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Posted by ブクログ 2022年04月07日
VUCA時代のイノベーションの進め方。
様々な会社の実例を元に書かれており、とても参考になります。
共感を元に進む力、近年のキャリア自律の話ととてもマッチしている内容です。
Posted by ブクログ 2021年10月17日
ワイズカンパニーからの連続して読んだ。企業ビジョンについて日本の企業を例にして書かれた本はあまりであったことが無いが、組織のビジョンづくりを考えている方にはぜひおすすめしたい。(野中氏はビジョンという表現は使っていないが)
経営において、「高次の目的」を掲げることの実感が持てない方や、そもそもそう...続きを読むいった経営の指針とはいかに組織に浸透していくのかの理論と実践を両方知ることができる本だった。
実例紹介と、野中氏の丁寧な理論補足が各章セットで書かれているので、非常に読みやすい
Posted by ブクログ 2022年07月10日
多くの学びがあり、今の自分にとって勇気づけられる要素が多かった。新しい事例が多く身近に感じるのと、事例がぶつ切りではなく、次の事例解説で何度も振り返ってくれるので頭に染み込む。
分析的戦略の限界と物語り戦略の違い、競争に勝つ事よりも企業の存在意義という部分が特に刺さった。リーダーに求められる未来構想...続きを読む力、筋書きと行動規範を意識していきたいと思った。
Posted by ブクログ 2022年04月09日
言っていることは共感できるし、よく分かる。ただ成功事例においても『経営陣の反対を押し切って』となっている。
求められるのはリーダーのやり抜く力であり、まだまだ理論としては確立していないということだろうか。
そんな中、経営の必要性って何なのだろう?
Posted by ブクログ 2022年03月19日
野中氏の本。共感・物語りの重要性、その不足を痛感していることから読書。
共感経営、まさにその言葉の通り整理も可能だが、簡単に表現すると、共体験、接触機会なども通して、心を動かすことが人を動かし、大きな流れにつながると言う本質を語った本とも言えそう。
メモ
・企業経営やイノベーションや大きな成功は論...続きを読む理や分析でなく、共感→本質直観→跳ぶ仮説というプロセスにより実現される
・日本企業の三代疾病 分析過剰、計画過剰、法令遵守過剰
・共感とは他者の視点に立ち、他者と文脈を共有すること。
・共感は利他主義を生む
・相互主観性・共感の3段階
1 感性の総合 相手になり切る我汝関係
2 知性の総合 主客分離で相手を捉える我それ関係
3 完成と知性の総合 相手と無心無我で私の主観をこえた我々の主観を生み出す 我汝関係
・イノベーションは演繹思考からは生まれない。
・物量で戦う消耗線か、共感力と知力で戦う機動戦か
Posted by ブクログ 2020年09月18日
イノベーションを成功している企業を「共感」というキーワードから読み解く試み。
・日本企業は分析過剰、計画過剰、法令遵守過剰の三代疾病に陥っている
・VUCAの時代においてはこれまでの分析的思考だけでは生き残れないのであり、共感を軸にした物語り戦略をとっていくべきである
・顧客への共感、社員への共感...続きを読むを元に「あるべき姿」を分析的思考ではなく飛ぶ仮説として描き、辿り着きたい場所からの逆算思考で発想するべきである
・この発想は論理的三段論法ではなく、「目的(何を目指すのか)→手段(どのような手段が必要なのか)→実践(その手段を用いて行動に移す)」とつなげる実践的三段論法と呼べる
・物語り戦略にはプロット(筋書き)とスクリプト(行動規範)がある
・スクリプトは訳せば脚本、台本であり、演劇の主人公が場面場面において脚本にしたがって演技するように、スクリプトは蓄積した経験やパターン認識にもとづいて、無意識のうちに心と身体に刷り込まれている思考や行動にまつわるルールのようなもの。つまり、ある特定の文脈や状況において、「こういう場合はこうする」と暗黙知になった行動規範。
・物語(ストーリー)は複数の出来事(WHAT)を並べて記述したものであり、物語り(ナラティブ)は複数の出来事の間の相関関係(WHY)に即して語るもの
