あらすじ
野宮万浬、ペインクリニックで患者の痛みと日々向き合う優秀な医師。彼女には、秘密があった。心に一切痛みを感じないのだ。一方、数々の国際プロジェクトを手掛けてきた貴井森悟は、爆弾テロに遭って痛覚と情熱を失い、無為に生きていた。謎めいた老人、曾根雅雄の導きにより、ふたりは運命の邂逅を果たす──。人間の根源を抉るサスペンスにして、最もスリリングな医学エンターテインメント。
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Posted by ブクログ
職場の先輩と恋愛の話をしていたとき「私さ、自分よりレベルが下の相手じゃないと、自分らしく振る舞えないんだよね」と言う上から目線な発言に失笑したのだが、これは恋愛におけるあるあるなのかもしれない。
レベルが高い素敵な相手には”好かれたい・嫌われたくない”という気持ちから、相手に気に入られようとするあまり、自分らしく振る舞えない。
でも、レベルが低いどーでもいい人にはどう思われたって構わないから、自由奔放に自分らしく振る舞えるの。
って意味ですよね。
「ペインレス」では、”自分よりレベルが下の相手じゃないと、自分らしく振る舞えない”なんて上から目線を遥かに凌駕するサイコパス女性が、思うがままに周囲を翻弄していく。
この女性がなぜ自由奔放に振る舞えるかといえば、生まれつき心に痛みを感じないから。
愛、嫉妬、執着、罪悪感、といった私たちが縛られている痛みを伴う感情を感じないから、誰に対しても優位に立てるのである。
この小説のテーマは”人間は痛みに支配されている”ゆえに、痛みを感じることがない人間は優位に立つことができる、そして痛みから生まれる無駄な争いを必要とない人類のニュータイプなのよ。というものだ。
心に痛みを感じないサイコパスな女性が思うがままに周囲を翻弄していく姿は爽快ではあるけれども、この筋書きは容姿が魅力的でなければ成り立たないと思うのだ。(小説内でもエキゾチックな美女として描かれている)
”人間は美に支配されている”
ルッキズムが叫ばれている昨今、美の基準は人それぞれだけども、美しいものに惹かれる本能を越えられる人はいるのだろうか。
美しいものを目の前にして、理性的に意識することができるだろうか。