あらすじ
愛ゆえに、人は。
『流浪の月』『滅びの前のシャングリラ』本屋大賞受賞&二年連続ノミネートの著者が描く、家族の物語。
すみれ荘のその後を描く「表面張力」を収録した完全版。
下宿すみれ荘の管理人を務める一悟は、気心知れた入居者たちと慎ましやかな日々を送っていた。そこに、芥と名乗る小説家の男が引っ越してくる。彼は幼いころに生き別れた弟のようだが、なぜか正体を明かさない。真っ直ぐで言葉を飾らない芥と時を過ごすうち、周囲の人々の秘密と思わぬ一面が露わになっていく。
愛は毒か、それとも救いか。本屋大賞受賞作家が紡ぐ家族の物語。
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Posted by ブクログ
2025/11/15
あらすじを見て、タイトルを見て、作者を見て、うっすらともしかして…と思いつつもほのぼの系の下宿に集う人たちのお話なんだろうなと思ったら全然そんなことありませんでした。
奥さんを不慮の事故で亡くした主人公の和久井は自転車に乗っていたら芥という小説家の青年と接触事故を起こしてしまい、彼の腕が治るまで和久井が運営するすみれ荘の下宿で一緒に暮らし、小説を代わりに口述筆記することになった。
一緒に下宿している他のメンバーともあんまり関わろうとしないぶっきらぼうな芥となんだかよく分からないけど行動を共にするようになる和久井と、その周りの人たちとの関わりを描いた小説です。
これだけ見るとほのぼの系ですが読み進めていく内に小説の様相は変わって行きます。
和久井のお人好しにはイライラする場面もあるし、周りの人たち…なんなんだ…と思うような葛藤の場面がたくさんあって揺さぶられる気がします。
ちょっとミステリーみたいな、最初に書いてあることが後になって絡んでくるうっすらダークな読み応えのある小説だと思いました。
Posted by ブクログ
人それぞれ色んな愛の形があるけれど、そもそも愛とは人が作ったただの概念であるのではないかと。
愛とゆう概念が人を壊すこともあれば、救うこともある。すごく好きな本です。
Posted by ブクログ
題名と表紙からほのぼの下宿話かと思って読みすすめてたら、中盤から一気にサスペンスに。
鈴蘭みたいに、じわじわくる怖さがたまらなくよかった。
この本は一貫して、人にはいろんな一面があることをわかりやすく題材にしてくれてるから読みやすかった。展開も読めるはずなのに、ハラハラドキドキできた。
青子は私は一生許さないので、主人公の判断には少しモヤモヤしてしまったが、子を持つ親としてそこまでの考えに至らなかったので少しだけ尊敬?してしまった。
エピローグは、正直いるかな?と思っていたが、オチにはヒヤリとしたが大満足だった。(ヒトコワ好き)
Posted by ブクログ
愛があるからこそ、なにかを好きになって真剣にるからこそ起こる事件ばかりで共感したし、人間とは理不尽で出来ている存在でどうしようもない生き物なんだと思える。生きているものが美しく見える理由なんだと思う
Posted by ブクログ
すみれ荘で、起こる人間ドラマ
愛されてる兄と愛されなかった弟
その周りにいる普通に見えるけれども
抱えきれない罪や業を背負っている人々
ほのぼのかと思いきやハラハラや色々考えさせられる
物語だった
この兄弟の話しがもっと見たいと思える素晴らしい作品でした
初めてこの作家さんの作品を読んだが他にも読みたいと思いました
Posted by ブクログ
◾️record memo
誰かを守ろうとする愛情は、ときとして他人への排除になる。
「結婚してるの?」
「してた。三年前に事故でね。これは仏壇にあげる花」
芥はまた、ふうん、と聞き流した。
さっきまでと違い、それを気楽に感じた。子供のころからの定期検診と同じく、同情にも慣れている。同情はありがたく、重く、いただきすぎると疲れてしまう。