・WHYにこそ当事者の主観や直観が表れ、WHYこそが人々の共感の源泉となり、物語りのプロットの軸となり、人々の行動のスクリプトにも結びつく
・物語り戦略はアートとサイエンスの綜合
ビジョン・ミッションとバリューを物語りにおけるプロットとスクリプトと読み替えるような視点。元々ビジョン・ミッション・バリュー自体が定義が統一されていない曖昧なものなので、ストーリーという観点から捉え直すのはわかりやすいと感じる。
事例と解説を交互に行なっていくスタイルは体系的ではないもののそれなりに分かりやすい。
ただ、最後のまとめでユニクロやセブンイレブンを事例として持ち出すべきではなかったと思う。それでの事例もそれなりに有名な企業が多いとはいえ、取り上げているのは企業内の特定の状況における特定のプロジェクトだったからこそ説得力があったのに、これまで散々さまざまな戦略論で分析され尽くしたユニクロやセブンイレブン、富士フイルムの全社戦略を最後に出してしまうことで、結局これまでの戦略論から見せ方を変えただけなのではという印象が強くなってしまう。
VUCA時代における新たな戦略としての説得力を増すのにその事例出す必要ある?と最後に冷めてしまう。
最後はもったいなかったものの全体的には面白味を感じる本ではあります。
もう少し触れていると良かったと感じるのは「アートとサイエンスの綜合」が重要なのである、ということ。最近アートの強力さを論じるものが多いし、これまで軽視されすぎていたからしょうがないと思うけど、だからと言ってアート一辺倒でうまくいくのではなく、あくまでサイエンスとの両輪で走るべきなのにサイエンスが無視されすぎる場面があるように感じるので。
Posted by ブクログ 2020年06月24日
「全員経営」の続編みたいな感じで、事例の紹介とその「知識創造理論」による解説という構成。本のデザインも似た感じ。
基本的にはいつもの野中さんなんだけど、これは、ある意味、わたしが初めて「共感」した野中さんの本かもしれない。
これまでは、野中さんの言っていることは「分かる」んだけど、なんか再現可能...続きを読む性が低い感じがしていた。この本で、なんか、その辺の距離感が縮まった感じがした。
もともとのSECIモデルは、共同の暗黙知の形式知化というEのところにフォーカスがあったのだけど、これはSの部分、つまりメンバー同士の「共感」による暗黙知の共有みたいなのは、日本企業にはもともとあるという前提があったとのこと。
が、この前提が自明のものではなくなってきたので、Sの非言語レベルでのコミュニケーションにフォーカスしたのがこの本との説明で、これはとても腑に落ちた。
わたしが、野中理論に距離感を感じていたところも、「共有されている暗黙知はすでにある」という「暗黙」の前提があったからだとわかった。
「全員経営」では、誰でも知っているような大企業の事例が中心だったのに対して、こちらはやや地味かもなんだけど、今起きている変化をピックアップしたようなもので、私的には希望がもてる事例が多く、その辺もよかった。
タイトルからも分かるように、共感性とか、ストーリー性といったところを強調していて、あと、パーパスみたい言葉もでてくる。
なんとなく、ナラティヴとか流行り物(わたしもはまっているが)を取り入れてみましたという軽さもあるが、悪くはない。
でも、流行り物には止まらない新しさ、深さがこの本にはある。それは、昨年でた「直観の経営」における現象学、相互主観性という哲学的な考察が取り入れられているからだと思う。
最後の章で、この本でのインプリケーションをこれまでの優れた経営者、たとえば、本田宗一郎さんとか、稲盛さんに当てはめて、改めて共感が大事なんだという、野中さんのこれまでの本との連続性を整理しているところが、ややくどい、言わずがもな気がしたが、それはご愛嬌ということで。。。。
野中さんも随分ご高齢だけど、まだまだ進化しているな〜、と思った。
Posted by ブクログ 2022年03月05日
いかに共感できる夢(未来)を語れるかということだろう。
目次
序章 共感と物語りが紡ぐ経営
第1章 価値を生む経営は「出会い」と「共感」から生まれる
【解釈編】
・人間関係の本質は共感にあり、人間力の本質は共感力にある
・知的創造の起点は共感がある
第2章 イノベーションは「共感・本質直観・跳ぶ仮...続きを読む説」から生まれる
【解釈編】
