【感想・ネタバレ】[新版]企業戦略論【下】全社戦略編―――戦略経営と競争優位のレビュー

あらすじ

MBAの教科書、決定版!
米国&日本のビジネススクールの人気テキスト、18年ぶりの改訂新版!
リソース・ベースト・ビューの視点で、「全社戦略」を徹底解説

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Posted by ブクログ

 下巻は、全社戦略編として、垂直統合や多角化、提携、合併・買収を扱う。
 非常に興味深かったのは、提携、合併・買収である。提携とは何で、何のためにやるのか、それがどのような経済的価値に裏付けられているのかは意外と考えたことがなかった。そこには、
 ・既存事業のパフォーマンス向上
  (1)規模の経済の活用
  (2)競合からの学習
  (3)リスク管理とコスト分担
 ・優れたパフォーマンスの確保に有利な競争環境の創出
  (1)技術規格の成立を促進
  (2)暗黙的共謀の促進
 ・業界や業界セグメントからの低コストの参入又は撤退の促進
  (1)業界や業界セグメントからの低コストの撤退
  (2)不確実性への対処
  (3)新たな市場への低コストの参入
が経済価値を生み出すパターンとして取り上げられている(P.145)。
 他方、これらよりも面白く現実では起こり得る事象として、提携相手が裏切る場合を取り扱っているのも面白い。
 合併・買収では、範囲の経済がその経済価値の源泉だとされている。M&Aが行われる根拠として、
 (1)生き残りへの欲望
 (2)フリー・キャッシュフローの存在
 (3)入札企業の経営陣と株主の間のエージェンシー問題
 (4)経営陣の傲慢
 (5)少なくとも一部の入札企業はM&A戦略の実行によって経済的利益を得る可能性があること
が挙げられている(P.232)。面白かった(うえに現実に生じ得る)のは、M&Aは利益を生まないものの、他の(設備)投資よりはマシと(選択肢の中では最良だが、絶対的な利益水準の確保という意味では疑問)いうことが往々にしてあることに言及している点であった。

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2026年02月07日

Posted by ブクログ

上巻、中巻が個別事業の戦略であり、下巻は全社戦略であり多角化や提携、買収を扱う。上巻、中巻の議論が議論の前提となっている。もちろん全社戦略を担当する方にとって基本的言語というレベルで必要だと思うが、そうではない個人にとっても示唆に富んだ本なのではないか。
コングロマリットディスカウントという言葉がある。多角化したコングロマリットの企業価値が、それぞれの各事業の事業価値の合計額を下回っているという状況を指すものである。ラーメン専門店と牛丼専門店がラーメンと寿司の店を開いたとする。ラーメンを食べたい人はラーメン専門店に行き、寿司を食べたい人は寿司専門店に行ってしまうのではないだろうか。経営学者には怒られるかもしれないが、これも多角化による価値低下ではないかと考える。または、ITエンジニア兼セラピストという人がいたらどうだろうか。どちらかに特化した人にお願いしたいと思う方もいるかも知れない。でも、ラーメン&寿司の店が何らかの特定の経営資源を共有していたらどうか?牛丼の松屋は寿司屋を経営しベトナム店ではラーメンも出している。これは何らかのシナジーがあるのであろう。また、ベトナムという異なる市場環境においては日本食エントリー層に対しては複数の日本食が食べられることが優位なのかもしれない。ITエンジニア兼セラピストも社内のエンジニアの労働環境を真に考える会社にとってはものすごく貴重な人材かもしれない。そう考えると多角化や垂直統合、水平統合は身近にたくさん応用可能なのではないかと考える。もちろん経営学的には全く異なると言われてしまうような気もするのだが。本書ではどのようなときに提携をし、どのような場面で買収をするのか、垂直統合が優位性をもたらす場合はどのような場合かが書かれている。垂直統合とは、バリューチェーンの前後の活動を自ら行うこととなるが、個人の人生では例えば野菜を買ってくるのか、野菜を育てるのか。料理を作るのか、外食をするのか、又は中食を買ってくるのか。家具を買ってくるのか、DIYするのか。学習塾に通わせるのか、親が勉強を教えるのか。こういった選択肢は垂直統合をするかどうかの話と捉えることもできる。そう考えると、やはり個人の人生において戦略的で効果的に幸福を獲得するために役立つ考え方なのではないかと考える。また、誰かと共同で何かを行うというのは企業間だけではなく個人間でも多く発生する事例だろう。戦略的提携の章には裏切りを防止し長期的に互恵関係を構築するために役立つ内容も書かれている。もちろん個人と企業の雇用関係も戦略的提携である。本書では企業特殊投資を行う従業員の例が書かれているが、一人では行きていけないのが当たり前である現代において個人が各関係者、例えば雇用先、取引先、サークル、姑、そういうところに対してどのように戦略的に全員が幸せになる関係を築いていくのかを考えるアイデアにもなる本である。

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2025年01月20日

Posted by ブクログ

企業戦略の王道の1つであるジェイ・バーニーの企業戦略論の中巻。
マイケル・ポーターに代表される「市場で儲かるポジショニングを取ることが大事」というポジショニング派に対して、バーニーは「市場ももちろん大事だが、企業固有の価値創造能力のほうが大事である」というケイパビリティ派の雄である。
全社戦略をそれぞれVRIOの視点で分析しており、それぞれの狙いや気を付けるべきところが解説されている。Vは経済的価値、RとIは持続的競争優位、Oが組織体制である。メリットだけでなくデメリットや、気を付けるべきポイント、演習問題などがあり深く考える時間も取れることから、全編通して非常にわかりやすい良書である。

第8章は「垂直統合」、前方垂直統合と後方垂直統合におけるポイントを解説している。経済的価値と持続的競争優位が得られる統合であることはもちろん重要だが、将来の不確実度によって垂直統合のリスクは増加するため、そのことを考慮することが大事になる。
第9章が「多角化」である。多角化が経済的価値を生むには範囲の経済をうまく活用すること、持続的競争優位を確立するためには多角化の組み合わせ自体に希少性や模倣困難性がある必要がある。ちなみに多角化してもそんなに経済的な価値は生まれないが、会社の存続性には寄与をする(ただし株主はポートフォリオを組むことでリスク回避できることから、会社と株主間で利益の相反は起こりうる)。
第10章の「経営多角化に向けた組織体系の構築」では、多角化の組織体系について1つの章を割いて解説している。基本的には事業部制を敷き、取締役会で各事業部を取りまとめるスタイルとなる。
第11章は「戦略的提携」で、企業間の提携におけるVRIOを解説している。変化が激しい時代では統合や合併などでは方針変更に対するリソース消費が大きくなるリスクを伴うため、解消が容易な提携が適している。学習レースや裏切りなどからどういうことに気を付ける必要があるかが述べられている。
第12章は「合併・買収」である。基本的に合併・買収する側には経済的メリットは生じにくく、される側には生じやすい。それなのになぜ合併・買収が起きるのか、そのときに陥りやすい罠はなにか、ということが解説されている。

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2022年03月10日

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