あらすじ
2018年本屋大賞2位!
著者渾身の慟哭のミステリー、ついに文庫化!
昭和五十五年、春。棋士への夢を断った上条桂介だったが、駒打つ音に誘われて将棋道場に足を踏み入れる。そこで出会ったのは、自身の運命を大きく狂わせる伝説の真剣師・東明重慶だった――。死体遺棄事件の捜査線上に浮かび上がる、桂介と東明の壮絶すぎる歩み。誰が、誰を、なぜ殺したのか。物語は衝撃の結末を迎える! 〈解説〉羽生善治
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Posted by ブクログ
ミステリーというよりは、容疑者がなぜその犯行に及んだのか、経緯を心情と共に描いた作品。
心理描写が非常に丁寧である一方、当人にしかわからないメタファー的な要素もあり、どちらの観点からも楽しめる。
上巻の唐沢の温かい描写と、下巻の東明の真剣師としての生き様が対比的で、真剣師に深く魅入られていく上条のサガのようなものを感じた。上条が唐沢のことをあまり思い出す描写がなかったのも印象的。
上条桂介にとって「向日葵」とはなんだったのか。23章の内容と、クライマックスの一文が示唆に富んだものであり、ある種の諦観とともに締め括られる。
Posted by ブクログ
下巻
東大に入り、アルバイトをしながら勉強に励む桂介は、部活に入る余裕もなかったが、あるとき運命に導かれるように入った将棋道場で東明重慶と出逢う。
この2人の出会いがまた、桂介の運命を大きく変えていく。
東大を出て、外資系企業に就職し、退職してソフトウェア会社を立ち上げた桂介。年商30億を超え、地位と名声と金を手に入れた桂介だったが、その幸せは長くは続かない。
有名になり雑誌に載った息子を訪ねて、金をせびりに来る父親。
かたや真剣師と呼ばれ、旅打ちに出る東明についていく桂介。
私は将棋には詳しくないが、(駒の進め方くらいしか)将棋の勝負場面のなんとも言えない緊張感は凄いと思った。
生命を賭けるような東明の将棋を、どうしても見たい桂介。
そして恩人唐沢からもらった大事な名駒を、東明に盗まれてしまう
神様がいるなら、どうしてこんな酷い人生を、と呪いたくなるような場面だった。
東明を恨み、憎みながら、彼の打つ将棋は桂介を魅了し離さない。その心の葛藤。
そして亡母を彷彿とさせる向日葵が、どんどん意味合いを変えていく後半…
驚愕の出生の秘密
父親への恨み、東明への恨み、将棋への渇望… そして死への誘惑
上巻冒頭の竜昇戦七番勝負の第七戦
勝負の最後に指した手は……
絶句して、放心して、しばらく言葉が出なかった…
こんな結果になるなんて…
時は遡り、東明との最後の勝負をする桂介
「約束は果たした」という東明。
約束とは、父庸一を殺してほしいというものだった。その約束を果たした、というのだ。
最後に思い出の地で真剣勝負を申し出る東明。
ジュウケイ最期の真剣勝負に
「俺が勝ったら俺を殺して埋めてくれ」と頼む東明
勝負の最後は
なんと竜昇戦の最後と同じ。
負けを認めた東明は、自ら生命を断つ
実はもう病に侵され長くはなかった。
その遺体を埋めた桂介。
その胸に、名駒を抱かせた桂介は、何を思っていたのだろうか…
死にたくても死ねない
死を恐れるのに、死の魅力からも逃げられない
そんな東明と桂介の共通点
数々の名勝負を見せてくれた東明への香典だったのだろうか…
この物語に出てくる向日葵は、
あまりにも生々しい生と死を見せつける。
明るい花、太陽の化身のようなきらきらした輝きを持つ花ではなく
人間の心の奥底に潜む暗さやえげつなさ、欲望や葛藤、悩み嫉みなどを全身に纏わせる生命の叫びの花のような…
そしてラストの場面
恐らくこうなるのだろうと
予想はできた。
東明は
もし彼が見たら
この最後をどう思っただろうか
物語終盤は涙が流れて読むのが苦しかった。読み終えたとき、放心状態で、言葉を発することができなかった。 合掌
Posted by ブクログ
将棋の世界は分からないけれど
それでも命を削った真剣勝負の鬼気迫る感じが
読んでいてもヒリヒリと伝わってくるようでした。
父、庸一から語られる衝撃の事実
狂った血が桂介を蝕んでいく。
あぁ桂介には幸せになって欲しかったなぁ。
ゴッホの「向日葵」を見る目が変わりそうです。
Posted by ブクログ
映画公開前にと思って読みました。将棋は全くわからないので、正直、将棋を指しているところの駒の進み方や指し手の描写は何が何やらで、飛ばし読みでしたが、将棋好きの方はとても楽しめると思います。私はストーリーを楽しませてもらいました。桂介の人生が少しでも幸せを感じるものになってくれたらいいなと思いながら読みましたが、それも叶わず、悲しい結末で終わりました。映画も観に行こうと思います。
Posted by ブクログ
満を持して渡辺謙ご登場。
真剣師なるものを初めて知った。お金をかけて命もかけてるねぇ。
将棋の棋譜が文字で何度も出てくるけど、将棋は小学生の時兄に付き合ってやったくらいで詳しくないので読み飛ばし。でもちゃんと話は通じるのでご安心。
ミステリーともちょっと違う、なぜ彼は容疑者になってしまったのか、の軌跡をたどるお話。
なかなか壮絶な人生ですね。
しかしラストが!
