あらすじ
あの、はな色の本にもう一度会いたい――。
榎木むすぶは中学二年生の夏に出会ったはな色の本を忘れられずにいた。あれから同じタイトルの何冊もの本と話したけれど、あの本とはやっぱり違う。そして中学三年生の夏、むすぶは再び北陸の地を訪れることになった。やっと会える! と胸をときめかせる反面、その本の持ち主と思われる少女のことは怖い。とりあえず事件の起こった屋敷を訪ねてみると折り紙にくるまれたブローチを拾った。そこには『わたしに会いに来て』と書かれていて――。表題作ほか恋にまつわる短編も収録した第3弾!
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Posted by ブクログ
シリーズ3冊目。
3遍の短編と1遍の中編からなる構成だけど、メインはようやく語られるむすぶと夜長姫の物語。
元話のヤバさそのままに殺人事件が続くなんとも危ない物語で、鏡見子のヤバさはちょっと背筋が寒くなる。
と同じぐらい個人的には、むすぶもやばいのではと感じてしまった。
確かに本の声が聞こえる体質から本の味方であることは正しいとしても、人より本を優先するのはどうなのだろうか?
まあでも、本の声を聞くことができるという常識はずれな人生をそんな常識で測れはしないのだろうけれど。
妻科さんと蛍ちゃんにはそんなむすぶくんのためにも頑張ってほしいね。
そして、若迫くんは自業自得とは言え、御愁傷様^^
Posted by ブクログ
第三話
『”文学少女”と死にたがりの道化』で登場した懐かしのキャラクターが登場……といいつつ、読んだのがあまりにも昔過ぎてストーリーはあまり覚えていない。それでも、作家読みしたくなるくらい、強烈な何かが自分の中に残っている。
第四話
思い切りネタバレになるが……
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「ううん、鏡見子は最後まであやかしのままだったよ。そういうふうに生まれた子で、ぼくらの常識の及ばない子だった」
きっと同情や思い込みで語ってはいけない子なんだ。鏡見子という特別な女の子は。
悠人さんが溜息をつく。
「ああ……そうかもな」
そうして、複雑な感情のこもる声でつぶやいた。
「どこまでも”姫倉”だったんだろう……」
巫女であり、バケモノでもあったという姫倉。
もしかしたら鏡見子は、気まぐれで残酷な神であったのかもしれない。
~~~~~~~~~~~~~pp.328-329
鏡見子は幼少の頃から心ない大人にいいようにされ、真っ直ぐ成長することができず、彼女にとっての耳男も現れず、実質死んでしまった(脳死は植物状態と異なり意識が戻ることはない。その意味で使っているのか、あとで復活させるのかは知らないが)。挙句主人公格の少年に、自分たちの常識の及ばないバケモノ扱いまでされてしまう。
坂口安吾『夜長姫と耳男』のラストシーンは、捉え方によっては救済ともとれるのだが、本作は……なんというか、私が読んだ上ではどこまでも救いのない物語だったように思う。死は救済、という意味で言えば救いだが。
”文学少女”シリーズでもビターなエピソードはいくらでもあったが、救いがあるように見えた。このシリーズがどこへ行くのか分からないが、どこにも行かないのではないか?という不安が拭えない。