あらすじ
第28回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
民俗学者・宮本常一の人と業績を、財界人・渋沢敬三との交流から描いた傑作評伝。
日本中の村と島を歩き尽くした男がいた――。
瀬戸内海の貧しい島で生まれ、日本列島を隅から隅まで旅し、柳田国男以来最大の業績を上げた民俗学者・宮本常一。
「日本資本主義の父」渋沢栄一の孫として生まれ、財界人として活動する一方で、パトロンとして物心両面で宮本を支え続けた渋沢敬三。
対照的なふたりの30年に及ぶ交流を描き、宮本民俗学の輝かしい業績に改めて光を当てた傑作評伝。
第28回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
解説・稲泉連
電子書籍化にあたり、新稿「素晴しき「助平」たち――渋沢栄一と宮本常一」を収録した。
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Posted by ブクログ
どうやら宮本常一という人がいたらしく、
一部の人、特に土地の歴史や地理への研究志向を持つ
中高年の男性に、宮本常一ファンが多い気がする。
地域づくりを志し、ライフワークとしている方々と話しをすると、
たまに「私は宮本常一の信徒だ」と、出会って少し時間が経ってから自己開示する方に出会う。
私も土地と人の関係に興味がありそれを仕事でも追究する身として、
まあ、行きつくべくして宮本常一に行きついた。
氏の書いた本を読むと、人々の生活がどのような背景で営まれ、変わってきたかを、氏の足と目で感じ取ったままの情報で読み取れる。例えば、山と平地の境目あたりの集落の民家に干してある洗濯物の様子から、どのような暮らしや生業、経済的な営みがあるのかを推察し、その家に暮らす家族の日々をありありと読者の網膜に結像させる、そんな本だ。
この「旅する巨人」は、
宮本氏自身について、少しメタ的に、その人生を追ったものであり、渋沢敬三というパトロンあっての宮本常一だったのだ、ということが分かる。6割方、渋沢敬三の偉大さがにじみ出る本ではないか。
読めばよむほど、従前は巨人・鉄人だと思っていた宮本氏が
実は繊細でか弱く、体調も崩しがちで、しかしゆるぎない強靭な意志で日本全国を歩いた、ということを知ることができた。
そして、渋沢敬三である。彼こそが巨人であると思った。
このような人が、現代にいるのだろうか?
いてほしい。