・ものごとの本質を直観できる人が「跳ぶ仮説」を導き出せる
・「本質直観」には「外から見る現実」より「内から見る現実」が大切
・「全体」と「部分」の両方に目を向けると「跳ぶ仮説」が生まれる
第3章 「知的機動戦」を勝ち抜く共感経営
【解釈編】
・物量で戦う「消耗戦」か、共感力と知力で戦う「機動戦」か
第4章 不確実性の時代を「物語り戦略」で勝ち抜く
【解釈編】
・物語り戦略は「筋書き」と「行動規範」で構成される
第5章 共感型リーダーに求められる「未来構想力」
以下、引用
●日本はいま、オーバー・アナリシス(分析過剰)、オーバー・プランニング(計画過剰)、オーバー・コンプライアンス(法令順守過剰)という、三つの過剰による”三大疾病に陥って活力を失い、組織能力の弱体化が進んでいます。(中略)その一方で、現場が活性化し、社員一人ひとりが活き活きと仕事に向き合い、イノベーションや大きな成功を実現しているケースも少なからずあります。それらのケースに共通しているのは、企業と顧客、トップと部下、社員と社員、メンバーとメンバーとの出会いの場があって、つながりが生まれ、そこでわきあがる共感が新しい価値を生む原動力になっていることです。
●高知支店長だった谷村氏はこの現状を打破しようとします。不調のどん底にあって、キリンビールという企業に存在価値があるのかと思い詰めた末に、独自に「理念にもとづく支店改革」に踏み出すのです。「高知の人々に美味しいキリンビールを飲んでもらい喜んでもらう」ことを自分たちの「理念」として掲げ、「どこに行ってもキリンビールがあるようにする」という「あるべき姿」を描き、「あるべき姿」と「現実」を埋める「戦略」を実行する。
●経験はすべての知の源泉になります。経験から生まれた知は必ず何かと結びつき、大きく成長するという関係性を潜在的に持っています。人間は人と人との関係性を結びながら、あるいはモノとも関係しあいながら、常に動きます。そして動きながら経験が豊かに積み上がり、知が生まれ、それがまわりの知と結びつくなかで「新しい自分」へと変わっていく。これを繰り返すのが「ユニークな経験」としてのあり方です。この発想を支えるのは、人を静的なビーイングの「在る存在」ではなく、常に何かにビカミングする能動的な「成る存在」と位置づける人間観です。固定した存在である「~である」よりも、未完の状態にありながら未来に向かって開かれ、常に生成していく「~になる」を重視し、人間を常にプロセス(=コト)でとらえるのです。
●リーダーとメンバー、トップと社員、上司と部下、メンバー同氏の間において、人間関係のもっともベーシックな関係はペアリングにあり、新しい知は二人称の世界で芽生える。そこから一人称の思いがわいたら、三人称の概念を打ち出して組織を動かしていく。(中略)新しい知は人と人の出会いから生まれる。
●初代はやぶさのプロジェクトにおいても、リーダーは「イオンエンジンという新しい技術での惑星間航行」「宇宙の彼方での自立誘導航法」「微重力下でのサンプル採取」などの実現すれば世界初となる五つの目標を掲げました。この五つの目標をつなげていくと、はやぶさが三億キロ彼方の小惑星まで航行し、散布利を採取し、地球に帰還するという物語りとしての全体像が浮かび上がります。これにより、各メンバーが全体像のなかでの自分の目標の意味と価値を認識できるようにしました。そして五つのどれか一つでも達成できないと全体像も実現できなくなるように目標を設定することで、各メンバーが自分の直接の担当でない目標についても意識し、共有できるようにしたのです。
●「人間は理解と行動は別です。『地球が危ない』と説けば、頭では理解できますが、多くの人に行動してもらうには別の次元が必要で、それがエンタメです(後略)」
●このように思いや生き方を問いつつ、組織において仕事をするとはどういうことでしょうか。人間は自らの生き方を実践すると、そこに物語が生まれます。一人ひとりが他のメンバーたちと相互に作用しながら、自己の物語りつくりを通じて、組織の歴史を生み出していくという自覚を持つとき、自己の思いや生き方の価値観と企業の存在意義、すなわち、共通善が重なり合い、それぞれの思いや価値観が組織のなかで正当化されます。そして、その思いや価値観が仕事のなかで実現し、成果に結びついたとき、自己の生き方の高次な意味が生まれるのです。