自分の身体なのに思いどおりに動かせない歯がゆさ。肉体的苦痛が長く続くと精神もやつれてくる。あがくほどダメージは増し、諦めて現状を受け入れることが一番楽だと気づく。それがたとえじわじわと未来をも殺していく遅効性の毒だとしても。
「みんなそうならまだ耐えられるけど、なんで自分ばっかりって思っちゃうのがまたしんどいんだよ。自分だけで呑み込むしかないのはきつい」
「大多数の意見なんて、ユメマボロシでしかないんだから」
もういいやと愛されることを手放した。はい、わたしは欠陥品です。修理不可能なので捨ててください。そう開き直ると、いくぶんかは楽になった。
「別にかわいそうとかじゃないよ。無駄な努力はしない、あたしはあたしのままで生きてくしかないってだけだから。高望みさえしなきゃ楽になる。それがわかった」
「ごめん。あたしPMSで月の半分を食い尽くされちゃってんの。だから残りは楽しいことしかしないって決めてるの。あたしにとって本気の恋愛って楽しいことじゃないし、自分が毎日生きるだけで精一杯だし、誰かの夢の応援する余力はないし、逆にあたしが応援されたいくらい。だからアンディのさっきの言葉聞いてドッと疲れた。なんか夢から覚めたというか、強火オタって言ってたけど、担下りしたくなった感じ。もうアンディで萌えられない。楽しめないコンテンツにお金は払えない」
「そんな文句言われるくらいなら、毎月痛み止め飲んで働いて、自分で稼いだお金で楽しいコンテンツ買って、幸せ補給して、あとは好きにぶっ倒れていられる今の暮らしのほうが千倍マシなんです。わかったら人の領域にずかずか入ってこないで」
そもそも闘うための武器が武器の形をしているとは限らない。人によっては甘い菓子だったり、宝石だったり、ぬいぐるみの形をしている。
みな、それぞれになにかを抱えて生きている。それが透けて見える人もいれば、普段の態度からはけっして見えない人もいる。外見と内面の不一致。一見イケメン好きで軽い生き方をしている美寿々が内側に秘めている強いもの。冷笑で世間を斬りにかかる隼人が、夢の尻尾を捨てきれず隠し持っている弱さのこと。
「ありのままの自分ってなんだ?自分が何者なのか、なにを望んでるのか、みんなそんなにはっきり把握してるのか?少なくとも、俺は自分のことなのにわからないことがたくさんある。自分ですらわからないものを、他人がどう赦して受け入れるんだ。そもそも赦されなくても、受け入れられなくても、生きていくことに変わりはないだろう?」
「『天は自ら助くるものを助く』って言葉を知ってる?昔、俺に教えてくれた牧師がいたよ。どれだけ手を差し伸べられても、その手をつかむかどうか決めるのはきみだ。本当の意味できみを助けられるのはきみだけだ、神はその道しるべをくれるだけ、それを見落とさないよう、自分で自分を愛してあげなさいって」
愛という名の器に注がれた毒。
罪を犯した人間が、悪人であるとは限らない。
罪は罪で、悪は悪で、愛は愛で、単純であってくれれば楽なのに。
美寿々は開き直ったように言う。人生の半分を呪いに等しい苦痛と二人三脚で生きている美寿々は、世間一般の評価というものからすでに逸脱している。諦観と紙一重のその価値観に、関係のない他人が口出しする権利など一ミリもない。
友人も恋人もいないが、たまに牧師と会って話をするだけで充分だった。なぜ世の中が『ひとり』イコール『独り』と定義するのかもわからなかった。『ひとり』を寂しいとは少しも思えず、逆に集団に交じったときのほうが居心地の悪さを感じた。
「神さまは人にとって無駄なものは与えないって牧師さまは言ったけど、こう次々トラブルが起きるなんて、そもそも人って欠陥品なんじゃないかな」
そうかもしれない。なによりも尊いとされている愛ゆえに子を捨て、愛ゆえに子を虐待し、愛ゆえに夫を刺し、愛ゆえに毒を盛り、愛ゆえに無理心中を図り、愛ゆえに火をつける。毎日、毎日、世界中で愛ゆえのトラブルが起き続けている。
神さまは人にとって無駄なものはなにもお与えにならない。冬が長く続き、きみの心は植物の種のように眠っている。けれどいつかふたたび芽を出す。
