上遠恵子の作品一覧
「上遠恵子」の「センス・オブ・ワンダー(新潮文庫)」「ヤマケイ文庫 潮風の下で」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
レイチェル・カーソンの詩的で美しい文章が、上遠恵子さんの訳を通して鮮やかに伝わってきた。
ある秋の嵐の夜から始まる冒頭の数行で、私はすっかりレイチェル・カーソンの世界に引き込まれてしまった。この本を通して、子ども時代をどう生きるべきか、そして何を大切にすべきかを考えさせられた。
レイチェルが伝えようとしているのは、単なる知識ではなく、全身に響き渡るような経験なのだと思う。
自然に触れ、心を動かされ、驚きや喜びを感じること。そうした経験にこそ、知識を得ること以上の価値があるのではないだろうか。
例えば、草花や生き物の名前を覚えることも、その価値はどれだけ楽しみながら覚えたかによって変わる。ただ名前を知ることだけで終わってしまうのなら、そこにどれほどの意味があるのだろう。大切なのは、何を知っているかではなく、それに触れたときに何を感じたかなのだと思う。
だからこそ、子ども時代には「やった方がいいこと」よりも「やりたいこと」に素直に向き合い、伸び伸びと好奇心を育むことが大切なのだと感じた。
感性は、知識を育む土壌になる。
豊かな感性という土壌があってこそ、そこに根づく知識はより美しく花開く。反対に、どれほど多くの知識を身につけても、それを育む土壌が貧しければ、知識は十分に根を張ることができない。
また、日々見慣れた景色であっても、「もし、この景色を初めて見るとしたら?」「もし、もう二度と見ることができないとしたら?」と問いかけてみる。そうすることで、当たり前だと思っていた景色の中にも、これまで気づかなかった美しさや尊さを見いだせるのかもしれない。
世界がつまらなくなったのではなく、世界に驚くことを忘れてしまっただけなのかもしれない。
センス・オブ・ワンダーは、決して一部の人だけに与えられた特別な才能ではない。誰もが生まれながらに持っている、世界の不思議や美しさに心を動かされる力なのだと思う。
だからこそ、大切なのはそれを新たに身につけることではなく、失わずに育んでいくことなのだろう。
知ることの前に、感じること。
大人になるにつれて知識は増えていくけれど、世界に対する驚きや好奇心まで失ってしまいたくはない。
いつまでも、初めて世界に触れる子どものような眼差しを大切にしていたいと思った。