●その目的や目標を達成するため、物語り戦略は、企業経営や取り組む事業、プロジェクトについての全体のプロット(筋書き)と、そのプロットを実現するため、メンバーや社員たちがどう判断し行動するかというスクリプト(行動規範)という二つの要素により構成され、展開されていきます。(中略)具体的には、「何を(WHAT)、なぜ(WHY)やらなければならないのか」を物語る、企業の存在意義や組織ビジョンにもとづいた経営計画や事業計画、プロジェクトプランがプロットにあたります。この経営計画や事業計画、プロジェクトプランを現実のものにするには、矛盾や対立関係をその都度、克服し、未来創造の方法論として戦略を実行するため、「どのようにやるか(HOW)」という戦略的判断や戦略的行為が必要になります。その判断や行為の基本を示すのがスクリプトです。
●戦略とはいわば、ソープオペラ(主に主婦向けの昼帯ドラマ)のような物語りだと主張しています。ソープオペラは番組が進むにつれて登場人物が頻繁に入れ替わり、プロットも大きく変化します。演劇や映画とは異なり、ある定まった終わりに達することを前提に構成されていないため、エンディングが決まっていません。経営における不確実性や動態的特性は、このソープオペラと本質的には同じです。戦略を実行していく過程では、状況がいつ、どこで、どのように変わるかが明確でなく、絶えず変化する状況に対応し、対処していかなければなりません。
●マネジメントでは一般的にPDCAのサイクルが多用されますが、PDCAが物語り戦略を遂行するための知的機動戦には不向きであると第3章で述べました。古森氏は第一線の社員一人ひとりが自律的にPを見いだせるよう、Pの前段階として、See(見る)とThink(考える)のステップを置いて「See-ThinkーPD」のサイクルを提起します。すなわち、客体を対象化して外から分析するのではなく、客体に共感し、同じ文脈に入り込んで五感で感じ取って、現実をアクチュアルにとらえ、WHAT(何が)、WHY(なぜに)を問い、本質を見抜くことを求めるのです。
●デジタル世代はチェキを、共感を醸し出すコミュニケーションツールとして楽しんでいる。チェキの本質的な価値をとらえたチームは、カメラというモノを売るのではなく、どんな使い方をすれば楽しめるのか、コトを提案する「コト提案」に注力していきました。
●人は相手に共感し一体感を抱くと、相手の目標が自己の目標と同一化し、達成に向かって強く同機づけられる、と同時に、自発的な自己統制が働きます。同一力による自己統制であるから、誰も人から統制されているとは思わない。組織における人間統制の一つの理想的な形です。
Posted by ブクログ 2021年06月06日
苦手意識があった「共感」関連の本を何冊か読んで、ちょっと落ち着いた。e-POWERの話は、LC4RIの布教で同じような経験があったのを思い出した。「物語」と「物語り」を定義して分けてるのも、ちゃんとしてるなと思った。で、共感できる関係が築ける時は良いんだけど、それが難しい時があって、どうすべーとか考...続きを読むえる。
Posted by ブクログ 2021年01月30日
花王とポーラの事例が特に感心した。
■自己組織とは
・自律的な振る舞いを持った構成要素が集まり、相互作用を媒介にして、それぞれの総和より質的に高度で複雑な秩序を創発していく組織のあり方
・各構成要素が管理―非管理の関係でなく、自らを動機づけながら新たな知を生み出していく
・個が積極的に関与し、自...続きを読む律的な個から生まれた独自のアイデアが広まり、全体のアイデアになる
■PDCAでは知的機動戦は戦えない
ビジネスの世界で有名なマネジメントスタイルにPDCAサイクルがあります。計画(Plan)し、実行(Do)し、その結果を検証 (Check)し、次の改善活動 (Act)につなげるプロセスです。PDCAサイクルの問題点は、最初から形式知の計画(Plan) ありきで、計画を生み出すプロセスが入っていないことです。それは、PDCAサイクルがトップダウン型の消耗戦に適応した効率追求モデルであるからです。
トップおよび戦略スタッフがデータなどをもとに、論理分析的にマスタープラン(基本計画)を策定し、それがブレークダウンされて数値ベースの計画や施策が降りてくる。第一線部隊は計画や施策ありきでPDCAサイクルを回し、効率を追求する。しかし、上から与えられた形式知の数値ベースの計画からは新しい意味や価値は生まれません。