「あたしには、あたしの稼ぎだけで成り立ってて、他人に侵害されない、不条理に奪われない、誰にも気兼ねせずに安心してくたばれる場所が必要なの。冬眠中のクマの巣穴みたいなものかな。それは恋とか愛とは別の次元の話なの」
一ヵ月の半分を死んだように生きながらも、美寿々は自らの人生の手綱を自分の手にしっかりとにぎり続けようとする。
世の中の人すべてが理解し合い、許し合えるなんてのは幻想だ。だからといって希望を捨てることはない。世界にも、心にも、グレーゾーンというものがあっていい。
今、目の前にいる『この人』は、何用の『この人』だろう。仕事用、知人用、友人用、恋人用、身内用、自分専用、同じひとりの中に、いろんな『この人』がいるんだろうなと、つい想像してしまう。
いつも朗らかで場を和ませる人が、家に帰ると不機嫌を隠しもしないでソファで力尽きているかもしれない。わたしが恋人だったら、一日中酷使されたハンカチみたいに皺くちゃになった姿を愛しいと感じるだろう。でも愛が冷めてしまっていたら、うんざりして目を逸らしてしまうだろう。
義妹だけでなく、昔から特に誰かを嫌ったことがない。誰かを嫌うというのは心の負担になる。嫌いなら見ないふりをすればいいだけなのに、みんなよくそんな疲れることをするものだといつも不思議に思う。
友人、恋人、義理の両親、檀家さん、みんな話を聞いてもらいたがる。本当の自分を理解されたがる。わたしは父の教えどおり、黙って話を聞く。みんな、わたしといると落ち着くと言ってくれる。
わたしはたまに自分を花瓶のように感じる。みんな、わたしの中に自分という名の花を生けたがる。わたしは沈黙の器になる。わたしはなにも考えない。
『普通そうにしてても、みんな、誰にも見せない顔がある』
Posted by ブクログ
愛で歪む人間の弱さと身勝手さを、日常的なストーリーの中で丁寧に切り取っていて人間の真理を描いた作品だなと思った。親子愛、兄弟愛、パートナーへの愛、自己愛、色んな愛の形を、不器用に懸命に(どこかでは諦めながらも)生きる人間達を通して描いていて、ストーリーとした楽しみながらも、色んな角度から考えさせられる内容だった。
疎遠の弟が身元を隠し現れるという何かがありそうなイベントをスタートで出しながらも、すぐには真実に触れず日常のほっこりした描写で読者を癒やしつつ、少しずつ深層に近づいていく展開が心地よい。一人一人にスポットを当てた章が毎度期待をこえてくるし、央二の過去やその先など期待を裏切らず収めてくれた印象。(最後に変な因縁とか別の秘密とかが出てくること無く終わって安心して読み終えられた)
設定としてあくまでホームである「下宿」が舞台であることが、必然と登場人物の素の部分にフォーカスされていて話の展開や会話の内容にも納得感があった。
人物のバランスとしても、気弱で気遣いの和久井に対し正直すぎる性格の美寿々と隼人と芥という住人がいることによって、会話の推進力となって読みやすい。言いたいことをスパスパと言ってくれるから終始清々しい。(けど本人には悪意はなかったり、結局は仲良かったりという設定が世界観にも合っていて◎)
美寿々と隼人の章では、それぞれの夢と現実とその葛藤をテーマにしていて面白かったが、章のタイトルが「〇〇の告白」と続く中で急に青子の罪の告白が始まって驚いた。紅茶の描写が細かいことからきっと何かはあるかと思ったが、和久井の高校時代から毒を盛り体調不良を起こさせていたと思うと本当に不憫。だが、それでも亡き妻や娘を想い青子を憎み切れない主人公がリアルだったと思った。特に、義父と義母の「桜子のために和久井を憎み、青子のために和久井を赦す。そんな手のひら返しに理不尽を感じながら、自分は喜びに嗚咽した。」っていう部分が好きだと思った
何より、芥(央二)の人物設定や憎めない描写がキャラとして魅力的すぎる。(ここは語ると長くなりそうだから割愛)。あとは、和久井が作るご飯の描写が丁寧で、作風として好きだった。
総じて、凪良ゆうさんの本もっと読みたいと純粋に思った作品でした!
