【感想・ネタバレ】紙屋ふじさき記念館 あたらしい場所のレビュー

あらすじ

大学を卒業し、晴れて念願の藤崎産業に入社した百花(ももか)。
感染症によっていまだ分断が続いている世の中に不安や孤独を感じながらも、自分なりにできることを模索していこうとする。
日本橋にあった「紙屋ふじさき記念館」は閉館してしまったが、一成(かずなり)は記念館の再オープンに向けてあたらしい候補地を探しており、川越の古い商家の建物を使うことが決まった。
百花は会社で「記念館準備室」に所属し、新記念館の開館に向けたプロジェクトに携わることに。
どのような記念館にすれば「和紙」を今の世の中に広めることができるのか、プレッシャーを感じつつも、新卒の同期数名とともに様々な課題に取り組んでいく。
それと同時に、百花の亡き父の作品『東京散歩』を復刊する動きが現れて……?

「紙」がつなぐ人々の想いとあたたかな絆の物語、感動のフィナーレ!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

終わってしまった…世捨てハイスペック紙オタクだった藤崎さんが、冗談を言ったりにっこり笑ったりする姿におばちゃんホロリ。百花ちゃんはずっとずっとそばに居て、廃材の和紙の如く都度都度蘇らせて上げてほしい。ほしお作品の人々が川越に集結してきたのでシリーズまたいだビックイベントが開催されると良いなぁ。
このシリーズで知り、訪ねた場所、探した物は数知れない。作中の紙屋さんがどんなものなのか名古屋の「紙の温度」さんに行ってよく分かった。ネパールの和紙「ロクタ紙」即刻購入しましたとも。
うだつの上がる町並みを実際に訪れて、あるお店の方に言われたのは、紙の種類の違いはネットでは伝えられない。だからうちはネット販売はしていない。確かに目の前の2つの物は形こそ同じようだが明確に違いがあった。色、質感、紙の厚さ、重さ、カメラには同じように写るのに。作中にあるように、ネットは視覚と聴覚情報に偏っている。実感としてよく分かった。
今年は名古屋に知己を得たし、次回の美濃旅行は絶対に火曜日(定休日)じゃない日に行くぞ(涙)

紙媒体の世界を維持してゆくのは今とても難しくなっている。だけどデジタルデータは完成していてもそれ単体では存在できない。内容を現すには必ず電力と機械が要る。私の体でもってすぐにアクセス出来る物。実体の力は絶大だ。人間が身体から解き放たれることは無いから。データと物は役割が違うのだ。
ほしおさんの作品はただの紹介ではなく、羅列ではく、物の本質を見つめようとする姿勢がある。
決して古きを崇め、新しきを否定したりしない。今ある技術を生かしたまま、どのようにしたら未来に活かしていけるのかを模索する。そこがとてもとても好きだ。

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2024年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コロナ禍で閉店セレモニーもできずに閉じてしまった記念館は、川越で新しくオープンすることになる。プロジェクトチームのメンバーとして様々なアイデアを出し合い準備していくのは、大変だけれど楽しそうだった。新しい記念館には紙漉きのコーナーも作るということで美濃で紙漉きの研修も受ける。最初はもちろん上手くいかないが、2日目には「自分が自分であることを忘れて、紙漉きの世界に溶けこんでいく感じ。」を得る。心が自由になる。ものづくりはやっぱり良いなぁと思った。オープンセレモニーの司会という大役を果たした百花は、最初に記念館のアルバイトをしていたオドオドして自信なさそうな大学生の頃と比べると、立派になったなぁと感動。これからも、藤崎さんと一緒にずっとがんばっていってほしい。公私共に?

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2025年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大好きなシリーズの最終巻。
主人公だけでなく、他の登場人物の成長も感じられたお話でした。浩介さんの場面では改めて、コロナ禍が人と人の関係だけでなく、個人の考え方にまで与えた影響を考えさせられました。

物語は新記念館の開館を迎え、前へ進む形で終わりを迎えるのがすごく好きだなと思いました。あと著者の他のシリーズの登場人物や建物・店の名前が出てくるので、ふふふっと口角が上がってしまいました。

このシリーズは個人的に、自分と共通点や近い点が多い(紙雑貨好き、川越と日本橋の立地、百花の大学の場所、1つ違いの学年……)ので、終わってしまうのが、少し寂しいです

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2024年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

