快に食べ、豪快に笑う。午後は、ワインを片手に日光浴。夜はよくも飽きないなと思うほど、遅くまで談笑。老人だろうと母だろうと父だろうと、「私は私!」で生きている人の、屈託のなさがある。 「もちろん、一番大切なのは子どもたちだけど、彼らよりも私の人生のほうが大切ではない、なんて、そんな道理はないわ。私はまだ若いし、いろんな選択肢がある。私は私の人生を生きるの。私がハッピーであれば、子どもたちもハッピーなのよ!」

    リタは、カリフォルニア出身の 45 歳。病気や事故で身体に障害を負った人に、ボディーワークを施すセラピストだ。巡礼は2回目。若い頃は証券会社でバリバリに働くキャリアウーマンだったそうだ。しかし身体を壊してリタイアし、絶望のどん底の中、この道を歩くことを思いつき、数年前に、一度目の巡礼を経験した。 「私が頑張っていたのは、失敗するのが怖かったからよ。若い頃に離婚もしたし、自分には仕事だけ。あれはダメだ、これはダメだ。ベジタリアンフードを食べなきゃ。ジムに行かなきゃ。仕事は完璧に。次のパートナーはステキな人を……って」  リタの言うことはよく分かる。日本にいるときの私は、とほうもなく、焦っていた。同期入社の仲間より、少しでもいい評価がほしい。友達よりもいい彼氏が欲しいし、友達の数は多いほうがいいし、フェイスブックの「いいね!」の数は、多ければ多いほどいい。だから、空気の人形みたいに理想の私を作り上げて、それで勝負しようとしていた。きびきびと、人と足並み揃えて、協調できる私。空気の読める私。人より先に、考えて、答えを出せる私。そうしていないと、◯と×の、×のほうに、すぐさまふりわけられてしまう気がした。社会の編み目から、こぼれ落ちてしまう気がした。

    「君にとって、この道はネコみたいなもんだろう? だから君はここに来た。だったら逃げないほうがいい。でも、仕事は違ったんだろう? 自分の大きさと相手の大きさを比べて、もしも敵わないと思ったら、その時は逃げればいいんだよ!」  ずっと、逃げるのは悪だと思っていた。「一度逃げたら一生逃げ続けるぞ」とか「3年で辞める新卒の社会人はアホだ」とか、人に言われた言葉を頭に詰め込んで、ただ繰り返していた。闘えない自分を責めるのに一生懸命で、私はそれが自分にとって、闘える大きさかどうかなんて、一度だって、考えたこと、なかった。問題なのは「逃げた」ことじゃない。「逃げちゃダメ」にとらわれて相手をちゃんと見ようとしていなかった、私の頑なさだ……。  言葉にがちがちにしばられて、凝り固まった心が、胸の内側で溶けてゆく。ぼろぼろと 欠片 が涙になって、拭いても拭いても、目から転がり落ちてくる。

    「でもさ、わざわざここに来なくたって、君たちの国にも同じものがあるだろう?〝Zen〟っていう世界に誇る文化が」  ワインをガブ飲みして、大声で笑い合うカミーノの道と、冷たい床板の上でひたすら耐える、厳しい座禅のイメージは、とうてい結びつかない。しかしこの道を好む人々の中には、パーティーマニアと同じくらい〝Zen〟マニアも多いのだ。  そういえば、この道をすすめてくれた金さんは、こんなことを言っていたっけ。 「四国遍路でもカミーノでも、聖地巡礼という行為はね、人々の、複雑骨折したエゴを治療して、すっと通る、一本の背骨に戻してくれるんですよ」

    遠い昔、人々は神の赦しや罪の浄化を求めて、この道を歩いた。さぞや危険な旅だったに違いない。身を賭してでも救われたいほど、その人びとは大きなものを抱えていたのだろう。今も、家族あるいは自分の病気の平癒を願って歩く人や、過去の罪を償うために歩くという人はたくさんいる。この道の人気の高まりについて、安易なスピリチュアル・ブームだとか、信仰を理解していないのに、とか、批判する人もいる。けれど実際に歩いてみると、この道が多くの人々に必要とされる理由が、とてもよく分かる。

    それにしても、歩き始めたころの私なら、絶対にバスで移動するなんて選択肢を自分に許さなかっただろう。歩くことは自分との闘いだと思っていた。でも、 20 日を過ぎた今は違う。会話を楽しみ、街の人々の暮らしを眺める余裕もできた。みんなそれぞれ、自分なりのペースで歩いていることも知った。