血のつながらない人たちがまるで家族のようにつながるハートフル下宿ストーリーかと思って読みましたが、すこし違いました。
ひとは見えない苦しみや弱さを抱えて生きているし、愛は平等ではないですが、自分をいたずらに卑下することなく前を向いて生きたいと思わされました。
裏と表
一吾と芥、二人の関係がとても良い。なかなか言葉にできない複雑な過去があっても相手を思いやる気持ちが心根にある。住人の人達もそれぞれいろんな事と葛藤していて応援したくなります。巻末の表面張力も必ず読んで欲しい。
Posted by ブクログ
前半は、下宿の管理人であるお人よしな一悟と個性豊かな住人たちの話だったが、途中から殺人やら放火やら不穏な方向へ進んでいく。
愛が間違った方へ形を変えるとこんなことになるのか…
一悟の人の良さで優しくまとめられているが、かなりサイコパスな話ではないか。
Posted by ブクログ
想像していた物語と違って面食らいましたが、続きが気になってさくさくと読み進めました。
自分でも自分のことを100%理解していないと思うくらいなのに、相手の本当の顔なんて分かるはずもないよなと。
親からのまっすぐな愛を幼少期にどれだけ受け取れるかで、人生が大きく変わりそうだなと思いました。
Posted by ブクログ
表紙かわいいなーと思い購入し、読んだら内容にびっくり笑
人間の色んな顔を改めて感じることができました。
あの人の本当の顔はこれではないかもしれないと同時に、自分の本当の顔を知っている人はいない
Posted by ブクログ
ふと、凪良ゆうさんの作品に通底するままらなさを味わいたくなり手に取った一冊。
すみれ荘の住人たちは、他人より家族に近い立ち位置で、お互いほどよく干渉しながら暮らしている。愛憎うずまく人間模様の中で生まれたそれぞれの罪。最後は兄弟の絆を回復してよかった。
泣きたい時に泣けない。泣くべき場面で泣けない芥。最近読んだ涙の箱を思い出した。
凪良さんの作品、読むの何作目だろう、、
と数えてみると、
流浪の月→神様のビオトープ→わたしの美しい庭→汝星の如く→すみれ荘ファミリア
5作目でした。
次作も楽しみ。
Posted by ブクログ
ずっと読みたかった本の割に
なかなか進まなかった…
けど話の展開が分かってくると、
先を進まずにはいられず一気に読めた。
一悟を取り巻く環境がすごくて
途中で悲しくなったけど、
弟と仲良くなれてよかったと安心した
部分もあった。
凪良ゆうさんの作品は物語に入るとすごい!
また読んでみたい☺︎
Posted by ブクログ
普段ほっこり系ばかり読んでいるから、重い内容でヒェッとなったけど、全体を通しては面白かった〜。
美寿々と隼人の告白は、胃がムカムカするような不快感があったけど、青子の告白からはぐいぐい惹き込まれた。
みんながみんな歪んでて、自分が大切で、裏の顔があって、、怖かった〜。
人の裏の顔(考えてること)なんて分からないし、愛って歪むとこんなにも狂気になるんだなと思わされた。
親子でも相性があるし、兄弟で親から受ける愛情の差があるのは、悲しいけどそうなのかもしれない。
短編の「表面張力」も様々な歪んだ愛とそれを知った上でその上をいくほのかの底知れ無さにヒェッとなった。面白かった!
