あらすじ
「この本では、生物の形態を、一般にヒトがどう考え、どう取り扱うかについて、私の考えを述べた。いままで、形態そのものを扱った本は多いが、こういう視点の本はないと思う。」
生物の形に含まれる「意味」とはなにか? 形を読むことは、人間の思考パターンを読むことである。解剖学、生理学、哲学から日常まで、古今の人間の知見を豊富に使って繰り広げられる、スリリングな形態学総論。ものの見方を変える一冊!
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Posted by ブクログ
養老先生が解剖学者として考えてきた生物を対象とした形態学。生物の形を研究する過程でその後の著作につながるアイデアがいろいろ出て来たとのこと。それらは、例えば「唯脳論」「バカの壁」「遺言」などにつながる。
以下気になったところを記す。
形は客体のように見えて客体ではない。脳科学的には、情動ですら客観的な基準がない。まして、人の考えや思想に客観的基準があるわけがない。したがい、諸科学に普遍性はない。自分の考えを記すのは個人的作業。
「多様性は剰余から生まれる」・・・なるほど、すごく新鮮。
形は、意味を考えなければ、意味がない。
形の意味は、生物の場合、①数学的・機械的、②機能的、③発生的、④進化的な諸観点から考えられる。
①数学的には:幾何、機械的には:構造と力学
②機能的には:機能解剖学:「構造」は「機能」を考えるとわかりやすい。
③発生的には:発生自体が形の変化そのもの
④進化的には:進化の実際がどうであったか
問いと答え
・形に意味を与えるのは形を読みとる人間だとして、どのように意味を与えればよいと養老先生は考えるのか
→基本は4つの仕切り。主観の数を数え上げたのが上記の4つ。主観の内容は異なれど、主観の「形式」は、しばしば繰りかえす
・意味を与える側の人間が異なる見方をするのだとすると見方の違い(バカの壁)はどう乗り越えたらよいのか
→乗り越えられない
・養老先生としては、形にまつわる認識論的見方を生物以外にどう拡張してきたか
→考え方としては、画像と言葉などを同様に含む
Posted by ブクログ
生態について興味があり読むに至る。解剖学者である養老孟司さんによる、生物の形態に関する考察。後半は専門的すぎて単語の意味を一つずつ調べないと理解が難しいが、抽象的な考え方に関しては他の分野にも応用が効きそう。
例えばアーサー・ケストラーの「ホロン」と言う概念。これは階層構造のようなもので「自分より階層が上の実態にたいしては、部分としての面を示すが、下の階層には、全体として振る舞う。」という性質を持つ。この考えは建築・内装設計になくてはならない考え方。都市は国にとっては部分であり、建築にとっては全体である。建築は都市の部分であり、内装の全体である。内装は建築の部分であり、家具の全体である。スケールを横断して設計するにはこの部分と全体の往復とその連関を作らなければならない。
そして、ホロンを飛び台として筆者が主張する生物の形態も同様に重要な視点であった。「変化を繰り返す細胞集団は時間的断面をとって観察すると、形の上である定常状態をしめす。-定常状態が細胞・組織・器官など様々な階層で存在しているために、形の上での定常性がその結果生じる。それすなわち形態である。」動的平衡状態にあるその総体が形態なのだと言う意見はまさに事物連関型の建築の姿に思える。解剖学からこの概念に触れられるとは思っておらず、なんだか嬉しい。
その他にも普段はよく考えないが、言われてみるとそうだなと思ってしまう形態への知識が書かれていて面白かった。