米原謙の作品一覧
「米原謙」の「植木枝盛 民権青年の自我表現」「徳富蘇峰 日本ナショナリズムの軌跡」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
熊本で徳富蘇峰記念館を訪れて興味を持ち、読んでみた。同志社出身のジャーナリストという漠然としたイメージしかなかったが、蘇峰のナショナリズムに焦点を当てた本書で明確な像を結んだ。
新聞記者は、虎穴に入らずんば虎児を得ずということで、取材対象に深入りした結果、自身がプレーヤーになってしまうことがある。特に政治の世界ではよくあるが、蘇峰はまさにその先駆者であろう。新聞社を経営しながら、松方首相の際に、内務省の参事官を引き受けてしまったり、自身の新聞を「正統なる唯一機関」と覚え書きを交わし、政府の機関紙であることを臆面なく宣言してしまう。言論人ではなく、フィクサーの感が強い。
「欧米に対して正統な認知を求めながら、アジアの他者が同じ欲求を持つことは認識できなかった」「アジアの他者には欧米と同じ立場で、脱亞の姿勢のまま対処した」との指摘は至言で、大日本帝国の命運とともに、大日本言論報国会の会長を務め、戦後はA級戦犯指定に至ったのは、必然だろう。敗戦で「百敗院泡沫頑蘇居士」という戒名を名乗ったという。94歳まで生きたが、これが明治中期ぐらいで召されていれば、もっと歴史的評価が変わった人物なのかもしれない。
Posted by ブクログ
日本におけるジャーナリストの草分け的存在でもある徳富蘇峰の生涯を著したもの。徳富蘇峰はジャーナリストの他にも、思想家、歴史家、政治家として明治~昭和にかけて影響力の与えてきた人物。
また副題にもある通り、本著では日本のナショナリズムの変遷がうまく整理されており、その意味でも一読の価値あり。
以下引用
・蘇峰の弱点は、脱亜を断念した後も、脱亜論の目できかアジアを見ることができなかった点にある。それは欧米に対して正当な認知をもとめながら、アジアの「他者」が同じ欲求をもつことは認識できなかったということである。換言すれば、欧米が日本の国民的自尊心を傷つける事には敏感でも、アジア諸国の「傷つけられた自尊心」には無関心だった。くり返せば、アジアの他者には欧米と同じ立場で、脱亜の姿勢のまま対処したのである。
・現在を歴史のパースペクティブで観るとともに、過去を現在の問題意識で読み直すのが、言論人としての蘇峰の一貫した方法だった。
・明治国家の対外問題、リベラリズム、富国強兵の課題を西郷・木戸・大久保がそれぞれに体現しており、かれらが抱えた課題が日露戦争の勝利によってほぼ実現したと(蘇峰は)考えたのである。