【感想・ネタバレ】架空の犬と嘘をつく猫のレビュー

あらすじ

空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、その全てに反発する姉、そして思い付きで動く適当な祖父と比較的まともな祖母。そんな家の長男として生まれた山吹は、幼い頃から皆に合わせて成長してきた。だけど大人になり彼らの《嘘》がほどかれたとき、本当の家族の姿が見えてきて――?
これは破綻した嘘をつき続けた家族の、とある素敵な物語!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

1988年から5年ごとに章になっている。
始まりは8歳だった羽猫山吹は、終章では38歳になっている。
よく「生きづらさ」というけれど、「生きやすい」人なんているんだろうか。
みんな心の中に犬を飼っている。
人によってその犬はアイドルだったり、現実とは違う架空の親だったり、別の世界の自分だったりするだろうけど、その犬の頭を撫でて、
少しだけ心が和らいで、今夜をやり過ごすことが出来るんじゃないだろうか。。。

弟の青磁は幼い頃に水難事故で亡くなった。
母は青磁の死を認めず、生きてるように振る舞う。青磁がいないから探しに行くと言って出ていったりする。
山吹は青磁のフリをして手紙を書く。「お母さんお元気ですか。こちらは楽しくやっています」叔父に預けられてることにしたのだ。
親でも配偶者でも子供でも、一緒に育ったきょうだいでも、相手が何を思い、何を抱えているかなんてわからない。わかりようがない。
わかった気になって、勝手に解釈して傷つき傷つける。自分の頭の中でしか、人は生きていない。

父は喫茶アーユスの鮎子という愛人がいる。
ある日山吹は、アーユスの隣のいとう塾の庭で遠山かな子に出会った。
高熱が出たほどの幼い恋だった。
遠い。山。彼方。子ども。そう呼ばないと、
遠山かな子と呼ぶことさえ出来ない恋だった。そしていとう塾に通うようになる。

大人になった山吹は、バイト仲間だった頼と
児童養護施設のクリスマスの絵本の読み聞かせに行く。こういう活動をしている人は子供好きなんだろうと思われがちだが、コタニは特別好きではないと言う。
子供が好きだから預かりたい、育てたいというのは傲慢だと言う。ひとりひとり違う人間でお人形ではない。子供が大好きなのでというボランティアは受け入れていないという。
頼は、絵本を読むのが好きなだけで相手は大人でもいいんですけど、と言ったそうだ。
子供たちの様子を見ていた山吹は、なんだ普通の子供だな、と思って、そう思った自分に驚く。
こういうところにいる子供は普通じゃないと
思っていたのだと。かわいそうな子供という枠にはめていたのだと。
それは頼も同じで、せっかく読みに来てやってるのに、と思ってしまっていた。
来てやってる、読んでやってる、かわいそうな子たちに、って。。。。
そういうことに気づくことがいいんだと私は思った。
施設にいた白水亜美は、高校生だった紅が白水隆に頼まれてプレゼントを届けた子だった。

母の雪乃は青磁の死を認識していた。
手紙は山吹が書いてると知っていた。
死んだ人間がまだ生きていると思い込むのは異常か。異常と正常の境目はなにか。大多数の人が当てはまるのが正常ならば、皆がこっち側にきたら正常か。
山吹が青磁のフリをして話しを合わせるのは正常か。正常な山吹が異常な母に施す親切か。同情か。山吹に感謝しないといけないのか。
その嘘つきなところを優しさと呼んで愛してくれる人のところに生まれて、私の知らないところで幸せになってくれたらよかったのに。
この、母の手紙は、胸にせまるものがあった。
ああ、母にとって青磁は架空の犬だ。切ない。

頼のお父さんの言葉は、良かった。
幸せは各自が追求していくもので配偶者にお任せするものではない。絶対に幸せにしますなんて自信満々に言う人は不安だと。
頼ったり頼られたりしながら、よりよい人生を獲得してほしいと。

祖母の死をきっかけに、家族が集まる。
山吹が紅に連絡したのは、葬式に来てほしいではなく、知らせたいから知らせる、ってことだった。自分の気持ちとして。あとは紅が決めればいい。これ、もし私でもそうしてほしいと思った。
わからなくても、愛せなくても、その存在を認めることはできる。
愛せなくてもいいってことは、救いでもある。
世の中の何の役にも立っていない、って人のほうが、むしろたくさんいる。
だからといって、いなくてもいいわけではない。
だいたい、役に立つってなんなのよね。
誰の?悪人の?国の?役ってなに?
自分ならこうする、そんな選択はしない、と
言い切るのは気分がいい。自分はその渦中にいないし、いくらでも冷静な判断ができる。
安全な場所から他人の選択に口出しするのは恥ずべきことだ。

そして、山吹と頼は本物の犬を飼う。
その犬が満足するレベルの世話ができるか、
その犬を幸せにできるか、2人で話し合う。
そうだね、この場合、犬は自力で幸せを獲得できない。人間が一緒に幸せになるんだ。

みんなが、それぞれの場所で、それぞれの心の内で、なんとか生きている。
私は、登場人物の全員が、ただ、ただ、
愛しいと思った。


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2026年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人は自分のための人生を生きている。子どもの真心を真摯に受け止め内省する親は、きれいだが無意味である。生きていないから。何らかの理由を持ってつく嘘は、受け入れる必要がなく、ただそこにあることを認めてあげれるだけでいい。問題が筋道通りに綺麗に解決されることなく、ぼんやりと受け入れられる形に変化していき、過去のものとなり、成長のもとになったと少しでも思えるようになる。ごっついい作品でした。

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2026年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

‪装丁買いした本、内容はかなり重いバラバラな家族のお話‬
‪4歳で亡くなった弟の死を直視せずに生存する空想に住んでる母に向けて弟のふりをして手紙を出し続けた主人公の、母目線の心情が特に印象に残った‬
‪最後に主人公の子供の頃に自分を慰める為についていた囁かな嘘が本当になって良かった‬

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2026年08月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

夕暮れの盆地。どこにも行けないと思っていた拗れた家族の物語。
現実を見つめるおばあちゃんと紅、目を逸らし続ける母と男たち。
不覚にも涙しました。

それにしてもこの表紙と中身の差!表紙に惹かれて手に取ったので裏切られた感あり。
でも読んでよかったです。

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2026年06月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごく良く練り上げられた物語で、最後には希望も見えるのに、今の私にはあまり刺さらなかった。
想像よりも辛く重い内容だった。
自分自身の家族が、山吹の家族とまではいかなくとも多少訳ありなので、素直に受け入れられなかったのかもしれない。
また時間をあけて再読したいと思う。

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2026年03月09日

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