やや長いし、How-to本として読むには冗長さは否めないが、
「なぜ(どういう組織で←VUCAの場面で)心理的安全性が重要なのか」「どうすれば心理的安全性が向上するのか」といったことに、様々な企業等の豊富な事例やスタディ結果も踏まえて示した、読み応えある一冊。
組織経営を考えるにあたり「心理的安全性」の概念を避けて通ることはこんにちではありえなかろうが、
そのことに信念をもち、また知恵をもつことができる。
冒頭にでてくる「病院のミスの数」のエピソードは印象的だし、
Googleのスタディや、多くの企業の失敗例、説得力を増す。
また心理的安全性の確保だけでは不十分であり、学習を高めること、高い業績基準を設定すること、もセットで必要という指摘にはうならされた(単に「ぬるい・ゆるい」雰囲気をつくるのではパフォーマンスがあがらないのだ)。
部門横断的なチームをつくり発言してもらう機会をつくること、ミスの報告に「よく気づいた」と発言すること、(場合によっては、諸刃だが)無知を認め示すこと、といったことはわりとできている(自分がとっているスタンス・行動も近い)と、自己肯定にもなったりするが、
さらにこれを意識し続けて進めていかないと、とも感じる。
それに、g2gのようなのは良いかもな・・・
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【導入】
・優秀な人材がいてお、彼らが目出すことも、間違うことも、上司の気分を害することもしたがらない、それがゆえに必要とされる重要な局面で必ずしもいかされない。p.12
【「心理的安全性」の気づき】
・有能なチームには率直に話す風土があって、気軽にミスを報告したり話し合ったりできるーーミスの数が多いのでなく、報告する数がお忙しいところ、のだと気づいた。
この風土の違いに「心理的安全性」と名付けた。p.34
・ロゾフスキ率いるGoogleのチームは学術論文の中で心理的安全性という考えに出会った。心理的安全性の重要性は群を抜いていると。明確な目標、頼れる仲間、個人的に意味のある仕事、その仕事に影響があるという信念、といった四つの要因の土台になっていると。p.70
・Googleの親会社アルファベットの社内部門グーグルXでは、安心して失敗してもらうために全力。駄目だと言う証拠がそろったら、チームはさっさとプロジェクトを注視する。同僚からは拍手してもらえる。マネージャー特に私からはハグとハイタッチ。昇進もできる。ボーナスがでる。p.155
・失敗を称賛する、ズレをみつけたときに「よくぞ見つけた!」と褒め、ごく小さい間違いに気づく人を観察眼の鋭い人として評価する。p.200
・失敗パーティ(失敗を知ると文字通り祝うケース)p.221
【事例】
・フォルクスワーゲン、(不正行為があったあと、従業員の代表)「将来的に、私たちには問題を隠さず率直に上司に話せる環境が必要。最良の道筋について上司と議論することが可能かつ許容される文化が必要」p.89
・失敗した4つの組織に欠けていたのは「心理的安全性が確実に職場に広がり、人々が社内の有力者に、本当のことを話せるようにするリーダーシップ」。p.101
・緊急時の手順が整っていたとしても、確実に仕様でいるとは限らない。もし心理的安全性がなかったら、えてして対人関係のリスクをとれず適切な対応ができなくなってしまう。心理的安全性が、緊急手順を効果的に使うための全体条件。p.171
【恐怖支配はNG、特にVUCAの時代、協力と学習を要する場合には。】
不安にはやる気を引き出す力があると多くのマネージャー相変わらず信じていることが問題。これは、仕事が単純で、作業者が問題にぶるかることも改善を提案することもまずない場合なら有効かもしれないが、学習や協力をしなければ成功できない仕事なら、不安がやる気を引き出す要因になることはない。p.38