凪良ゆうさんは人間の醜さというか、嫌な部分を書かれるのが上手な方なんだなぁとおもった。
Posted by ブクログ
愛ってすごく神聖なものと思われている。一面として間違いではないけれど、泥々していたり歪んでいたり。表と裏で単純に言えるものでもなくて、混じり合ってごちゃごちゃなものだから難しいんだろうなあ。
登場人物もたっていて、何気ない言葉が後々の展開につながっていたりとストーリーとしても面白かった。
Posted by ブクログ
凪良ゆうさんの作品を続けて読んでみました。個人的には、神さまのビオトープよりもこちらが、内容に掴みどころがある感じがして好きでした。
世間から求められるふつうやあるべき姿から逸脱することに焦点があたっているのは同じです。終盤にかけての伏線回収によるテンポ感の良さや、登場人物の恐ろしさが際立っていて中弛みしなかったあたりが読みやすく感じました。
親だって人間なんだから、真の意味の平等な愛を子どもたちにわけあたえるなんて無理な話ですね。
Posted by ブクログ
前半は割と淡々と。後半の展開がとにかくおもしろい。
人間の見えない本質部分や生々しさが言語化されるとズキズキ痛い。凪良ゆうの描き方やなあ。
「ウェーイ」!!!!のシーンがとにかく好き。インスタでキラキラ見栄を張るのは言霊と同じ。脳を騙すって悪くない。悲しくても苦しくても楽しいって笑うのは悪くない!!!
愛情は身勝手なもの。
何で愛情を注いでやってるのに ってやってあげた気になるんやろう。それ、誰に頼まれたん???
自分が求める愛の形で貰わなければ満たされないのも身勝手。
日々のイライラが募って日々事件が起きる。
見過ごせるイライラは流す、そうやって現代人は人間関係を上手く紡いでいくものだけれど、溜まりに溜まったフラストレーションが爆発する時がいずれ来る。
自分の気持ちを言語化することで脳が再認識してしまうので目を瞑ることが多いけれど、自分の中で残り続けるモヤモヤは何かしら納得できる形で解消していかないと長期的に良好な人間関係は築けない。
間に合わないことの方が多いが間に合うこともいくつかある。
悔やんでも悔やんでも取り戻せないことが多い人生の中で、諦めを学んでいくのだけれども、間に合うこともあるかもしれない。
Posted by ブクログ
凪良ゆうさん作品に沼ってしまい、あらすじも読まずに手に取る。
内容は、キャラクター、一人ひとりの事情が書かれており、どれも自分とは違うキャラクターだったけど、1人の人で描かれるものはこんなにも多くて違う物語なのだと思った
と、同時に
きっと私もキャラクターにされたら、表と裏がはっきりみえてくるんだろうなあと
まだボヤッとしている自分のキャラクター、自分自身を知ることが大切なのではないかと感じた
あとがきでは、作者の人間味を素直に感じて、
あーやっぱりこの人の作品てすごいなーと
評価4にしたのは、腑に落ちた、というより、自分の課題を見つけてしまったからです
いつか再読した時、自分自身としっかり向き合える力が私に備わっていたらいいな
Posted by ブクログ
弱い人の心に寄り添う系の短編集かと思いきや、急にサスペンスになってちょっとびっくり。印象が二転三転したお話だったけど、総論としてはかなり好き。
清濁併せ呑むという作品のテーマは最後まで変わらずに人間のグレーゾーンが描かれていて、完璧ではない自分を許せるような作品だったので私は好きだった。
登場人物は主人公以外善人とは言い難くて、極端な性格で現実味のないキャラクターも居たから、その当たりが好き嫌いが分かれるかもしれないけど、この"清濁併せ呑む"というテーマにはよく合っていると思う。
