あらすじ
少女時代の万浬は教育実習生の詩楠子に“実験”を行い、殺人犯と接触していた。彼女は心に痛みを持たぬことで周囲に波紋を広げていたのだった。万浬に仕える使徒を志願する森悟の弟、英慈。曾根雅雄の身体を食い尽くす病。野宮万浬と貴井森悟の関係に大きな変化が訪れ、物語は衝撃の結末を迎える。『家族狩り』『永遠の仔』と並ぶ、天童荒太のサスペンス長篇。全面改訂による文庫完全版。
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Posted by ブクログ
むちゃくちゃエロい小説だった。どM心に刺さりまくりw ノンケ臭がいいっぱいで、亜黎も全然タイプじゃないんだけど、シチュエーションに興奮しちゃいましたw
。。。って、そんなことはどうでもいいですがw 「痛み」について、さまざまな角度から分析されていて興味深かったなあ。無痛症患者の体験から、生物として痛みがどのように防衛機能となっているのか。整形外科通いの高齢者の肉体的な「痛み」、鬱やPTSDのような精神的な「痛み」、失恋の「痛み」など考えさせられる。
肉体で感じるのではなく脳で痛みを感じているのだと思える治療法など、面白かったです。もう一度読んだらもっと気がつく点も出てくるんだろうなあ。
Posted by ブクログ
上巻では、これまでの作風からかなりエンタメ系に偏ったとの印象だったが、下巻では本領発揮、内面の深いところまで追求した展開となった。戦争や世紀末は大仰ながら、心身共に痛みに関して示唆を与えてくれることに間違いない。2022.6.11
Posted by ブクログ
初めて読む作者。短編小説のようにストーリーの積み重ねから構成されている。唐突に話が変わっていくが、最後には繋がる。構成が上手いと思う。下巻まで読み進めるか迷ったが、後から思えばこの構成の所以かもと思った。
主人公は医学的には先天的な病なのだろう。病を克服するためか、或いはアイデンティティのためか医者になり、無痛症の患者を探し、探究していく。精神ではなく肉体的な痛みを感じない人との共通性、親和性を。主人公の万浬の探究に答えは見つかるのか、見つからないような気がする。万浬は生まれながら心の痛みを持たない。理性的であり、冷静である一方で冷淡な人。人間は痛みを感じれるからこそ生きていけるし、人への愛(自己愛も含め)が生まれる。一方で、戦争や争い、殺人、暴力は精神的な痛みがあるから起こると万浬は語る。
痛みを欲望に置き換えると納得感がある。人間が生まれながらに持った欲望が人を動かす。欲望=痛みがなくなった人は進化した人類であると万浬は考えているが、欲望と言葉を変えてしまうとそうなのかもしれないと思った。しかし人から欲望がなくなるとは到底思えない。