・業績基準は高いが心理的安全性が低いとき、従業員は考えを言うことにびくびくし、仕事の質と職場の安全性の両方に害が出てしまう。この「不安ゾーン」は、不安全性(volatility)、不確実性(uncertainly)、複雑さ(complexity)、曖昧さ(ambiguity):VUCAに直面する企業にとって、重大なリスク要因。
業績基準も心理的安全性も高い場合が「学習ゾーン・ハイパフォーマンスゾーン」、人々は協力し、互いから学び、複雑で革新的な仕事をやり遂げることができ、高パフォーマンスをあげられる。p.45
★【心理的安全性だけでは十分ではない】
・リーダーにはどうしてもしなければならない仕事が二つある。①心理的安全性をつくって学習を促進し、回避可能な失敗を避けること。②高い基準を設定して人々の意欲を促し、その基準に到達できるようにすること。高い基準の設定はマネージャーのきわめて重要な仕事。p.48
★【リーダーシップのためのツールキット、仕組み】
・土台をつくる、参加を求める、生産的に対応する。p.192
・「土台をつくる」:失敗を恥ずかしいものではないとする。
・「参加を求める」:患者の安全運営委員会という部門横断的チーム、メンバーはなぜ自分の視点が必要なのかについて一人ひとり説明を受けた。フォーカスグループ含め、シンプルな仕組みによって意見を述べることを明確に求められると、考えを言わず黙ったままでいるほうが落ち着かない気分になる。p.195
・対人関係の不安を減らす仕組み、従業員同士で学び合うのも効果的、グーグルの「g2g(Googler-to-Googler)」ネットワーク。6000人を超える社員が進んで時間を提供し同僚が学ぶのを手伝う。 一対一でメンタリングし、心理的安全性についてチームをコーチングし、専門スキルを教える。数え切れないほど多くの従業員のスキル向上に役立っている。心理的に安全な文化の構築にも効果。誰もが学ぶとともに教えている。p.215
・リーダーシップとは本質的に、みんなの取組を総合し、一人では不可能なことを成し遂げること。持てる才能と技術を一人ひとりが活かしきるのを手助けすること。沈黙ではなく率直な発言を、不安ではなく積極的な参加を求めることが、今日のリーダーにとって最重要の責任である。p.231
【日本社会でこそ、心理的安全性が保たれにくい】
・福島事故のあと国会事故調の委員長、黒川清、報告書の英語版冒頭で「どんなに詳しく書いても、この報告書では、とりわけ世界の人々に対して、十分に伝えきれないことがある。それは、この大惨事の背後にある、過失を促したマインドセット。これが「日本であればこそ起きた」大惨事であったことを重く受け止め、認めなければならない。根本原因は、日本文化に深く染みついた慣習ーーすなわち盲目的服従、権威に異を唱えたがらないこと、「計画を何が何でも実行しようとする姿勢」、集団主義、閉鎖性ーーのなかにあるのだ。p.125
・調査によれば、権力格差(パワーディスタンス)が大きい国は他国に比べて心理的安全性が低い。たとえば日本では、率直な発言やミスの報告を促そうとしても徒労に終わるという。トヨタ生産方式という例外もあるが。p.257
【「無知」であることを心得るパワー、弱さを認める】
・このパワーが、質問し、助言を求め、難題に対する最良の答えを見つけて来た。p.147
・福島第二の増田所長、正直になり自分の弱さを認め、コミュニケーションを図り、情報を共有した。加えて、重要アイテムとしてホワイトボードを使った。p.181
・自分の誤りや欠点を認めること。ゼロックスを会長兼CEOとして再生したアン・マルケイヒー、「自分は「わからないの達人」として社内に知られている」(無知の人になる、を彷彿)p.209
【誤解や反対意見への反論ついて】
・心理的安全性は「感じよく振る舞う」ことではない。むしろ、さまざまな観点から学ぶために、建設的な対立を厭わず率直に発言すること。p.41
・「気楽に過ごす、目標達成基準を下げる」ことではない。p.43