【感想・ネタバレ】指差す標識の事例 下のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年04月07日

下巻は暗号解読の達人である幾何学教授の手記から始まる。
上巻は、まずヴェネツィア人の医学生であるコーラの手記から始まったのだが、真面目でお人好しの好青年と思われた彼の姿は、ふたり目の法学生プレストコットの手記によって、いささか様相が変わってくる。
重大な事柄の記述漏れ、明らかな噓。
コーラはなぜ、ロ...続きを読むンドンではなくオックスフォードにやってきたのか。

しかしプレストコットの手記も変だ。
尊敬する父の汚名を返上するための彼の行動は、どう見ても常軌を逸してきている。
ヒステリックなその行動を、彼は、さらに魔法をかけられたからだと思い、その魔法から逃れるために、サラを無実の罪に陥れ、死刑へと向かわせる。

そして下巻。
暗号解読の達人であるウォリスは国王に仕えたり、革命後はクロムウェルに仕え、王政復古3年後の今は再び王に仕えるという定見のなさ。
信仰も英国国教会から長老派、そしてまた国教会と行ったり来たり。
要はいつも勝ち組に乗る男が、コーラとプレストコットの手記を読み、その嘘を暴き真実を語る…ことになっているのだけど、これが過去最高に信用できない語り手。
とにかく自分の考えに凝り固まっていて、間違いを指摘されても聞く耳を持たない。

そもそも、最初にコーラの噂を聞いたときは、トルコの海賊にフィアンセを殺されて復讐の鬼になったがりがりに痩せた男だったはずなのに、目の前に現れた小太りの陽気な男をすんなり受け入れる感覚がわからん。
普通なら、「誰だ?これは」ってなるんじゃない?
もう偏執狂と言っていいくらい視野が狭い。(実在の人物なのに、いいの?これで)

最後の歴史学者ウッドが3名の手記の噓や矛盾を暴き、真相を解明するという流れなんだけど。
解明というか、彼は最初から真相を知っていましたね。
ただ、その意味を理解していなかった。
なぜならば、彼は人付き合いの苦手な世間知らずのお坊ちゃんだから。
噂が耳に入るのがいつも遅い。

そして、彼すらも、信用できない語り手だと思うのが、サラについて語る部分。
今なら正気ですか?と言えるその描写も、当時は本気で信じてはいるのだろう。
だけど、真実かどうかはちょっと疑問。

上巻はグローヴ教授毒殺事件の謎が物語の中心と思っていたのだけど、下巻に入るとイギリスという国の歴史の中のブラックボックスが中心になっていた。
王制と共和制、国教会とカトリック、そしてゆれるイギリス国内を虎視眈々と狙う周辺諸国。
どの語り手の真実も、事実から少しずつ乖離していて、最後まで読んでも全然スッキリしない。

だけど面白かったんですわ。
実在の人物が多数出てくるし、歴史がさらに負わせた過酷な運命には愕然とするけれど、続きが気になってしょうがない。
衒学的で難しい本なのに、ぐいぐい読んで、寝不足でございます。

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Posted by ブクログ 2020年09月20日

深いですね~側面どころか、縦・横・斜め・あげくは斜め下から読まなくてはならない本だったなんて・・・。
4人の手記の形をとっていても政変ありスパイもどきも出没。そしてまさかのキュン話にまで行き先を変えながらもミステリーの形を保ち、謎は深まるばかり。
『薔薇の名前』を称している通り、時間をおいてまた手に...続きを読む取ってみたいカモ。

自分のなかの最大の??だった東江先生の謎もあとがきでスッキリ。

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Posted by ブクログ 2021年07月14日

読み応えがあった。
語り手が変わるたびに意味が変わっていく出来事の連続で、主観が違うとこうも違うのかと。もちろんあえて真実を書いていない語り手も存在しているのだけど。2人目が1番手こずった。ちょっとどこまでが妄想なのか…。下巻に入ってからは割と一気に読めたかな。

手記ごとに訳者が違うも面白い。より...続きを読む一層、4人それぞれの視点、それぞれの物語へと入ってしまうので事実はさらにわからなくなっていく。

語り手が変わるたびに、ひっくり返されるミステリ。あまりこの時代の宗教戦争に詳しくないことが悔やまれたけれど…薔薇の名前を読んでみようと思う。

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Posted by ブクログ 2021年06月27日

1663年、クロムウェルによる護国卿政後の王政復古時のイングランド、オックスフォードで大学教師が殺害された。その殺害に関する手記が綴られる。

まず初めにヴェネツィア人医学生の手記が提示され、それに対する反論に近いものが第2(性格の悪い苦学生)、第3(教授であり偏屈な暗号解読者)、第4(歴史学者)の...続きを読む手記が出されていく。

面白いのは各手記によって翻訳者が変わること。これにより手記それぞれに翻訳された文体がガラッと変わる。

個人的にはミステリー部分よりも当時の社会風俗を楽しみながら読んだ。医術に占星術を絡めたり、ヴェネツィア人にとって味もマナーも最悪なイギリスの食事、土地の所有と相続の問題、権力争い、そして恋愛。

人によって「Aはいい人」だったのが違う人物の語りでは「Aは悪い人」になり、人の外面は1つではない、というのも面白かったし、4人の信用できない語り手とこの時代の歴史を感じられたのと、翻訳文が良かったけれど、では作品全体が面白かったかというと、とても微妙。

俺はすごい、俺は正しいという、マウンティングに次ぐマウンティングと自己正当化、(私が感じるところでは)善い人が一人もいないので、楽しんで読めた、という気はしない。。

恋愛が入る4人目の手記は別作品のよう…いやでも変わらず陰鬱だなと読み進めていたら、いきなりちょっと少年ジャンプ的な展開になって面喰いました。

「翻訳ミステリー大賞」と言われると納得はするけれど、人に勧めるかというとどうかなぁ。

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Posted by ブクログ 2021年05月09日

解決編である4章は面白かった。ここだけで言えば星4つ。ただ、3章はつまらない。2人の人物の視点で、2章構成にした方が面白かったのではないだろうか?全体を通しても冗長で飽きてしまった。
ただ、当時のイギリスの様子がわかったのは勉強になったし、何よりサラが報われて良かった。

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