    ガイドの男性に、「まるで、映画『サン・ジャックへの道』みたいですね」と言うと、彼は「あの映画は、監督と僕が一緒にシナリオを考えて、2年がかりで作ったものだよ!」と目を輝かせた。 『サン・ジャックへの道』は、2005年にコリーヌ・セロー監督によって作られたフランス映画。薬物依存の兄、アルコール中毒の弟、ヒステリックな妹。互いに問題を抱え、いがみ合う兄妹弟が、亡き母親の遺産を相続するためにフランスのル・ピュイから聖地サンティアゴまで1500キロを歩くというストーリーだ。他にも、欠落を抱えた人物や、社会的に弱い立場にいる人々が、共に助け合いながら聖地を目指すうちに、それぞれに欠けていたピースを取り戻してゆく。  私はこの映画が大好きで、出発前に何度も繰り返し見ていた。その映画を作った人に、まさか、出会うなんて!

    歩き始めた時、私は強くならなきゃ、と思っていた。日本でのしくじりを胸に抱え、失敗した自分をぐじぐじと責め、武者修行のつもりで旅立った。でも、今なら分かる。逃げや失敗は、新しいスタートなのだ。ケガをして、痛くてうめいても、そこからまた、新しい芽が出てくる。積み上げたものが、永遠に消えるなんてことはない。弱い自分だって、大事な財産の一部だ。そこから、何度だって、やり直せる。生きているかぎり、いつかは次の矢印にたどり着ける。だってこんなにも多くの人々が、これまでに築いた道の上に、私は立っているんだから。

    *時間のないサラリーマンでも可能! 100キロ 7泊8日コース  有給休暇や夏休みを使って、8日間の休みが取れたとする。そんな時は迷わずカミーノにGO! 最短で巡礼を満喫するコースがこれだ。  マドリッドまで飛行機を乗り継いで行き、バスか列車で約100キロ手前の街、サリアに行く。1日 20 ~ 25 キロ歩いて、5日間で余裕を持って聖地サンティアゴに到着。サンティアゴで祝杯をあげ、夜行バスか列車、またはLCCでマドリッドに戻り、日本までフライト。このコースであれば最短7泊8日でカミーノを完了することができる。ガリシア地方のグルメを堪能できるし、巡礼証明書だってもらえる。巡礼の魅力をぎゅっと凝縮した最短コースだ。

    *まずはここから! 世界遺産と自然を堪能、300キロ  13 泊 14 日コース  少し時間に余裕のある人は、このコースがおすすめ。世界遺産の街レオンまでマドリッドからバスで向かい、1日 25 ~ 30 キロを歩く。途中、セブレイロ峠で美しい自然の景色に癒やされ、ガウディの設計した教会のあるアストルガ、中世のテンプル騎士団の要塞跡のあるポンフェラーダなどを通過して歴史の香りにひたりつつ、レオン州とガリシア州の自然とグルメを満喫。サンティアゴでは一泊して到着を祝おう。

    *33 日間どっぷり800キロ踏破コース  もしもあなたが、「人生の夏休み」にこの道を選び、巡礼の魅力を余すことなく堪能したいと思ったら? もしくは壮大な暇つぶしがしたいなら? 思いきって 33 日間で「フランス人の道」を踏破するコースに挑戦してほしい。フランスの国境、ピレネー山脈の麓の街サン・ジャンから始め、一日 20 ~ 30 キロほど歩きながら、スペイン北部を横断してゆくルートだ。

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    2024年02月13日
  • ピュア

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    女性として生きることの辛さ、弱さを詰め込んだ本。
    「ピュア」では、女性のほうが男性より強い社会という、今までにはない世界観だった。
    同類の妬みという人間的なものに上乗せして、性別の問題は私達の人生をより厄介にさせる。
    命を宿すために命をもらう女。
    生きている世の中、世界は違えど女の子として生きるために戦っている彼女たちのパワーと、自身の性に対する嫌悪、そして向き合って生きていく姿を、私も子宮で受け止めた。

    一番好きだなと思った作品は「To The Moon」だった。
    まさにピュアでまっすぐな純愛物語だったと思う。
    「私を嫌いにならないで」
    「嬉しいの。人間だった時の私が、誰かを殺すぐらいにあなたを好きだったことが」

    言葉以上の言葉だなと思った。

    0
    2026年02月23日

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