あらすじ
水使い、それはこの世の全ての力を統べる者――。水荒れ狂う森深くに棲む伝説の水蜘蛛族の女であるタータとラセルタは、砂漠で一人の愛らしい少女を拾う。少女は外見に似合わぬ居丈高な態度で、水を操る力を持っていた。それもそのはず、彼女は砂漠の統治者イシヌ王家に生まれた双子の片割れ、ミイア王女だった。跡継ぎである妹を差し置き、水の力を示したミイアは、自分が国の乱れの元になることを恐れ、独り城を出たのだ。そんな彼女に、水の覇権を狙う者たちが迫り……。第4回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞、驚異の異世界ファンタジイ。/第4回創元ファンタジイ新人賞選評=井辻朱美、乾石智子、三村美衣
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Posted by ブクログ
これは好みドンピシャ!
女の人たちが皆カッコいい!
何より世界観がいい。丹導術という魔法が出てくるが、これはこの世界のエネルギー学とでもいうべき学問。
風、水、土、火、光などの分野があり…といえばありきたりに聞こえるが、これらは属性ではない。
例えば風使いは、風そのものを操るのではなく、振動や気圧、波動などの専門家。
その専門知識を元にして「比求式」という物理数式みたいなものを練り上げ、気圧などの自然現象を操作して、風を起こす。
風よ出でよ、といえば風が吹く、といった単純な話ではないところが面白い。
さらに水は、特殊な性質を持つ物体なので、操るのは至難の技なんだそうだ。
この水を巧みに操る方法を編み出した部族がいて、その描写も面白い。
実際、現実世界でも、水はかなり特殊な物質。
なのでこの設定には説得力がある。
物理トリビアが隠されていてワクワクする。
呪文を知っていて魔力があれば使える、というわけではなく、知識とセンスと閃きがモノを言うと言う点で、数学や将棋を思わせる。
自然、魔法合戦は知能合戦の様相を呈する。
戦う科学者といった感じだ。
戦いに冒険に陰謀劇に友情物語に師弟愛に…(読みようによっては百合にBLに)…となかなかのてんこもりっぷり。(笑)
人によっては散漫に思われるかな。
私はそのサービス精神、嫌いじゃないです。
引きずり込まれる異世界
読み応えのある濃厚な作品。本文のイメージ通りの禅之助さんのイラストが素晴らしいが、この物語は光景が目に浮かぶところも秀逸だ。また、比求式と舞によって力が生み出されるというメカニズムをはじめ、理論上の裏付けがあるかと勘違いするほど、丹念な科学的検証がなされている。庵野ゆきさんはフォトグラファーと医師の共同ペンネームだそうだが、アニメで観たいと思わせるビジュアルと科学的なアプローチは、この組み合わせの賜物なのだろう。
そして、多彩な登場人物を見事に描き分けている。読者によって「推しメン」が割れるのではないか。私はウルーシャに入れ込んで読んだ。だから帯に書かれたウルーシャの紹介には断固抗議したい。(「調子のいい性格」と書かれている。)ミイアの偉そうな口調が何とも可愛く、難しい言葉をひらがなで喋っているのも微笑ましい。しかし「ミイア推し」の人には、サブキャラに主役の座を脅かされた感があって、物足りなかったかもしれない。次作以降でのミイアの大活躍を期待しよう。ミイアとタータ、タータとラセルタ、ウルーシャとハマーヌなどの掛け合いが面白くて、声に出して笑うことも度々だった。全員の口調が違うという、セリフの書き分けも見事だ。
これがデビュー作ということだが、ここまで綿密に異世界を構築するのに何年を要したのだろう。どこにも破綻がないので、あっという間に異世界に引きずり込まれた。読み終わって、ハマーヌとミイアが関わらなかったことや、アリアの登場シーンがほとんどなかったことなど、いささか未消化の部分もあると感じたが、続編(幻影の戦)が出ると聞いて合点がいった。描いていない部分があったのは、これがシリーズの第一作だったからなのだ。
ずっと続いてくれることを願っている。
Posted by ブクログ
雷、風、土、火、光、この世に存在するありとあらゆる力を使いこなした先にある水丹術。
後継者である妹に先んじて水丹術の才を示した幼い王女ミリアが、政治的な諍いを避け、城を抜け出した先で出会ったのは伝説として語られる水蜘蛛族の彫り手だった……。
イシヌ王家により統治されている砂ノ領を舞台としたファンタジー。
本作の魅力は、作り込まれた世界観と、生き生きとしたキャラクターです。
まずなんと言っても世界観の作り込みがすごい!
