あらすじ
日本の人事部主催 HRアワード2021書籍部門優秀賞受賞!
『チームが機能するとはどういうことか』の著者であり、2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている、エイミー・C・エドモンドソン教授最新刊!
篠田真貴子氏(エール株式会社取締役)推薦!
「心理的安全性ってそういうことだったのか!
心理的安全性の解釈が人によって違うことが気になっていた。しかし、本家本元による本書を読んで、すっきりと整理ができた。心理的安全性とは個人の資質ではなく集団の規範、ぬるい環境というよりもむしろ成果志向の環境なのだ。失敗と成功の事例を通して、このコンセプトへの理解が深まり、実践への示唆が得られるだろう。「恐れ」から解き放たれれば、私たちはもっと大胆に行動できる。」
Googleの研究で注目を集める心理的安全性。
このコンセプトの生みの親であるハーバード大教授が、 ピクサー、フォルクスワーゲン、福島原発など様々な事例を分析し、 対人関係の不安がいかに組織を蝕むか、 そして、それを乗り越えた組織のあり方を描く。
目次
はじめに
第1部 心理的安全性のパワー
第1章 土台
第2章 研究の軌跡
第2部 職場の心理的安全性
第3章 回避できる失敗
第4章 危険な沈黙
第5章 フィアレスな職場
第6章 無事に
第3部 フィアレスな組織をつくる
第7章 実現させる
第8章 次に何が起きるのか
解説 村瀬俊朗
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Posted by ブクログ
心理的安全性とはなにかについてかなり理解できたと思います。
心理学安全性を経験する最良の道はすでにそれを手に入れているかのように行動することかもしれないと述べられていたので、以下のようなフレーズで周りに働きかけてみようと思いました。
- わかりません。
- 手助けが必要です。
- 間違ってしまいました。
- 申し訳ありません。
- どんな手助けができますか。
- どんな問題にぶつかっているのですか。
- どんなことが気がかりなんですか。
以下簡単な要約です。
心理的安全性が高いとは、対人関係のリスクを取っても制裁を受ける結果にならないと信じられる環境のことです。ここで言う対人関係のリスクとは質問したり支援を求めたりすることやミスを認めることなどです。
人は元々事なかれ主義的な側面があり、沈黙の文化に陥りがちです。悪印象を持たれることへの不安や仕事上の人間関係が悪くなることへの不安から口を閉ざしてしまうのです。
例えば職場で「確実なデータがないなら何も言ってはいけない」「上司の上司がいる場では意見を言ってはいけない」のような暗黙のルールが存在しているなら(これらは意識していない可能性もあります)、沈黙の文化に侵されている可能性が高く注意が必要です。
もし不安により発言できなければ、意見や気づきを述べることができず知識の共有が行われません。もし失敗が許されなければ、皆かつて成功した方法にいつまでもしがみつくことになるでしょう。
心理的安全性の重要性はプロジェクトアリストテレスなどでも広く知られている事実です。
心理的安全性を作るには大きく分類して3つのステップがあります。土台を作る、参加を求める、生産的に対応する、です。
まずはどのような発言であっても歓迎されることや、失敗は許容されるが失敗から何かを学ぶことなど、意識を改革して土台を作る必要があります。
そしてチームの参加を求める必要があります。謙虚な姿勢で「わからない」「助けが必要だ」ということをアピールし、心理的安全のエリアを拡大していきます。また他人に心から関心を持つことで参加を促すことができますが、人はナイーブリアリズムにより関心を持てなくなりがちなので気をつけるべきです。
周りから発言や失敗が引き出せるようになったら、生産的な対応をします。まず発言した勇気に対して感謝を表し、失敗は讃えられるべき存在だと伝えることが大事です。ただし失敗から何も学ばないのであれば、適切なフィードバックが必要です。
心理的安全性は一度できたら終わり、というようなものではありません。心理的安全性があれば成功できる、というようなものでもありません。そこからがようやくスタートです。
心理的安全な組織である上で、学び続け、適応し続け、変わり続ける必要があるのです。
Posted by ブクログ