紙屋ふじさき記念館シリーズ7作品目で、この巻で完結です。
藤崎産業に入社した百花が、記念館準備室に配属になり、一緒に配属された同期入社メンバーと協力し、模索しながら新しい記念館の開設に向けて取り組んでいく過程が、ちょっと駆け足気味に描かれます。
新しい記念館は川越。元は呉服店だった店蔵を改装することになり、記念館のコンセプト、展示構成、内装などを、イチから組み立てていきます。
一成がトップにいるとはいえ、新卒新入社員達で、会社にとってそれなりの規模であろう新規プロジェクトに、これだけガッツリと、しかも割と自由にやらせてもらえれば楽しいだろうなぁ。その分プレッシャーもあるとは思うけど。
途中、物語ペーパーの題材となっていたお父さんの著書の復刊が決定したり、過去のシリーズ作品で登場した人たちや、旧記念館でプロデュースしてきたブランドが次々と登場(回想)してきたり、ちょっと総集編っぽく「まとめに入った」印象を受けました。
ラストも、新記念館のオープン記念式典が始まるところで終わっているので、個人的には、物語としての「余韻」や、「未来への展望」を感じさせるというよりは、少し物足りなさを感じる幕切れに感じました。もう少し続きが読みたかったなぁ。
ただ、シリーズ全体としては、とても好きな作品です。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いつの間にか、このシリーズも完結していて、残り4冊を一気に読んだ。
想像通り、記念館は川越に移転し、百花の父の雑誌に書かれていた小説が「手仕事をめぐる旅」として単行本化されることになり、絶版になっていた「東京散歩」もあらためて出版される運びとなった。
コロナ禍を経て、こもの市も開かれ、懐かしい三日月堂や、月光荘のお話に出ていた川越の笠原紙店なども登場する。こうして川越での手仕事が一堂に介したところで大団円となる。
一成と対立しがちだった浩介も、コロナ禍を経て和解したようだし、新入社員ばかりで記念館のオープンを任されたことも杞憂に終わり、何一つ障害なく、新しい記念館のオープンを迎えられた。皆いい人ばかりで、そこに複雑なドラマはなかったが、この物語はそれでいいのかとも思う。読み手が安心して読めるのは、そこにあるのかもしれない。
仕事に徹した描写で、恋愛を織り込まなかったこともこの小説に合っていた。川越のシリーズがまだ続くのかわからないが、またどこか他の小説のなかで、三日月堂の弓子さんのように、ふと、百花と一成のその後が垣間見られるかもしれない。
(星が少ないのは、一気読みして、登場人物がごちゃごちゃになったせいかも)

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2025年04月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

手芸を嗜むこともあり、モノづくりが関わる物語はジャンルを問わずに好きです。

和紙というのは高級品というイメージが先行しており、実際に触れた経験はほとんど記憶にないです。このシリーズを読んでいると和紙を実際に見て触りたくなります。

この巻で、主人公の和紙を巡る物語はおしまいです。藤崎さんとの関係がもしかしてワンステップ登るのかしらなんて思っていましたが、あくまでも上司と部下の関係以上同志という関係でしょうか、素敵なコンビになったと思います。
百花の仕事に対する真面目な姿勢がそこに現れているようで恋愛関連に発展しなかったことにやや残念なようなホッとしました。(というより、そもそも新入社員で新プロジェクトにも関わるとなったらそんな時間は持てないでしょうね。)

最初の孤高の藤崎さんが会社を通じた社会貢献まで考えるようになったと考えると感慨深さも覚えました。
コロナ禍という今もなお世界を悩ます前人未到の問題の中で、主人公やその仲間たちのようにここまで前向きに模索できた方たちは本来は少数かもしれないですが、人との関係が薄くなるからこその本物の手触りや感触を求めるというのは非常に納得できるものがありました。

なんだかんだ、主人公は人に恵まれ発想力に恵まれ性格も態度も良いという理想的な新社会人で、物事が上手くいきすぎている感も否めませんが私は好きなシリーズです。
この作家さんの書かれる物語は、それぞれの物語がリンクしているようなので紙屋ふじさきのその後も見れたら嬉しいと思います。

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2025年02月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なかなか辛かったです…

半分くらいは、前回までのおさらい、という様なストーリーで、とにかく話が進まない。
そこから徐々に進むが足踏みで、残り30ページが一気にイベントへ。

これまでがあって、新しいふじさき記念館がある。
これまでの百花があって、藤崎産業の百花がある。
というのはよく伝わった。

もう読みたくないかなと思ってしまった…

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2024年01月08日

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