雷、風、土、火、光、そして水という世界に存在する様々な力を操る丹導術。
未知の超常的な術の力や設定は、読んでいるだけでも想像力が掻き立てられ、ワクワクしました。
それだけでなく、丹導術は人々の生活や考え方、物語そのものとも密接につながっており、本作をより奥深いものにしています。
また、この世界に住む人々の風俗(衣食住など)も細やかに表現され、まるで別世界に迷い込んだような気分にも。
そして、それぞれが違った信念や考え方を持ち、行動しているキャラクターたちは、とても生き生きと魅力ある者ばかり。
特に、本作は主要キャラクターたちの出会いや別れを経ての成長が克明に描かれており、非常に読み応えがあります。
楽しかった
化学と物理学と魔法が合わさったような術を操る人々のお話。世界や歴史を様々な部族の視点から描いている。戦闘マンガ風に軽く読むこともできるが、よくよく読めばジェンダー論的な考察もあり。色々な読み解き方ができる。おすすめ。
Posted by ブクログ
ミイアとアリア姉妹。水蜘蛛族の女タータとラセルタ。ハマーヌとウルーシャの風と光の男術者コンビ。
それぞれが個性的で面白いんだけれど、一番好きなのはハマーヌ。男は黙って… なところがいいと思う。
Posted by ブクログ
ずっと探していた続編を入手したため再読。砂漠の国イシヌを舞台に、王女ミイア、水蜘蛛族のタータ、〈式いらず〉ハマーヌ達が成長していく物語、かな?やっぱり面白かった。特に王女ミイアは幼い子供ながら周りを慮り、重要な決断をし、半年ばかりの間に急成長を遂げる。3人の視点で語られる物語は、まだまだ全てが明かされていないと感じるけど、これ一冊でも充分の纏まり。一言ずつ噛み締める様に、ゆっくりと行きつ戻りつしながら極上の読書時間を満喫した。
Posted by ブクログ
水蜘蛛族、見ゆる気こゆる者の一族、イシヌ王家の双子の姉の王女などワクワクする要素がこの一冊にギュっと詰め込まれたお話。ミイアの成長物とも言える。
Posted by ブクログ
この手のシリーズの1巻は「こういう世界観です」というご挨拶物語になるものだけど、読みやすかったと思う。フォトグラファーさんとお医者さんの共同ペンネームということで、それぞれの特性が活きていたのではと感じた。続刊も気になります。
Posted by ブクログ
はじまりを過ぎて
少ししたところから展開が回り出してページをめくる手もどんどん進みます。
個人的には解放されたハマーヌとウルーシャの冒険を見たかったです。
水蜘蛛族のこれから、ハマーヌ、ミィア、タータのこれからは続編で続いていくのか気になります。
Posted by ブクログ
自由奔放だけれど随一の腕を持つ彫り手・タータと彼女のお目付け役のような立ち位置のラセルタ。ふたりは水蜘蛛族という種族で普段は人間に見つからないよう森深くに隠れ住んでいる。が、反物や塩など森では手に入らないものを探しに森の外へ出掛け、盗賊まがいなことをして生計を立てていた。
そんなある日、獲った荷物にまぎれていたのは人形のように愛くるしい少女だった。しかし子供らしからぬ言葉遣いで「里へ連れていけ」と言う。そんな少女にタータは「何ができるの?」と問いかけると「水が使える!」と言い、口ずさみ始めた旋律は【水の丹導術式】ーーそう、まだ幼さの残る少女はイシス王家双子の姉姫且つ水丹術師だった。ミミと名乗る少女の芸当を見て、タータは里へ連れ帰ることに。そこから水、風、光、土などそれぞれの術師と陰謀うごめく王家がミミことミイアを中心に巡り会い、大きな出来事へと発展していく。
