あらすじ
日本初の全文訳・訳註付『赤毛のアン』シリーズ第5巻
アン25歳、グリーン・ゲイブルズの果樹園で、ギルバートと結婚。
フォー・ウィンズ(Four Winds)の海辺で、夢の家に暮らす。
運命に翻弄される美女レスリー、昔の恋人を想い続けるジム船長、男嫌いのミス・コーネリアと心を通わせ、迷える人々を照らす灯台となる。そして母になるアンの喜びと哀しみ、永遠の別れ……。人を愛する心の尊さを描く大人の傑作小説。
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久しぶりにアンと再会。夢見る夢子、妄想少女だと思っていたあの子が成長し、ギルバートと結婚するんだ。アンがグリーンズ・ゲイブルズを去るなんて、マリラのもとから離れていくなんてという寂しさも束の間、新たな地での新たな出会いに惹きつけられる。大人としての悲喜交々が連なるけれど、大人になっても子どものような純真さと豊かな想像力が自らの、そして関わる人たちの心に光をあてる。灯台守のジム船長、あなたほどアンの友人として相応しい人はいないでしょう。慈悲深い昔語りをもって、彼女や彼女の友の窮地を救う。永遠の航海に幸あれ。
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赤毛のアンシリーズ
ギルと結婚式から始まり、新婚生活がアボンリーから遠く離れた街で始まる。
思い描いていた小さな家、夢の家に、花に囲まれた花壇、楽しい隣人、プリンスエドワード島の海辺での生活。
アン夫妻が住む前の家にまつわる話をジム船長から聞き、さらに家が好きになるアン、隣人の美しいレスリーの悲しい身の上、幸せいっぱいのアンに起こる悲しい出来事、
レスリーとの友情、アンの物語は特別な出来事ではなく、どの時代でもどこの国でもありそうで、共感するところが多い。
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アンがギルバートと結婚してアンの理想通りの夢の家に住む。正に絵に書いたような進展ではあるが、悲劇もまたもたらされる。
これは作者モンゴメリの体験した事実に基づいている。こんなことが起きるとは。この悲劇により「アン」がより現実味を帯びた存在に感じられます。
アンと美女レスリーの交流も複雑で興味深い。
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アンは25歳でギルバートと結婚し、海辺の「夢の家」で新婚生活を始める。ジム船長やミス・コーネリア、レスリーなど、個性豊かで魅力的な人たちが登場。中でもレスリーは、アンとの境遇の違いから劣等感や孤独感を抱き、時には冷たい態度をとってしまう。そんな姿に人間の弱さや苦さを感じつつも、同時にとても人間らしいなと思った。一方で、アンとギルバートはこれまで以上に幸せいっぱいで、二人の世界が本当に微笑ましい。でも、喜びや幸せだけじゃなく、悲しい別れもあって、しっかりと読み応えのある一冊だった。
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再読。『赤毛のアン』シリーズ5巻目。
松本侑子さん訳の新刊は表紙がかわいらしくて好きです。
アンとギルバートの新婚生活、二人の夢の家編です。
ジム船長やミス・コーネリア、隣人で悲運の美女レスリー等、新しい登場人物も魅力たっぷりです。
レスリーにとってはアン達が引っ越してきたことは辛いことだったろうと思います。結果的にはアン達がきたことによってレスリーの幸福に繋がるのだけれど、自分が絶対持てないものを全て持っているアンに複雑な思いを抱くのは仕方ないことでしょう。
アンにも悲しい出来事があって、二人は真に心を通わせます。そしてレスリーも本来の姿に戻っていきます。
そしてアンとギルバートに新しい家族が出来て、手狭になった夢の家から去る日が来るのでした。
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ギルバートと結婚したアンは海辺の家に暮らす。夢に描いていた憧れの家に。ちょっと離れているけれど、ご近所の方々とも仲良くお付き合いしていく。新しい、大切な心の友を得るが、失うものもある。
ジム船長を知ることができてとても嬉しい。
ジョイもマーガレットも船長と一緒にいますよね、今は
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松本侑子訳アンシリーズ第5巻。
原題『Anne’s House of Dreams』。1917年の作品。
アンとギルバートの新婚時代。
※
訳者の松本侑子さんがアニメ『アン・シャーリー』に「アンはピンクの服は着ない。私に監修させて」とコメントしてちょっと話題になりましたね。
気持ちはわからなくもないですが、新しいものを作ろうとしている人たちをあまり困らせなくてもと思います。ちなみに私は絶賛されている高畑勲版も「私のイメージしているアンじゃない」と思ってます。みんなそれぞれ心にアンがいるのよ。
今回も100ページを超える注釈と解説がついていて圧巻です。
最大の功績は、今回の舞台フォー・ウィンズが現在のニュー・ロンドン湾がモデルだと解明していることでしょう。
モンゴメリは自分の両親が新婚時代を過ごした土地を、アンとギルバートの新婚の地にしているわけですね。これは胸熱。
巻頭に地図とケイプ・トライオン灯台、セント・ローレンス湾、砂州などの写真が掲載。
これによって初めて「フォー・ウィンズに長く伸びる砂州」の風景が具体的にイメージできました。
「内海」という訳には最後まで慣れませんでしたが、夢の家が町の中心からは馬車でぐるっと回るか、小船で渡るしかない人里離れた場所にあることがわかります。
レスリー・ムーアはアンシリーズのなかでも屈指の悲劇的美女でドラマチックな展開も大好きだったんですが、今回あらためて松本侑子訳で読んでみると、全体的にはすごく寂しさが漂います。
それは夢の家が人里離れた場所にあり、遠くまで出歩くことのできないアンと交流するのが、ジム船長、ミス・コーネリア、レスリーと限られた隣人だけであること、灯台と海が見える景色は美しいけれど孤独であること、全体を通して生と死が描かれていることがあるかと思います。
この物語で「フォー・ウィンズ湾に長く伸びる砂州」はあの世とこの世の境で、新しい生命は砂州を越えてやってきて、魂は砂州を越えて海の向こうへ帰っていくんですね。
フォー・ウィンズの風景描写は特に詩的で、子供の頃の私がこれを適当に読み飛ばした可能性はありますが、村岡花子訳で読んでいたときとはだいぶ夢の家のイメージが変わりました。
(82ページ)
荘厳にして穏やかな静けさが、あたりの陸と海と空に広がっていた。頭上には、銀色にきらりと光る鴎が高く飛んでいた。水平線には、レースにも似た儚い桃色の雲が浮かんでいた。静まりかえった大気には、風と波という吟遊詩人の囁きのくり返し(リフレーン)が糸のように織りこまれていた。内海の手前には秋模様のまき場にもやがかかり、薄紫のアスターの花々が風に揺れていた。
甘さよりも人生の辛さが感じられるアンとギルバートの新婚時代ですが、ギルバートが「アンお嬢さん」と呼んでいるのが新婚っぽいです。
英語でなんて言っているのか確認したら「Anne-girl」なんですね。
全文を確認したわけではないですが、村岡花子訳『アンの夢の家』ではこの呼び方は訳されていません。
『炉辺荘のアン』で母となり、もう若くないアンがジェラシーを抱いた時、ギルバートが再び「アンお嬢さん」と呼ぶんですが、これはギルバートにとってアンは新婚時代からずっと変わらないよという意味だったんですね!