そこで終わる?!
え?そんな終わり方?!
いにしえの火曜サスペンス劇場か。
さぁ眠りなさい〜
Posted by ブクログ
上下巻2冊。
『盤上の向日葵』は、2019年にBSでドラマ化され、今年の10月31日より、坂口健太郎、渡辺謙の主演で映画化されるのも楽しみだ。
物語は簡単に言えば、将棋の駒を抱いたままの白骨が見つかり、その殺人事件を刑事が解決していくストーリーではあるが、そこには平行して謎のプロ棋士・上条桂介の半生、『棋士』になるための苦労や、さまざまな将棋界の掟などが描かれている。
もちろん将棋界を知らなくても十分面白いが、知っている人はより一層面白いのかな。
長編ゆえ、主人公のプロ棋士・上条桂介(映画では坂口健太郎)の生い立ちから始まり、酒浸りの父親からの暴力に耐えながら新聞配達をし、生計を立て、将棋と出会い、のめり込んでいく章から始まる。また殺人事件を追う刑事のパートの章と交互に物語は進むが、最後の最後にようやく接点があるというのも、ちょっと意外だったな。
将棋をテーマに書かれた小説と言えば、難病に苦しみながらもひたすら名人を目指して人生の全てを将棋に捧げた『聖の青春』が面白かった。(これはノンフィクションだけど)
将棋の駒の動かし方もあやふやな僕には到底想像もつかないが、羽生善治さんが解説まで務めているところからも、棋士の方にもある意味では有名な小説なのかな。
Posted by ブクログ
将棋の駒と桂介、東明の今までの人生、全てが詰まっていてとても濃い内容だったと思いました。
個人的には、桂介の父親の桂介に対する態度とか何となく納得感があったり、向日葵がどのように関わってくるのか疑問だったりが解消されてすっきりしました。まさに向日葵の呪いだなと思いつつ、最後は東明との最期の将棋が桂介の中では忘れられないものになってるのを感じてそれはそれで幸せなのかなと勝手に自己解決してました笑
Posted by ブクログ
佐野直也
三十歳過ぎ。大宮北署地域課。刑事。かつて棋士を目指し奨励会に所属していた。
石破剛志
四十五歳。捜査一課を牽引する中堅刑事。警部補。口が悪く、嫌味な性格で人づき合いのよくないことで有名。
壬生芳樹
若き天才棋士。竜昇。二十四歳。小学三年生で将棋の小学生日本一を決める小学生将棋名人戦で優勝し、小学生名人となった。翌年、奨励会に入会。十四歳で四段に昇進してプロになった。十八歳で初タイトル・王棋を獲得する。その後も、棋戦最多勝、最多対局、最高勝率など、将棋界の記録を次々と塗り替え、棋界のタイトル六つを掌中に収めた。
上条桂介
プロ棋士の養成機関である奨励会を経ず、実業界から転身して特例でプロになった東大卒のエリート棋士。六段。三十三歳。長野の高校を卒業したあと、東大に入学。東大卒業後は外資系の企業に就職し、その企業を三年で退職した。その後、自分でソフトウェア会社を立ち上げると、事業は軌道に乗り、年商三十億を達成する。業界のトップスリーにまで成長した会社の株式を売却し、実業界を引退、将棋界へ転身する。「炎の棋士」の異名を持つ。
花田源治
戦前、賭け将棋の真剣師として名を馳せた。九段。特例でプロ試験に合格し、五段付け出しでプロになった。
亮
丸藤将棋駒店。
酒牧航大
佐野の奨励会時代のライバル。五段のプロ棋士。
本島
十段。酒牧が若いころから尊崇している。
前田
連盟の関係者か奨励会の会員。
崎村賢太
八段。洒脱なトークで知られる。
広岡知美
若手女流棋士。女流三段。
橘雅之
大宮北署署長。警視。
五十嵐智雄
埼玉県警捜査一課管理官。警視。
糸谷文彦
大宮北署刑事課長。警部。
本間敏
埼玉県警捜査一課の理事官。
鳥井
大宮北署刑事課強行犯係主任。
清水淳
