あらすじ
社交界で浮名を流し、風雅と博物学を愛する有閑貴族エリオットには、もう一つの通り名があった。それは幽霊男爵――。沈黙の交霊会、ミイラの呪い、天井桟敷の天使……。オカルト事件に目がないエリオットの元に舞い込む不可解な事件。だが「謎」から闇を拭うと隠された想いと切ない事情が見えてくる。幽霊男爵が美貌の助手コニーを従え、インチキ霊能者に挑む!【目次】1 交霊会と消えた婚約指輪の謎/2 ミイラの呪いと骨の伝言/3 修道院の謎と愛の誓い/4 病める人々と癒やしの手/5 天井桟敷の天使たち
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Posted by ブクログ
一見紳士で、貴族の嗜みが見えるが、ひとたび幽霊やオカルトめいた話となると少年の様にふるまったりするエリオットが可愛い。幽霊によって助けられた少年は、人間と幽霊の色々な面を見たうえで、誰かを「助ける」ということに燃えている。外見はクールだが、中にはやさしさと義憤が詰まっている親しみの持てる男で大好き。
それを支えるボーイのコニーや、作中の時代の「常識役」であり、彼にとっての友人でもあるヴィクター、当時の女性としては変わり者のいとこであるアレクサンドラの仲の良さも今後が気になる。
作中の事件としては、当時に囁かれたであろうオカルト・怪奇現象を解明し、種明かしをする面白さもあるけれど、同時に「幽霊が見える」世界観でもあり、見えるものと見えないものとの世界の狭間にいるエリオットや、将来的にどうなるか楽しみなレディ・リリアン等々の面も美しさと妖しさが両方あって楽しい。
コニーの思慕の裏側にある、救われるもの、救うものの関係性も好きです。
Posted by ブクログ
エリオットが幽霊を生きている人間と同じように見えている(要は区別が付かない)という点が様々な事件でより面白みを持たせてくれたなという印象。
お陰で驚かされること多数。
え、死者だったんかい! という。
でも怖いのは生きている人間の方。
事件を起こすのも、狂気に陥るのもいつだって生きている人間の方。
と単純にいかないのは流石栗原先生。
単純に幽霊が怖い話もある。
特に修道院の話は純粋にホラーとして怖かった。
真相も無論怖いし、確かに生きている人間の怖い話でもあったけど、犯人の執念が怖いというか。
絵面も断トツで怖かった。
基本的に偽オカルトを暴く系の謎解きだから「怖いと思った話は実は全然オカルト的には怖くない現実的な事件ですよ」と安心する筈が騙された。
いい意味で。
ミステリとしても本当に面白いし、ホラー的怖さも味わえる。
またエリオットの過去、従者のコニーの過去などキャラクターの抱えている事情もなかなかに悲劇で、でもその中でも人との絆や縁の大切さも再認識できるエピソードとなっていて、悲劇ながらも温かみを感じられた。
互いにとって、互いが救いになったという奇跡。
事件を起こすような良からぬ輩も勿論いるけれど、生きている人間の世界だって決して救いのない世界ではない。
それに気付かせてくれるいい主従だった。
……主人の女癖の悪ささえどうにかなればとは思うが。