あらすじ
『IT』『シャイニング』で知られるモダン・ホラーの巨匠キングが、小説への愛をこめた渾身のミステリー!
キング初のミステリー『ミスター・メルセデス』の続編が登場。
貧しい少年・ピートが拾った多額の現金と幻の原稿――それは出所したばかりの強盗の盗んだものだった。
家族を救った拾いものの金は底を尽き、妹の進学のため、ピートは未発表原稿を金に換えようとする。そこに、出獄した強盗・モリスが消えた自らの「宝」を追って魔の手を伸ばす。
少年を救うために立ち上がったのは、メルセデス・キラーを捕らえた退職刑事ホッジズと仲間たち。
幻の原稿をめぐる熾烈な争奪戦が幕をあける。
アメリカ文学と犯罪小説への愛をこめて描かれた、ノンストップ・ミステリー。TVドラマ『ミスター・メルセデス3』原作。
解説・堂場瞬一
※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
前作と比較すると話のスケール感自体はこじんまりとしているものの、流れている時間軸自体はゆうに30年を超えており、そこで物語の厚みを生むと同時に脱獄犯モリスの未発表原稿に対する執念がひしひしと伝わってくる。
前作主人公が完全に脇役というのは好みが分かれるものの、高校生に過ぎない少年が殺人も厭わない脱獄犯と対峙するというのは緊迫感があり、中盤から後半にかけてのドライブ感は凄まじく、一気に読み終えてしまった。超常現象は起こらないものの、スマホ社会になっても「すれ違い」の作り方が非常に上手く、ピート、モリス、ホッジズの三人称多元視点を活かした追うものと追われるものの構図の作り方には息を飲んでしまった。主人公の実家を襲うモリスなど、最悪の展開に最悪を重ねる手法も見事で、この畳み掛ける展開は流石のキング節といった感じで長年の読者には馴染み深く安心できる面白さだった。
主人公の起死回生の一手は『ミザリー』とほぼ同じであるのだが、興味深いのはピートもモリスもミザリーの変奏であるという点で、そうなる可能性のあった文学に囚われた人間である。その境目を分けたのは何を隠そう家族愛であり、そこが最大の違いであると同時に同じタイプの人間だからこそ犯人に理解を示せるというのもビターな終わり方でとてもよかった。
まとめると二作目に相応しい上質なB級映画のような良作であり、そうした高尚ぶらない作品こそキングの最も得意とする作品なのだろう。