【感想・ネタバレ】架空の犬と嘘をつく猫のレビュー

あらすじ

空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、その全てに反発する姉、そして思い付きで動く適当な祖父と比較的まともな祖母。そんな家の長男として生まれた山吹は、幼い頃から皆に合わせて成長してきた。だけど大人になり彼らの《嘘》がほどかれたとき、本当の家族の姿が見えてきて――?
これは破綻した嘘をつき続けた家族の、とある素敵な物語!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

地主のボンボンで持山に遊園地を作る、みたいな夢(実現のための努力はしない)を追う祖父。占いと霊感商法まがいでインチキ商品を売りつける祖母(この人が一番マトモ)。年上スナックのママと浮気する父。一番かわいい三人目の子が死んだことを認めない母。こんな連中に反発しまくる姉。

こんなとんでもなくろくでもない全員のウソや立場に寄り添おうとする長男山吹が主人公。ある時は祖父に頼まれ遊園地のマスコットイラストを描き、ある時はスナックに入っていく父を見てなかったことにし、ある時は祖母に自分のためにだけ生きろと説教され、ある時は弟のフリをして手紙を書く。そして姉に嫌われる。

嘘をつかざるを得ない事情や背景があるのかもしれない、優しい嘘もあるのだろう。でも嘘はちょっと調合を誤れば自分と周囲を蝕む毒と化しやすい。

母親が山吹の書いた手紙を読んで、憎しみの返事を書くシーンや、最後半の山吹の彼女とあこがれの女子の対決シーンはその毒がすさまじく感じられる大きな山場。

100%本当のことだけで生きることは無理にしても(そもそも小説も映画も詩も現実ではないというウソ)、せめて大事なところや踏ん張りどころではウソをつかずにウソでごまかさずに向き合おう。

後半、山吹が伴侶とした相手は、自分の気持であっても山吹の態度であってもきちんと表現することを求めた。きっとその道も辛いことはあるんだろうけど、ウソで塗り固めるよりは茨のとげが少ない生き方であろうと思うよ。

しかし、この手の寺地はるなに解説が彩瀬まるって、とんでもなく似合いのコンビ!

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2025年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

物語は主人公、山吹の幼少期から中年期までの時系列になっている。弟は幼少期に事故死し、そこからは母が心の病気になり、父は町内で浮気、自分の夢を語る祖父と、家族から離れたい姉、育ててくれた祖母。

絵が得意で、空想が好きで、何をしていてもすぐに空想してしまう山吹。母をなだめるために、弟になりすまして手紙を書き続ける。歳をとり、勉強はできず塾に通い出す。そこで出会った1歳上のかな子に初恋をするが、想いを告げないまま、専門学校に進学を機に一人暮らしを始め、後の妻、頼と出会う。結婚、不妊、かな子や姉との再会、失業などあるが、最後はハッピーエンド。

幼少期の頃に幸せを感じられなかった紅や山吹を不憫に思っていたおばあちゃんと同じ気持ちになった。そういう境遇にあった2人がパートナーと出会って幸せになれて良かった。

頼っていい名前やなあって思った。「多くの人に頼られ、多くの人の助けとなれるように。」「じょうずに他人に頼れる子になってほしい」

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2025年01月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

空想人と、嘘を売る人と、軽い男と、現実逃避する女と、嘘つきが大嫌いな女と、嘘に寄り添う男。

そんな家族構成で成り立つ、羽猫家。

「山吹の嘘は、いつも、誰かをなぐさめたり、助けたりするために生み出される。」

「社会にとってなんの役にも立ってなくても、この世に存在しなくていい、という理由にはならない。」

「自分以外の人間のために生きたらいかん。」
「誰かを助けるために、守るために、って言うたら、聞こえはよかよ。でも、人生に失敗した時、行き詰まった時、あんたは絶対、それをその誰かのせいにする。その誰かを憎むようになる。そんなのは、よくない」

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2025年03月17日

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