「きみは、ぼくと一緒に、ちゃんとここにいてもらうよ、アンお嬢さん」
以下、引用。
21
「アンには、木綿糸で編んだベットカバーを贈りますよ」夫人はふたたび話し始めた。「煙草縞のと林檎の葉模様のと。アンが言うには、あれがまたたいそう流行ってるそうな。まあ、流行だろうがなかろうが、きれいな林檎の葉模様のベットカバーをかけた客用寝室ほど立派なものはありませんからね、まったくのところ。あれをさらして、白くしとかなくちゃね。トーマスが死んでから、木綿の袋に入れて口を縫っといたもんだから、きっとひどい色になっているよ。だけどまだひと月もあるから、夜露にあてると見違えるほどきれいになるよ」
36
「あたしがうちの人に、『トム、ミス・シャーリーのお式に行ってもいいですか? どのみち行くつもりだけども、あんたに承諾してもらいたいんで』って言いましたら、うちの人が言うことには、『おまえの気にいるようにおし、シャーロッタ、そうすりゃ、おれも気に入るからな』と、こうですよ。こうした亭主こそ、持って気持ちのいいものですね、シャーリーお嬢様」
38
「マリアもわたくしも結婚したことはございませんが、ほかの方々がなさることに異論はございません。」
82
「きみは、ぼくと一緒に、ちゃんとここにいてもらうよ、アンお嬢さん」
94
「あの牧師の奥さんは、服が派手だと考える者もおりますが、あたしに言わせりゃ、あんな墓石みたいな顔と暮らすんですから、気の晴れるものが要りますよ。」
131
「あたしは女同士は助けあうべしという考えです。男どもに耐えなきゃなりませんからね。」
155
「暗闇は、わしらの近くにあるときは友だちですわい。ところが遠ざけると……ランタンの火をつけて、暗闇と縁を切ると……敵になるんですわい。」
163
「だがな、コーネリア、おまえさんも知っての通り、男心をつかむには胃袋からと言いますぞ」ジム船長が説いた。
「そうですよ……男に心があればの話ですけど」ミス・コーネリアはやり返した。
165
「あれの兄さんのエレファレットは、悪魔がいつも自分のそばにいるって妄想してたんです……でも悪魔があんな男のためにわざわざ時間を無駄にするとは、あたしはとても思えませんよ」
169
「そのうち男たちは、自分たちじゃどうしようもないほど世界を滅茶苦茶にしてしまったと気づいて、女にも喜んで投票権を与えて、厄介事を押しつけますよ。」
181
一同は暖炉をかこみ、旧い年の最後の一時間を静かにすごした。十二時まであと数分となると、ジム船長は立ちあがり、扉を開けた。
「新年を、なかに招き入れねばなりません」
195
「小さな皺の寄った茶色の種を見て、このなかに虹みたいに色んな色が入っていると思うと、いつも不思議を感じるですて」ジム船長が言った。「種についてよく考えてみると、わしらにはあの世でも生きていく魂があると信じるのも、難しくはないです。種の奇跡を見たことがなければ、こんなにちっぽけな、埃の粒ほどのなかに、色や匂いはもとより、命まで入ってるとは信じられぬことでしょう」
222
「ほかの女の人が幸せだというだけで憎らしく思うなんて……他人が幸せだからといって、自分が何かを奪われるわけでもないのに!」
283
「気がふさぐ時は死亡記事をお読みなさい、アンや……とくに知ってる人のをね。ユーモアのセンスが少しでもあれば気が晴れますから、ほんとですよ。」
336
「マリラ、若い紳士が到着しました。あなたにお報せするよう、アンに頼まれたんです。大した荷物は持っていませんが、どうやら長居をするようです」
377
「花嫁は亡くなってもう三十年になりますが、今でも夏が来るたびに、その花たちが咲くのです。」
423
心霊研究 psychical research は、現在はオカルト的な領域とされるが、十九世紀半ばから二十世紀前半にかけては学問として研究され、トランス状態の霊媒によって、死者の魂と交流して死後の世界を明らかにしようと試みられた。
426
お針の会 thimble party 「指貫の集まり」。女性が集まり縫い物をしながら語らう。