【感想・ネタバレ】形を読む 生物の形態をめぐってのレビュー

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Posted by ブクログ

養老孟司の著書で、一冊の本として書かれたものの中では、いちばん最初に書かれた本。形態学が主題となっており、ふつうこうした専門分野について科学者に語らせると、門外漢には珍紛漢紛といったことになりかねないのがオチだが、そうした弊に陥らずに読者を惹きつけられる文章力は、さすがというほかない。それを可能にしているのがおそらく、人並み外れた読書量であろう。行間からその広範なバックグラウンドを感じる。終章はのちの『唯脳論』に結実する思考の萌芽が見られ、著者の理論形成を読み解く上でも見逃せない一冊。
なお、この本が書かれたとき、養老さんはすでに四十九歳、そこから『唯脳論』までにはさらに三年を要している。それを思うと、人生はまだこれからと、勇気づけられる気がする。

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

養老先生が解剖学者として考えてきた生物を対象とした形態学。生物の形を研究する過程でその後の著作につながるアイデアがいろいろ出て来たとのこと。それらは、例えば「唯脳論」「バカの壁」「遺言」などにつながる。

以下気になったところを記す。

形は客体のように見えて客体ではない。脳科学的には、情動ですら客観的な基準がない。まして、人の考えや思想に客観的基準があるわけがない。したがい、諸科学に普遍性はない。自分の考えを記すのは個人的作業。

「多様性は剰余から生まれる」・・・なるほど、すごく新鮮。

形は、意味を考えなければ、意味がない。
形の意味は、生物の場合、①数学的・機械的、②機能的、③発生的、④進化的な諸観点から考えられる。

①数学的には:幾何、機械的には:構造と力学
②機能的には:機能解剖学:「構造」は「機能」を考えるとわかりやすい。
③発生的には:発生自体が形の変化そのもの
④進化的には:進化の実際がどうであったか

問いと答え
・形に意味を与えるのは形を読みとる人間だとして、どのように意味を与えればよいと養老先生は考えるのか
→基本は4つの仕切り。主観の数を数え上げたのが上記の4つ。主観の内容は異なれど、主観の「形式」は、しばしば繰りかえす

・意味を与える側の人間が異なる見方をするのだとすると見方の違い(バカの壁)はどう乗り越えたらよいのか
→乗り越えられない

・養老先生としては、形にまつわる認識論的見方を生物以外にどう拡張してきたか
→考え方としては、画像と言葉などを同様に含む

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2021年03月10日

Posted by ブクログ

著者の単行本としては最初の著作を文庫化したものです。東京大学の解剖学教室に勤めていた著者が、「科学とはなにか」「形とはなにか」「解剖学とはなにか」といった問いについて考察するなかではぐくまれた思想が提示されています。

科学的客観性を信奉するひとは、科学的探求活動をおこなっているのが「自分」であるということを、しばしば忘却していると著者は指摘します。そして、「自分」と「自然」の両方があって科学という営みが成立することを、著者の専門である解剖学から例を引きつつ説明しています。著者が紹介しているのは、解剖学における四つの説明のしかたで、機械論的説明、機能による説明、発生による説明、進化による説明です。そのうえで著者は、生物の形態とその意味を理解するという解剖学の営みについて考察を進めています。

本書中にすでに「馬鹿の壁」という表現が登場しており、これがベスト・セラーとなった『バカの壁』(2003年、新潮新書)へとつながっていくことになります。

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2024年04月19日

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