著者のエドモンドソンは、昨今よく耳にする「心理的安全性」の震源地と表現しても良いだろうか。心理的安全性の概念はニュースサイト等でもよく紹介されており、多くの企業でも紹介されている事であろうが、実際に実践できている企業は著者の指摘する通りほとんどないだろう(特に典型的な日本企業やトップダウン型の中小企業で実践するのは相当に難易度が高いように思われる)。本著作を読み、重要と思えるポイントについて記録しておく。
〇心理的安全性の前提条件
組織のリーダーが「心理的安全性は大事だ。思うところがあれば何でも言ってくれ」とメッセージを発するだけで実現すれば苦労はしない。自分なりに心理的安全性をかみ砕いて表現すると「組織をより良い形にしたいと思っていたり、目標を達成したいと思っているメンバーが意見や考えを言う事に対して心理的な障害が一切なく、組織風土に対する信頼が担保されている状態」と言える。組織がこの状態になるには、組織風土レベルで心理的安全性がインストールされる事が前提条件となる。
〇達成するためのプロセス
とはいえ、心理的安全性を達成するためには、各組織のリーダー(ミドルマネジメント)が中心となって組織風土を変えていくしかないだろう。
どうすれば心理的安全性を備えた組織を実現できるかのプロセス(リーダーにとってのツールキット)は7章で以下のようにまとめられていた。
Ⅰ.土台を作る(期待と意味の共有)
・仕事をフレーミングする
→失敗、相互依存性、不確実性を当たり前として率直な発言の必要性を明確にする
・目的を際立たせる
→何故重要か、誰にとって重要かを明確に伝える
Ⅱ.参加を求める
・状況的謙虚さ
→完璧ではないと認める
・発言を引き出す問い
→探究的な質問を行うと共に、集中して「聴く」姿勢を見せる
・システムと仕組み
→意見を募るためのプラットフォームやディスカッションのガイドラインを作る
Ⅲ.生産的に対応する
・感謝を表す
→耳を傾け、意見に対して感謝をする
・失敗を恥ずかしいものではないとする
→目先の失敗による損失ではなく、未来に目を向ける。次のステップに向けて話し合い熟慮しブレーンストーミングをする。
・明確な違反について処罰する
上記のうち、特に重要と感じたのは「失敗」に対するリアクションの部分だった。日本では教育システム自体が「失敗を回避して行動する主体」を育てるプログラムになっている事から、社会においても失敗を許容しない文化が根強いと考えられる(「すずかんゼミ」で有名な慶應技術大学の鈴木寛先生は、マークシート方式のセンター試験にその傾向が如実に現れていると指摘していた)。失敗を前向きに捉え、財産として運用できている組織は少ないのではないだろうか。特にR&Dの世界では、失敗を次のステップにどのように活用するかが成果に直結することから特段重要と言える。
〇心理的安全性の脆弱性
築き上げるのは途方もなく困難だが、崩すのは一瞬である。誰かの発した意見に感情的に激昂して叩き潰せば、それだけで脆くも崩壊する。感情をぶつけられた方が率直な意見を再度言う事は二度とないだろう。なんとなくだが、「自我」と「理性」を分離できておらず、混同してしまっているがために、仕事において感情が表出するのだと思われる。仕事は自分の「理性」がしているのだ、という感覚を持てば、仕事において「自我」が表出することはないのではないだろうか。
〇雑感
組織論においては、1960年代にフィドラーにより提唱されたコンティンジェンシー理論(普遍的に正解となるリーダー像は存在せず、状況により求められるリーダー像は変わる)が有名だ。確かに、ひと昔前の時代は、目的が明確であり「こうすれば正解する」という共通認識が組織全体に行き渡り、有無を言わさないトップダウン型のマネジメントがフィットしたのかもしれない。フォルクスワーゲンの「ディーゼルショック」の失敗が本著作でも語られていたが、フォルクスワーゲンはトップダウンのひと昔前のマネジメントで劇的な成功を収めた事実はあるものの、マネジメントの負の側面が表出してディーゼルショックに繋がったと分析していた。コンティンジェンシー理論で解釈すると、機械的組織(官僚型組織)から有機的組織(協調型組織)への移行が環境の変化に対してうまくいかなかったと解釈できるが、心理的安全性に関する本著作を読むと、機械的組織における過去の成功はたまたまであって「幻想」に過ぎなかったと解釈できる。本著作はコンティンジェンシー理論を超越して、普遍的なリーダー像を提案しているのかもしれないと感じた。昨今のVUCAの時代においては特にその重要性が高まっているのだろう。