あらすじ
国を追われた二匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園にたどり着く。その国は「三戒」と呼ばれる戒律と、「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。だが、南の沼に棲む凶暴なウシガエルの魔の手が迫り、楽園の本当の姿が明らかになる……。単行本刊行後、物語の内容を思わせる出来事が現実に起こり、一部では「予言書」とも言われた現代の寓話にして、国家の意味を問う警世の書。(解説・櫻井よしこ)
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Posted by ブクログ
読みやすく、最後まで面白く読めたけど、これが日本の未来だと思うと、一気に恐ろしく背筋が凍る。
最近ほんと暗いニュースばかりだし。土地は買われ技術も盗まれ、ウシガエルたちが少しずつナパージュに侵食していってる。
解説で櫻井よしこさんが、百田さんも出てきますと書いてあって、もしや悪態つきながら死んでいったあのカエルかなと思ったら、やっぱりそうだった笑
Posted by ブクログ
とてもわかりやすく日本の政治と安全保障問題について描かれている作品。着々とこの寓話のようになるかもしれない未来が近付いている気配がするのが本当に恐ろしい。
ナパージュに住むヒキガエルは日本、ワシはアメリカ、ナパージュにじわじわと近付いてきているウシガエルは中国。
あとがきで、デイブレイクのモデルを知り、なるほどと唸った。また、ハンドレッドは百田尚樹がモデルらしく、納得である。声を上げたものたちの結末が恐ろしいが、もっと恐ろしいのはローラの最後のセリフだ。力のない私たちは勇気を捨て、宗教に縋るしかないのか。
Posted by ブクログ
The世間の縮図といった作品。
かなり読みやすい文体でスルスル一気読みしました。
読者としてなら三戒を絶対的に崇拝する者の異常性を理解でき、冷静に判断ができるものの、実際の世の中ではそうもいかないのが難しいところ。
きっと私は「カエルの楽園」だったナパージュに想いを馳せて異常性に気付きはするもののその土地を離れられないでしょう。
宗教や占い類のものは度が過ぎると毒だということがよく分かりました。若者が引っかかりやすいのもまた…都合よく捉えすぎることで自身を破滅へと導く。もっと視野を広く持たなくては自分もいつかドツボにはまるのでしょうか。
ヤバい宗教にハマっている人にこの本を読んでもらって感想を聞きたいところですね。あぁ、でも、きっと、彼らは自分達はこのカエル達とは違うんだと言い張るのでしょう。実際、本当は同じだと気付いているかは置いておいて。
Posted by ブクログ
百田節全開の寓話。
カエルの世界をモチーフに、現代日本と安全保障について語られている。
理想の国ナパージュは日本、ナパージュを飛び回って警戒しているワシはアメリカ、ナパージュを侵略しようとしている隣国は中国のこと。
その他にも、モデルになっている組織、人物がたくさん登場するが、朝日新聞のことをデイブレイクと名付けたのはナイスセンス。
直訳すると夜明けらしいが、日(日本)を壊すとも訳すことができる。
著者がハンドレッドというカエルで登場するのも笑えた。
櫻井よしこ先生のあとがきも素晴らしかった。
これほど分かりやすく日本の政治と安全保障問題を描いた本はないと思う。
子供にもぜひ読ませたい一冊。
ナパージュの無能ツチガエル
国家の安全保障を描いた作品として読んでも面白いし、現在のビジネスに置き換えて、日本企業と中国企業、アメリカ企業の関係と見ても面白いです。
日本が衰退していくシナリオが三戒と話し合いを美徳と掲げた集団とそうでない集団として描かれています。
歯痒いかな現在の日本人は、ビジネスの面で、この物語のツチガエルの様にやっつけられています。日本人が変われない、企業も変われない、だから日本企業は淘汰されてナパージュのようになっていくのでしょうね。
Posted by ブクログ
"多数派"の恐ろしさを体現した一冊だった。徹底された平和主義は度を越すと返って楽園を滅ぼすことになる。作者の楽園に対する意図も相まって他人事ではないという、背筋の凍る思いをした。
考えることを放棄した若いカエルにならないように頑張らなきゃ…
凶暴なダルマガエルの襲撃により国を追われた2匹のアマガエル、ソクラテスとロベルト。最終的に辿り着いたのはナパージュという、ツチガエルが治める国だった。その国は「三戒」という戒律と「誤りソング」という奇妙な歌によって守られていた。しかし、ある日突然ウシガエルの魔の手にかかり…
