あらすじ
出戻り介抱人・お咲は今日も寝不足!
江戸の介護を通して描かれる絶品小説。
嫁ぎ先を離縁され、「介抱人」として稼ぐお咲。
百人百様のしたたかな年寄りたちに日々、人生の多くを教えられる。
一方、妾奉公を繰り返し身勝手に生きてきた自分の母親を許すことができない。
そんな時「誰もが楽になれる介抱指南書」作りに協力を求められ――。
長寿の町・江戸に生きる人間を描ききる傑作小説。
解説・秋山香乃
※この電子書籍は2017年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
お咲が何もかもできるヒロインでないところがいい。実の母との確執、それを乗り越えその先の介護まで覚悟を持つラストに読者の心もやっと緊張がほぐれる
介護は今この令和の時代も大きな関心事。今現実的ではない人々も必ず向き合わねばならない問題。個人も国も試行錯誤している現状
高齢者を“老害”の言葉だけで片付けようとする風潮は高齢者だけでなく若者たちにも明るい未来がない。誰もが向かう先に一人一人咲のように真摯に向き合う心を持たないといけないと痛感した
肩肘張らずにそんなことを考えさせられる物語
Posted by ブクログ
星6つにしたいほどの面白さ。
自分の境遇と重なる部分もあり、言語化できずにいた気持ちをふわりと示してくれる巧みさにも唸る。
25歳の介護人お咲は所謂シゴデキで、雇用主にひっきりなしに頼りにされる。自宅に於いても休む暇はなく働き詰めだ。別れた亭主に借金を返さねばならず、気持ちも沈むし時に苛立つ。妙な達観を見せず、自分事はぐずぐずと同じところに留まっているが、人の事となると心の機微に聡く核心をつく。そこがリアルで魅力だ。
今だと35歳位の感覚だろうか。中堅どころ。
傍から見れば仕事をそつなくこなせる頼れる人材だが、本人は時に「私は玄人」と自分を鼓舞しながら必死に仕事に食らいつく。その内面がとてもリアルで自分の若かりし頃も思い出した。
登場人物は皆魅力に溢れ、町の活気が隠居生活の暗さと共に鮮やかに目に浮かぶ。
何度も読み返したくなる一冊だった。