四十一歳。山林の伐採を引き受けている株式会社フジトーヨーの社員。天木山で白骨化した遺体の第一発見者。
高田伸広
山林の伐採四十年のベテラン作業員。現場の責任者。
矢萩充
天木山の山中から、遺体とともに発見された将棋の駒を鑑定した人物。六十七歳。アマ四段。日本将棋連盟東神奈川支部の事務局長。
矢萩礼子
充の妻。
梅ノ香
菊水月作の駒を所有している京都の老舗料亭。
仙田剛太郎
菊水月作の駒を所有している富山の駒収集家。
吉田碁盤店
菊水月作の駒を所有している東京の囲碁・将棋専門店。
佐々木喜平商店
菊水月作の駒を所有している宮城の囲碁・将棋専門店。
林屋本店。
菊水月作の駒を所有している広島の囲碁・将棋専門店。
相模高雄
将棋の駒の研究者。三年前に心臓の病で亡くなった。
唐沢光一朗
三年前に還暦を迎え、それを節目に教師を辞めた。元小学校教諭。小学生だった桂介に将棋を教え、その才能に気づく。初代菊水月作の駒を持っている。
児島武夫
唐沢が教諭だったころの教え子。スポーツ用品店を経営。
高田正一
唐沢が尋常小学校五年生の時の担任。
美子
唐沢が二十七歳のときに、赴任先の小学校で事務員を務めていた。唐沢の妻。
庄司
唐沢の近隣の住人。町内会の会長。
佐々木
唐沢が勤めていた小学校の用務員。大の将棋好き。
阿部
唐沢と同じ町内会。
新聞販売店の店主
桂介が小学三年生で働いていた新聞販売店の店主。
信治
児島の息子。
上条庸一
桂介の父親。春子が亡くなってから自暴自棄になる。酒とギャンブルに溺れる。信州味噌の味噌蔵『杦田屋醸造』で働いている。
上条春子
桂介の母親。桂介が二年生の冬に亡くなった。
徳田洋平
地元紙の観戦汽車で、この道三十年のベテラン。
松本朝子
信治の担任。
長谷川金仁
教育委員長。唐沢が長野市の小学校で教頭を務めたときの校長。
香里
義則の嫁。
義則
佐々木喜平の孫。市役所に勤めている。
大洞進
佐々木喜平商店から初代菊水月作の駒を買った。
佐藤
杦田屋醸造の番頭。
安立直人
水戸中央署地域課巡査の捜査員。
大洞忠司
大洞進の息子。忠司が結婚した昭和四十年に初代菊水月作の駒をを売った。
菊田
大洞進が初代菊水月作の駒を打った相手を知っている。大阪で不動産業を営んでいる。
笹本景子
前年から引き続き桂介の担任になった教師。三十代前半で、去年結婚した。
守岡
桂介が通う高校の教頭。唐沢の元教え子。
新関徹平
大阪府警難波南署地域課巡査。
菊田勲
西宝不動産を経営。昭和三十年登記。
菊田栄二郎
栄公不動産を経営。昭和二十五年登記。
大守江美
栄公不動産スタッフ。
大河原信二
菊田から駒を買った人物。
矢口孝彦
坂部将棋道場。奨励会2級。
横森誠治
坂部将棋道場の席主。アマチュア五段。
藤沢
東大の将棋部。
幹本寛治
カンちゃん。坂部将棋道場。三段。
東明重慶
賭け将棋で飯を食う真剣師の中で歴代最強と謳われ、「鬼殺しのジュウケイ」の二つ名を持つ。元アマ名人。
穂高篤郎
将棋酒場「王将」のマスター。元一流企業の管理職だったが脱サラした。アマチュア将棋で東京の代表で全国大会に出たことがある。二つ名は「居飛車穴熊の穂高」。
兼埼元治
真剣師。二つ名は「鉈割り元治」。肝臓を患い引退。
角館銀次郎
岩手で旅館「語り部の宿」を営む愛棋家。穂高が大学時代に将棋部の合宿で世話になった。東北一帯の真剣師と繋がりがある。
須藤
王将の常連。
米内重一
東北では名の知られた真剣師。「マムシ」の異名を取る。
江渡和平
角舘の古くからの将棋仲間。温泉街の元締め。
孝子
元治の娘。
網島
浅虫温泉協会の会長。
貝原
浅虫観光協会の会長。
麻子
大河原信二の娘。
柿沼
上条家の近所の住人。
戸賀信三
「現代将棋」の編集長。
彰浩
春子の四歳上の兄。
音羽
新宿にある整形外科の医師。