この内容が他人事と思えない恐怖を覚える。最初は滑稽な話だと思っていたら壮大な風刺であることに気づく。「三戒」に固執するカエルたち。「三戒」のあり方が破綻していると訴えるカエルたち。多数派である保守派のカエルの方が圧倒的な力を持ち、最終的には何にも変わらず終わる。そして来襲。国民の半数が虐げられ、残ったのは保守派ガエルの一部。何のための「三戒」なのか。
ウシガエルに乗っ取られたナパージュでいたぶられていたツチガエルを見つける。それはかつて「三戒」を過信し、何も悪いことは起こらないと盲目的になっていた若い女ガエルのローラだった。[「大丈夫よ。ひどいことにはならないわ。だって、ナパージュには三戒があるんですもの。」それが彼女の最後の言葉になりました。]この本を読んでちゃんと選挙に参加した方がいいと思った。(私はいつも行ってます!!)考える脳みそと疑う感覚を無くしてしまえば、そこにあるのはただのおバカ。ナパージュで平和を疑うことなく、楽しく生きていたローラたちの言動を見てこうはなりたくないな、と思った。
Posted by ブクログ
カエルの世界のディストピア。
政治的だけではなく、人間ってこうなるよなあっていう感じもあった。表の綺麗な部分しかしらないカエルは幸せと勘違いしている。その幸せを裏で支えているワシの存在を知らずに。安定した幸せが続くと、平和ボケして傲慢になり自分達だけの力でこの平和が保たれているとワシを追い出す。
最悪の最後を迎えてもなお気付かない信仰心の怖さも感じた。
Posted by ブクログ
大人向けの童話。
物語調ではあるが、世界における日本の情勢を描いている。
読後感はゾワゾワして後味は悪め。
でも日本の未来やメディアの存在について考えさせられ、読んでよかった。
・私の印象に残ったのはローラの言動。
国が大変なことになってるのに、お構い無しで遊ぶのに忙しいと言ったり、子供を生むことに対して、女ばかりが大変な思いをするのは不当だという。
大変な思いをするのは嫌だという部分には共感するものの、無関心さや根拠のないものに対する信頼など、今の自分にも重なる部分があり、ローラの最後にはゾッとするものがあった。
・カエルの弱肉強食の世界がリアルに描かれていた。カエルが食べられる描写などはなんとも気持ち悪く、想像したくなかった。
死というものは恐ろしいものだ、それをこのカエルたちは知らないのではないか。というセリフには自分のことを指摘されているような感覚があった。
何となく死は避けるべきだという感覚はあるが、今を生きるのに必要ないから考えたくない。生々しい悲劇的な死に直面したことがなく、敵から侵略される恐怖やそれに伴う悲惨な死を目の当たりにしたことがない。
そんな平和のなかで、無抵抗で相手になされるがまま侵略され死ぬことを美しいかのように論じる所が、恐ろしかった。
Posted by ブクログ
カエル世界を日本の現在に置き換えて書かれている。
いろいろと考えさせられるのは間違いない。
しかし著者の思惑がどうかは、深読みしないで、自分自身である時はそうだよな、と思い、ある時はそんなことある?と思ったりすればいいと思う。
主人公の二人のアマガエルは、ツチガエルの国ナパージュの中で、客観的立場でツチガエル世界の状況をあれこれと感じ、考え、共感したり、疑ったりする。
主人公二人は意見を異にするが、読者が一方の意見・思想に偏らず、客観的視点で両者の考えに同時に寄り添って読むことができる筋立てになっているのはよかったと思う。
もし主人公が問題の当事者であるナパージュのツチガエルの一方の側、つまり侵略に対する武力防衛戦抵抗派か非戦闘平和主義の被侵略容認派だったとしたら、この小説を読むのが嫌になったと思う。
実際には、小説は非戦闘平和主義派が支配的なナパージュはウシガエル軍団に侵略され、結局悲劇で終わるわけで、やはり平和主義への警告が結論になっている。
つまり、この小説の結論は結局一方の側に立っていて、残念に思う。
確かにとても平和主義の矛盾をわかりやすく説いているわけだが、たとえ武力防衛派がナパージュで優勢となったとしても、結局は同様の悲劇が生まれるのは明らかである。
私自身は、戦争に勝者無し、を確信しているから。
この小説には侵略を非難し、抑止力を持つ第三者は現れない。
現実世界では、国連ということになる。
昔は、国連、つまりたくさんの国の良心を結集することで戦争・紛争を抑止する、という機関の力を信じていた。
この小説はウクライナ戦争より前のものだが、ウクライナ後の国連の安保理が機能不全に陥っている現状を考えると、抑止力を持つ第三者がいないと思い知る。救いのない世界になってしまっているのが悲しい。
巻末の櫻井よしこさんの解説は、具体的に日本の現状に当てはめていて、とても生々しい。
個人的には長期の安倍政権が日本に与えた悪影響や横暴・不正を感じることもあり、この解説を読むと、(具体的なためなおさら)いやな気分になった。
結局、小説も解説も平和主義の終焉を信じているし。
...たとえその意見が不幸にして間違ってはいない(正しい、ではない)にしても。