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Posted by ブクログ
このシリーズの清涼剤、篠月橙が登場する2巻である。
この巻では様々な怪異にスポットが当たり、人間のおぞましさ以上に怪異のおぞましさが描かれている印象である。
経験した裏バイトは以下の通り。
「人形供養」
「自然保護監視員」
「助勤巫女」
「水族館スタッフ」
現場での裏バイトの扱い(「そういう危険も込みだから裏なんだろ?」といった捨て駒扱い)も露骨に描かれているのが印象深い。
特に「助勤巫女」は、下層の人間をヒトとは思わぬ振る舞いが楽しめる。
その意味で、人間の醜さもまた強く描かれている巻である。
どのエピソードも味わい深いが、特に皮肉めいているのが「人形供養」だろう。
シャーロット天野崎(というクソ舐めた偽名の少女)とともに受けたこのバイトでは、彼女は「人間はクソ。人形は完璧。あなたのようになりたい」とうそぶいている。
だが、それが所詮は人間関係で傷ついた人の、傷つける言葉を吐かない人形相手の人形遊びに過ぎないことは、最後に明示されている。
この後味の悪さは、実に上手い。
彼女への同情心を巧みに削っている物語構成なのも、後味の調整に神経を割いているのがよくわかる。
他にも、巻末おまけ漫画「しあわせな真琴ちゃん」で読後感をさらにかき乱される「助勤巫女」のエピソードも面白かった。
明らかにフラクタル、選ばれた彼女たちと、選ばれなかった主人公が実は全く変わらない存在であり、世界線の違いでしかないことが明示されているのは明白だろう。
おまけ漫画によって
「主人公たちの行き末がどうあれ二人はきっと幸せなのだ」
と暗示する内容は、味わい深く、それでいて空恐ろしい。
どれほど恐ろしく、悲惨な目に遭おうと、ハマちゃんとユメちゃんの二人はきっと幸せなのだから。
1巻にも増して充実した一巻だった。
文句なしに星五つ、個人的には星七つ程度で評価したい巻である。
レビューでは触れなかったが、「怪異は人間に忖度などしない」風に描かれた「自然保護監視員」「水族館スタッフ」もまた良いエピソード。
ホラーな味わいもまた素晴らしかった。本当に文句なしの一巻である。
3人目の裏バイト仲間とか
どうやら後輩の橙さんも含め、親族のせいで借金を背負ってしまっているようですが、こういうのって自己破産等の手続き、できないものか、といつも思ってしまいます。
不条理な結末のものや、ある意味スッキリとした結末になるエピソードとか、この辺は色々出てきます。