愛は怖い
他人から故意に人生を悪い方に仕向けられるって…ほんとうにこわい。
すずらんを挿していた水でって、子供の頃に夾竹桃が毒だと教えられたことを思い出しました。
Posted by ブクログ
和久井一悟
三十三歳。実家は「すみれ荘」もちつ下宿を経営している。管理人代理。幼いころから身体が弱い。虚弱体質で高三の夏以降は入退院を繰り返して就職もできず、すみれ荘の大家代理に落ち着いている。妻を亡くしており、娘は妻の両親の下で育てられ、今年で五歳になる。
芥一二三
和久井が乗る自転車に衝突される。事故で右手の甲にヒビが入り、和久井に仕事を手伝ってもらうためにすみれ荘に入る。二十九歳。小説家。右目の下に涙形のほくろがある。三年前に妻を事故で亡くす。本名は斉藤央二。二十四年前に別れた一悟の実の弟。
玉城美寿々
二十歳ですみれ荘に入居し、六年目を迎える。PMS(月経前症候群)で体調の悩みを抱えている。大学卒業後、子ども用品を扱う会社に勤めている。
上郷青子
三十六歳。すみれ荘の一番の古株住人。フラワーショップの店長。和久井の亡き妻・桜子の姉。
平光隼人
テレビ番組の制作会社に勤める。弁が立ち、押しが強く、人の心をつかむのがうまい。大学時代は映画サークルを主宰していた。
悦実
和久井の母。すみれ荘の大家。夫と離婚したあと、幼かった一悟を連れて実家であるすみれ荘に戻った。
三上
和久井の母の恋人。家庭菜園が趣味。
駅前にビルを持つ地主。
居酒屋の店長
町内会で顔なじみの二代目。
アンディ
桜子
亡くなった一悟の妻。
前野
隼人の大学時代の映画サークル仲間。
一咲
一悟、桜子の娘。
藤田
すみれ荘の隣のお爺ちゃん。
Posted by ブクログ
兄弟の愛を書いているのかな。人は一人で生きていけないのだと感じた。自分の生き方を自らでわかっている人たちがうまく関わりあって生きている画を書いていた。自分の行動を見直すきっかけになったかも。
Posted by ブクログ
和久井一悟は33歳、実家が経営する下宿すみれ荘の管理人をしている。彼が乗る自転車に故意に当たってきた男がいた。その男は芥一二三と名乗った。すみれ荘には、玉城美寿々、上郷青子、平光隼人の3人が下宿しているが、そこへ芥も加わることに。芥は作家だというが、いったい何者か。
表面上は穏やかな日常に見えても、その下では一人一人それぞれの感情が渦巻いていて、どことなく不穏な空気が常に漂っている。何かほんのちょっとしたきっかけで均衡が崩れてしまう危うさを孕んでいる一方、人を思い信じることの強さと喜びも確かにある現実、そのバランスをうまく取りながら、人はみな生きていく。
ちょっとミステリー的な要素もあって、この前読んだ『神さまのビオトープ』よりもずっとおもしろかったし、好きだと思った。
Posted by ブクログ
ほのぼの系の表紙だけど、人の弱いところをこれでもかってくらい緻密に表現してて、読んでてずーとヒリヒリした。
凪良さんって歪んでる人間とノンデリのおじさんを描くのが本当に上手い。
Posted by ブクログ
内容は日常的な出来事で、興奮するものはなかったが、時々ハッとする一文があった。「世界は面倒なことであふれている。けれどあらゆる面倒な仕事や面倒な人間関係 のしがらみこそが、自分を支えていたりもする。それらがなければ しんどい思いをして面倒ごとに立ち向かう理由はどこにあるだろう。 そうして手間をかけるほど、ますますそれらは大事なことになっていく」
「もう何が正しくて何が間違ってるのかわからない まるだったら 当事者がよければそれでいいじゃないか まる全ては 精錬にすることができないのなら 濁ったまま それでも少しでも良い方に進んでいきたい。」
