あらすじ
2次予選での課題曲「春と修羅」。この現代曲をどう弾くかが3次予選に進めるか否かの分かれ道だった。マサルの演奏は素晴らしかった。が、明石は自分の「春と修羅」に自信を持ち、勝算を感じていた……。12人が残る3次(リサイタル形式)、6人しか選ばれない本選(オーケストラとの協奏曲)に勝ち進むのは誰か。そして優勝を手にするのは――。
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Posted by ブクログ
表現が細かく、上巻以上に物語に引き込まれた。自分がこのコンクールの観客やスタッフにでもなったんじゃないかというくらい。3次予選の結果発表の時間になってもなかなか審査員が来ないというシーンは読んでいた自分もハラハラドキドキした。
本選が亜夜のこれから演奏するというシーンで描き終わっていて、審査員の2人の会話で結果と後日談みたいな感じで終わっていたのが良かった。これからの亜夜、マサル、塵、奏、明石たちの道がのびてるという感じがした。(もちろん審査員2人のこれからも)
コンクールで使われた曲が一覧になっているので、探して聴いてみようと思う。
Posted by ブクログ
夜のピクニックから二冊目の恩田陸作品。
作中に事件を起こさないことを美徳としているとしか思えないくらい、ストーリー上ではただただコンテストが進み、コンテスタントと関係者が交流し、次の審査が行われるだけである。申し訳程度に"失格"のくだりが存在するが、まさに申し訳程度だ。
では何故これほどに"読めて"しまうのか。これは明らかに描写による力だ。
音楽の持つ影響力を過度に装飾するでもなく、ただ演奏家の心的な動きと、演奏と楽曲の描写のみでこの作品は成り立つ。
そしてその筆力のみで圧倒的な読者をつけてしまう恩田陸の小説自体が、この作品に登場する天才による業となんら遜色ない奇跡であることが、彼らの演奏のリアリティに寄り添う。