日本の学校教育の現場に導入されたPDCAについて、計画はやたら大きく、現実から乖離した絵空事的であるため、実行が十分ではなく、それでいて検証だけはマイクロマネジメントで行われるものの、改善活動には つながらないとして、これを大文字と小文字をまぜて、「PdCa」と表現した社会学者の佐藤郁哉・同志社大学商学部教授の指摘は、実に正鵠を射ているといえます。 明かなのは、論理分析から導かれるPDCAサイクルでは知的機動戦は戦えないことです。
絶えず動く現実のただなかでは日々矛盾に直面します。ベストな解は誰にもわかりません。そこで、その場の文脈に応じて、「よりよい(ベター)」に向かって矛盾を解消する対処能力が重要になります。
その際、論理だけでは矛盾に対処することは難しいでしょう。論理は矛盾する関係性を「二項対立 (dualism)」としてとらえようとします。矛盾を相容れない二項対立としてとらえ、二者択一の
「either ~ or ~(あちらか、こちらか)」の否定により、どちらが論理的に正しいかを問う限り、ベターな解は導き出せません。
一方、外象に共感し、矛盾する関係性の文脈に入り込み、なかからとらえると、対極的で相客れないように見えることがらの間に実は連続した関係性があり、状況に応じてどちらも正しく、しかも境目がないような、いわば、「二項動態 (dinamic duality)」の関係にあることがわかります。
そこで、二者択一ではなく、両者両立の「both ~ and ~ (あれも、これも)」の均衡点を探し 出し、一見、矛盾する文脈に新しい意味づけや価値づけを行い、そこから跳ぶ仮説を導いて、 最善最適な解を導き出す。
アグリガールが、自治体とベンチャー企業という、価値観が矛盾しがちな当事者の利害を調整し、プロジェクトをスピード感を持って立ち上げることができたのも、相手への共感をベースに、矛盾する関係性の文脈に入り込み、矛盾を二項動態的にとらえて、ベターな均衡点をすばやく見つけることができたからでしょう。
トップダウンのPDCAではなく、現場の第一線部隊の一人ひとりが自律分散的に共感力を発揮し、矛盾を二項動態としてとらえ、均衡点を探し出す。そして、矛盾する関係性に新しい意味や価値が見えたら、跳ぶ仮説により、次のステップへとジャンプする。それが知的機動戦の戦い方です。
「上層部には、今回はこの方法で失敗したけれど、次はその学びをこう活かしていくと、その都度、ロードマップを示しながら、われわれが描くストーリーのなかでは一個一個積みあがっていることを伝えたのです」(ポーラ末延則子)
企業経営はまさに、「いま、ここ」の積み重ねであり、定まった終わりがあるわけでもなければ、エンディングも決まっていない。オープンエンドの連続ドラマともいえる物語り戦略こそが不確実で予測不能な環境下で企業革新を行い、成長を実現するうえで有効である所以がここにあります。状況をコントロールするための手段であるポジショニング理論では、変化への対応、対処はできません。
また、マネジメントでは一般的にPDCAのサイクルが多用されますが、PDCAが物語り戦略を遂行するための知的機動戦には不向きえあると第3章で述べました。古森氏は第一線の社員一人ひとりが自律的にPを見出せるよう、Pの前段階として、SeeとThinkのステップを置いて、「See-Think-PD」のサイクルを提起します。
すなわち、客体を対象化して外から分析するのではなく、客体に共感し、同じ文脈に入り込んで五感で感じ取って、現実をアクチュアルにとらえ、WHAT、WHYを問い、本質を見抜くことを求めるのです。
Posted by ブクログ 2021年08月08日
花王とポーラの事例が特に感心した。
■自己組織とは
・自律的な振る舞いを持った構成要素が集まり、相互作用を媒介にして、それぞれの総和より質的に高度で複雑な秩序を創発していく組織のあり方
・各構成要素が管理―非管理の関係でなく、自らを動機づけながら新たな知を生み出していく
・個が積極的に関与し、自...続きを読む律的な個から生まれた独自のアイデアが広まり、全体のアイデアになる
■PDCAでは知的機動戦は戦えない
