あらすじ
その告白が、世界を変える。
とある地方都市に暮らす冴えない高校生・紙木咲馬には、完璧な幼馴染がいた。
槻ノ木汐――咲馬の幼馴染である彼は、イケメンよりも美少年という表現がしっくり来るほど魅力的な容姿をしている。そのうえスポーツ万能、かつ成績は常に学年トップクラス。極めつけには人望があり、特に女子からは絶大な人気を誇っている――。
幼馴染で誰よりも仲がよかった二人は、しかし高校に進学してからは疎遠な関係に。過去のトラウマと汐に対する劣等感から、咲馬はすっかり性格をこじらせていた。
そんな咲馬にも、好きな人ができる。
クラスの愛されキャラ・星原夏希。彼女と小説の話で意気投合した咲馬は、熱い恋心に浮かれた。
しかしその日の夜、咲馬は公園で信じられないものを目にする。
それはセーラー服を着て泣きじゃくる、槻ノ木汐だった。
『夏へのトンネル、さよならの出口』『きのうの春で、君を待つ』で大きな感動を呼んだ<時と四季>シリーズのコンビ、【八目迷×くっか】が挑む新境地。とある田舎町の学校を舞台にした、恋と変革の物語。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
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Posted by ブクログ
本作は、決して退屈ではない。むしろ、その誠実さと鋭さゆえに、目を逸らすことができない物語である。しかし同時に、読み進めることがこれほどまでに心を消耗させる作品もまた、そう多くはない。
物語は声高に主張しない。大きな事件が連続するわけでもない。それでも、登場人物たちの選択や沈黙、言葉にできない逡巡が、読者の胸に重くのしかかる。善悪では割り切れない感情の揺らぎ、誰もがそれぞれの正しさを抱えながら、同時に誰かを傷つけてしまう現実。その描写はあまりに静かで、あまりに容赦がない。
とりわけ印象的なのは、「理解したい」と願う心と、「本当の意味では理解しきれない」隔たりが丁寧に描かれている点だ。優しさが万能ではないこと。誠実さだけでは救えない瞬間があること。そうした真実が、淡々とした筆致で積み重ねられていく。登場人物を責めることも擁護することもできず、ただその葛藤を引き受けるしかない。
興味深い。テーマは現代的で、心理描写も精緻だ。物語としての完成度も高い。だが、その完成度の高さこそが、読む者の心を深く削る。読後には、爽快感よりも静かな疲労と、やり場のない余韻が残る。
だからこそ、続編に手を伸ばすことを躊躇してしまう。再びあの痛みと向き合う覚悟が、自分にあるのかと自問してしまう。しかしそれは、この作品が真摯である証でもある。軽く消費される物語ではなく、読者の内面に踏み込んでくる物語だからこそ、安易に次へ進めない。
『ミモザの告白』は、楽しさよりも真実を選んだ作品である。読むことは決して楽ではない。それでも、その痛みの中にしか触れられない感情が確かにある。だからこそ、この物語は強く、重く、そして忘れがたい。