時は昭和12年。
舞台は、人の命が軽く扱われるような国「満州」。
関東軍の兵士として母親や妹弟とともに満州にやってきた日方勇は、戦地で助けようとした子供から銃で撃たれて右目を怪我し、前線離脱を余儀なくされます。
その後、農業義勇軍に配属され、虐げられる日々を送りますが、片目を失って以来利くようになった鼻を生かし、食べられる草花を嗅ぎ分けて貧しい生活の支えとしていました。
しかし、母が肺ペストに感染してしまうのです。
母を救うには高額な薬が必要ですが、そんなお金は持っていません。
何とかして稼がなければ…と思った矢先、古い土や堆肥を捨てているはずの処分場からかぐわしく甘美な芳香がすることに気付きます。
扉を開けるとそこには、無能兵と虐げられていた陣内茂が金を稼ぐためにこっそり育てていた阿片芥子が咲き誇っていたのです。
当時の満州は「一番軽いものは人の命」と言われるほどで、生きるためには金が必要でした。
しかし、金を稼ぐには子供を売るか阿片を売るか…といった手段しかありません。
一花咲かせるために必死の茂は、勇に芥子を横取りされまいと襲い掛かりますが、逆に勇の妹達に殺されてしまいます。
それをキッカケに、勇は母のために阿片製造で金を稼ぐ決意をするのです。
彼は中華民国最大の秘密結社へ自作の阿片を売りつけに行きますが、危うく殺されかけたところを、ボスの娘である麗華に救われます。
彼女は自分が自由になるため、勇と組んで阿片を支配することで、満州国の支配を企んだのです…!!
阿片中毒者などのハードな描写がありますが、画力の上手さと丁寧な物語運びによりグイグイ読み進められます。
製造した阿片の顧客を得るためにかなり強引な手段を取る麗華にハラハラさせられますが、彼女の逞しさに清々しさを感じてしまいます。
一方、そんな麗華の姿に戸惑いを隠せない勇ですが、彼の度胸と賢さは今後大物になる予感がビンビンします!!
個人的希望ですが、家族のために"真阿片"という悪魔の発明をしてしまった勇の苦悩などが描かれてほしいです…。
阿片によって利益を得ている日本軍との対立など、陰謀渦巻く満州で勇がどうのし上がっていくのか…物語はまだまだ始まったばかりです。
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匿名
おもろ
おすすめされたので読んでました。最初はストーリーが重そうだなと感じたけどサクサク読めました。兄妹と生き残るために長男が危ない橋を渡ります。
満州の闇
舞台は昭和十二年の満州。
主人公は18歳の青年・日方勇(ひがた いさむ)。
兵役のため家族と一緒に満州へ渡った彼はそこで訓練兵として激しいしごきに合う。
そんな勇は植物や化学について詳しく、豚小屋の隅に生えている植物を大豆だと見抜けるくらいに目が肥えている。
戦場で中国人の子供が放った銃弾で片目を失った勇は家族とともに農業義勇軍の開拓地へ送られる。
片目を失ったが嗅覚が以前にも増して利くようになった。
農業軍として見下されても家族でつつましく暮らしていけると思った矢先に母親がペストにかかってしまう。
隔離措置が取られて命だけは助かったものの治療には専用の薬が必要でその費用は高い。
どうにかして金を作って母親を助けなければと考えている勇は古い土やたい肥を捨てているはずの処分場からかぐわしい香りがしているのでなかを覗くと、大量の阿片芥子が咲いていた。
それをひそかに育てていた農業義勇軍の仲間に殺されそうになるが妹によって助けられ、遺体を埋めて隠ぺいする。
そのケシから作ったアヘンを売って家族を助ける事を勇は決断したのだった。
いろいろハードなお話だった。
中国におけるアヘンのタブーやそれをやぶってまで接種したい人間、その人間を食い物にして金を稼ぐマフィアなど盛りだくさんな設定だった。
Posted by ブクログ
「満州で一番軽いものは…人の命だ」
一目でガッチリ心を鷲掴みにされた。近代・満州国を舞台に描かれる、一種の成り上がり物語であると思われる。
冒頭に登場する「闇の皇帝」は十中八九は勇であろうと思うのだが、今の所は家族の為に尽力する三枚目的好青年といった印象。
偶然出会った暗黒街マフィアのボスの娘・麗華は組織のしがらみから自由になるという目的を果たすべく良質な阿片を精製する技術を持つ勇に協力を命じ、勇も金を稼ぐ目的の為に阿片製造に手を染め麗華に従う。
状況はカオス。
関東軍が誇るキャラ芸人・熊さんと長谷川伍長が勇を追跡、青幇からも早速刺客を差し向けられる事になる。
各勢力が入り乱れる展開。面白い。
麗華の本当の動機は何だろうか?
1刷
2021.4.19
ハマる
人は簡単に狂ってしまう。 その場のノリで阿片を吸ってしまった人達は、たちまち阿片の虜へとなってしまう。そして一度でも知ってしまえば、もう知らなかった時に戻る事はできない。
すぐに次の巻が読みたくなります
題材が面白いです。
歴史性がありつつも、満州・戦争時中・戦前の闇の社会・人間の汚れた部分を取り扱いつつ、独自のキャラの能力がある2重構造ですっかりストーリーに魅了されてしまいました。
最初なので話を進めていくための序章が描かれていて話の進み具合は今後に託しています。すぐに2巻が見たくなります。
日本人の男の人がこれからアヘンで裏社会に君臨していくようになるんだろうけど、お相手の女の人は、プロローグの獄中で死んだ人なのか別人なのか、どうなっていくのか気になります。
アヘン
植物好きだからっていってもただの子供がいきなりアヘン作れたりはしないだろうよw
道具とかどうしたんだよw
ペストなんかあっという間に死んじゃうのに間に合うわけないし。