ビジネスの世界で有名なマネジメントスタイルにPDCAサイクルがあります。計画(Plan)し、実行(Do)し、その結果を検証 (Check)し、次の改善活動 (Act)につなげるプロセスです。PDCAサイクルの問題点は、最初から形式知の計画(Plan) ありきで、計画を生み出すプロセスが入っていないことです。それは、PDCAサイクルがトップダウン型の消耗戦に適応した効率追求モデルであるからです。
トップおよび戦略スタッフがデータなどをもとに、論理分析的にマスタープラン(基本計画)を策定し、それがブレークダウンされて数値ベースの計画や施策が降りてくる。第一線部隊は計画や施策ありきでPDCAサイクルを回し、効率を追求する。しかし、上から与えられた形式知の数値ベースの計画からは新しい意味や価値は生まれません。
日本の学校教育の現場に導入されたPDCAについて、計画はやたら大きく、現実から乖離した絵空事的であるため、実行が十分ではなく、それでいて検証だけはマイクロマネジメントで行われるものの、改善活動には つながらないとして、これを大文字と小文字をまぜて、「PdCa」と表現した社会学者の佐藤郁哉・同志社大学商学部教授の指摘は、実に正鵠を射ているといえます。 明かなのは、論理分析から導かれるPDCAサイクルでは知的機動戦は戦えないことです。
絶えず動く現実のただなかでは日々矛盾に直面します。ベストな解は誰にもわかりません。そこで、その場の文脈に応じて、「よりよい(ベター)」に向かって矛盾を解消する対処能力が重要になります。
その際、論理だけでは矛盾に対処することは難しいでしょう。論理は矛盾する関係性を「二項対立 (dualism)」としてとらえようとします。矛盾を相容れない二項対立としてとらえ、二者択一の
「either 〜 or 〜(あちらか、こちらか)」の否定により、どちらが論理的に正しいかを問う限り、ベターな解は導き出せません。
一方、外象に共感し、矛盾する関係性の文脈に入り込み、なかからとらえると、対極的で相客れないように見えることがらの間に実は連続した関係性があり、状況に応じてどちらも正しく、しかも境目がないような、いわば、「二項動態 (dinamic duality)」の関係にあることがわかります。
そこで、二者択一ではなく、両者両立の「both 〜 and 〜 (あれも、これも)」の均衡点を探し 出し、一見、矛盾する文脈に新しい意味づけや価値づけを行い、そこから跳ぶ仮説を導いて、 最善最適な解を導き出す。
アグリガールが、自治体とベンチャー企業という、価値観が矛盾しがちな当事者の利害を調整し、プロジェクトをスピード感を持って立ち上げることができたのも、相手への共感をベースに、矛盾する関係性の文脈に入り込み、矛盾を二項動態的にとらえて、ベターな均衡点をすばやく見つけることができたからでしょう。
トップダウンのPDCAではなく、現場の第一線部隊の一人ひとりが自律分散的に共感力を発揮し、矛盾を二項動態としてとらえ、均衡点を探し出す。そして、矛盾する関係性に新しい意味や価値が見えたら、跳ぶ仮説により、次のステップへとジャンプする。それが知的機動戦の戦い方です。
「上層部には、今回はこの方法で失敗したけれど、次はその学びをこう活かしていくと、その都度、ロードマップを示しながら、われわれが描くストーリーのなかでは一個一個積みあがっていることを伝えたのです」(ポーラ末延則子)
企業経営はまさに、「いま、ここ」の積み重ねであり、定まった終わりがあるわけでもなければ、エンディングも決まっていない。オープンエンドの連続ドラマともいえる物語り戦略こそが不確実で予測不能な環境下で企業革新を行い、成長を実現するうえで有効である所以がここにあります。状況をコントロールするための手段であるポジショニング理論では、変化への対応、対処はできません。
また、マネジメントでは一般的にPDCAのサイクルが多用されますが、PDCAが物語り戦略を遂行するための知的機動戦には不向きえあると第3章で述べました。古森氏は第一線の社員一人ひとりが自律的にPを見出せるよう、Pの前段階として、SeeとThinkのステップを置いて、「See-Think-PD」のサイクルを提起します。
すなわち、客体を対象化して外から分析するのではなく、客体に共感し、同じ文脈に入り込んで五感で感じ取って、現実をアクチュアルにとらえ、WHAT、WHYを問い、本質を見抜くことを求めるのです。