あらすじ
大阪市近郊にある暁町。閉店が決まった「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが突然失踪した。かと思いきや、町のあちこちに出没し、人助けをしているという。いったいなぜ――? さまざまな葛藤を抱えながら今日も頑張る人たちに寄りそう、心にやさしい明かりをともす13の物語。
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Posted by ブクログ
☆3.5
癒やされる本、のような検索をかけて行き着いた作品だったと思う。
のだが個人的には毒親やらモラハラ夫・妻やらそんな家庭で育った人の歪みの連鎖やらがリアル過ぎてもうグロテスクという単語が浮かぶくらいだった。それくらい生々しくて『癒やしはどこだーーー!!!』と思いながら読み進めた部分も多々あった。
決定的な虐待とか暴行とか、目に見える放置とか、そういう他人の介入の隙が少しはある(とは言え難しいのが現実だけども)歪み方ではなくて表向き良い親子・良い家庭みたいな有り様の内側で生皮を剥がれたまま生かされているような、中には本人さえそれに気付いていないいわば洗脳状態の中にあるような、そういう人間関係の構造を書くのが巧すぎて気持ち悪かった(あえてこの表現を使う)。
自分の人生や親族と被る場面もあってその面でも非常にヘビーだった。読む人によってこの重たさはかなり変わってくると思う。
ただ、感動作と推されている作品であってバッドエンドは無いし(エンドというかこれからもみんなが生きていく感じ)、傷やノイズだらけの毎日の中で一縷の希望を見たり実は開けることの出来た扉があったと気付いたりする、そういうまとめ方をしている。
とは言え個人的にはダメージの方が大きく、二度目は読めないと思う。でも最後まで読んで良かった。変に感動的過ぎないけれど人間らしいタフさも感じられる。でもやっぱり重たさと傷の方が強く残る。
3分の1過ぎたあたりの『声の色』くらいから面白さを感じてきて、特に浦上くんが読んでいて心地良いキャラクタをしていた。声に色を感じる山口さんが言うように透明で色を持たない、という色合いを持つ人に感じられた。涼やかだった。
短編として好きなのは『青いハワイ』と『生きる私たちのためのスープ』。どちらも主要人物が強い毒に晒されるシーンはほぼ無いし、大人ならではの気遣いを持って周りと関係を築いているのが良かった。ひとつ壁を打ち破る、ひとつ報われる、その終わり方も塩梅が良い。
文体も整っていてくどくなく読みやすい。時折、回想なのか現在なのかごっちゃになるシーンはあるが読み進めても分からんということはない。
本来読みやすい作家なのだと思うが他作品も古い価値観や男女・普通・常識・体裁みたいなテーマが多いようで、特に毒親をこの感じで描かれると体力がもたないのでしばらくはまた読もうとは思えない作家だった。終盤に見出される希望で充分心が温まると感じられるなら楽しめるのかなと思う。