Posted by ブクログ
初めて凪良さんの本を読んだ。誰でも持っているようなちょっとした悪意や偽善や無知がふくらんで現実世界に顕現したら、という感じ。ゆったりした語り口の主人公と、すみれ荘ファミリアという穏やかな調子のタイトルと表紙に誤魔化されているが、起きていることは結構えぐい(笑)みんなこれを読んでちょっと客観視して自分が行き過ぎるのを防いでいるのかな、あるいは常識的に振る舞う自分は偉い、と励まされているのかな、むしろ他人事として面白おかしく読んでるのかな??他の読者がどのような観点で楽しんでいるのか、も併せて気になる本だった。
Posted by ブクログ
寝る前にちょこちょこ読んで、やっと読み終わった本。
まず、ミスズのPMSがキツそうすぎて読み進まなかった。
そして隼人もまあ、業界人って・男の友情って
そんな感じなのかな〜くらいの感想。
しかし、
青子さん、、、え、、、、和久井をちょっとずつ殺しにかかってたなんてすごい試み。気付かなかったわあ( ̄д ̄;)
今までと展開なんだが違くない??
これも愛だなんて、拗らせまくってる、これは面白くなってきた、、?!と思ったけども、
このパートのみが最初で最後のピークって感じだった。
といっても、悪いとわかっていることをしつつ、なぜ祈るのか、私にはよくわからなかったけどねえ。
全体的にあんまり共感できる人がいなくて、ずっと集中力切れてたかも。
芥は、兄に接触して目標は達成したのかい?
Posted by ブクログ
凪良さんの作品はスラスラと読みやすく、登場人物も性格がはっきりしているので、ストレスなく読めます。
普段は普通に過ごしているように見えるすみれ荘こ住人たちですが、胸に秘めていることがそれぞれあって、それがなんなのか気になりながら物語は進んでいきます。
他人が幸せそうに見えたり、楽しそうに生きているように見えても、実際のところはどうなのか本人にしか分からない。ということが大きなテーマとなっています。
Posted by ブクログ
凪良ゆうさんの作品は2作目。
作品の表紙や作品名からは想像ができない、人間の裏?というか、出来れば知られたくない一面や自分では気づいていない一面の感情が描かれていました。
下宿というひとつ屋根の下で長い年月を共にすると、あのように遠慮もしなくなるのでしょうか。
体調が悪いからと他人に八つ当たり。
仕事に不安や焦りがあって、今の自分に納得していないからと暴言ばかり。
読んでいて、もう本当に嫌な気分になるし腹が立った。
片思いの相手、大家が自分から離れて行きそうに感じて毒を盛る。
(どういうこと!?)
大家の母親の恋人は、母親の友達や子供に嫉妬して「いないくなればいい」と思ったのでしょう。それぞれの家に火を点ける。
(もう、本当にやめてほしい。)
ひとつ屋根の下でストーリー納めようとしたからこんな事になったのでしょうか。ちょっと詰めすぎのように感じます。
そんな中、大家と大家の幼い時に別れたきりの弟との再会、繋がりは良かったです。
別れた後の弟には辛いことばかりだったようですが、この後は兄弟、仲が良さそうでちょっぴり嬉しくなりました。
Posted by ブクログ
血は水より濃いと言うけれど、その濃さゆえに、相容れないときは徹底的に弾き合う。
聖母像からはみ出した母親が石を投げられない場所が、どこかにあればいいと思う。
なんとなく好きだと思った文章を2つ記録しておく。
みんな、色んな仮面を盾にして相容れない正義と闘っているんだろうなって思った。その中で取り繕わない自分を他人にさらけ出せる所がひとつでもあると、もう少し頑張ってみようって思えるのかな。