ウルーシャとハマーヌのタッグが好きだったのに切ない……アナンにした仕打ちでマリヤは嫌なヤツだと思って読んでたけど、最期のほうで印象変わった。できれば間に合って生きてほしかったなぁ…
続編があるようなので、ミイアがどう成長して話が展開していくのか楽しみ。とても読みやすかった。
Posted by ブクログ
個人的には秀作だと思います
2冊めが出版されていることを知っていての感想です
審査に当たった方たちの改善点は、多分、2冊めで対応していると思うので、2冊めを読むのが楽しみです
Posted by ブクログ
世界観のしっかりした、術を中心とした真面目なファンタジー。
キャラクターは慣れ親しんでくるとなかなか個性的でよい。丹導術の描写も良いし、比求式や詠唱の歌や刺青や舞などよく考えてある。映像化したらさぞ綺麗だろう。
展開はやや単調だが、最後の方の戦のあたりは止まらない。タータとハマーヌが戦うシーンはカッコ良き。
タータやハマーヌ、ミイアが天才過ぎて周囲から浮く話に、私には見えた。
Posted by ブクログ
水蜘蛛族の設定が面白くて、もっと掘り下げてくれても良かった。
ハマーヌのキャラクターがタータに対応するために作られた感ありすぎなのが欠点といえば欠点。
Posted by ブクログ
術式の設定が大変に魅力的で、それを生かした彫り師周辺の描写とか展開はすごく、わくわくした。
ハマーヌとウルーシャの二人がとても好きなんだけど、この二人がこの話に必要だったのか?と言われると謎に思ってしまう。
別の話にするか、二話構成の方がスッキリした気がする。
Posted by ブクログ
第4回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞
イシヌ家、水蜘蛛族、見ゆる聞こゆる者。それぞれのキャラクターに魅力があり、不思議な世界観に引き込まれる。
ただ比求式が紡ぎだす様が想像の域を超えるのか、壮大すぎるのか、ちょっと判りづらい。
ミイア・タータ・ハマーヌが、それぞれどう関わってくるのか、次が気になる。
キャラがたっていたウルーシャとカラ・マリアの絡みがもう少し読みたかった
Posted by ブクログ
すごく面白かったです!水を操る力を中心に、それぞれの思惑が交差して事件が巻き起こる異世界ファンタジーです。主人公のミミも良いのですが、ハマーヌが特に好みでした!
Posted by ブクログ
双子の王女 水を操るもの 光を操るもの 風を操るもの 砂漠 森
などファンタジーの世界です。
幼すぎる王女と 後半のカラマリアの拷問のシーンが気になりました。
拷問されなくてもよかったでしょう!
力のある水蜘蛛族の女なんですから 他の解決方法もあったはず
とはいえ 続編も読みます。面白いけどうーん!
Posted by ブクログ
キャラクターは魅力的。ストーリーは既視感のあるものの継ぎ合わせのようで据わりが悪く、キャラクターが多い分とり散らかった印象を受ける。力についての説明はくだくだしい割にすごいからすごいとしか読めず。読むのにちょっと疲れたが、今後のアラーニャの女王ぶりは気になる。
作り込みが凄い
設定が作り込まれてて世界観に引き込まれます。時代の流れに翻弄される未来が予感される無常感も趣ありです。ただ、天才気質で気ままなタータに感情移入していれば最後まで楽しく読めるけれど、タータに振り回されるマリアに共感してしまうと一気にモヤモヤが溢れてしまいます。
ハマーヌとウルーシャのコンビの扱いもちょっと残念でスッキリしない感じでした。