【感想・ネタバレ】アクティブラーニング 学校教育の理想と現実のレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2018年06月15日

 本書は、教育現場を席巻する「アクティブラーニング」の、これで生徒は主体的・能動的に学ぶようになる「はず」、生きる力が高まる「はず」という前提を、本当にそうなのかどうか検証し、大正時代、戦時下、戦後、平成以降と教育史をたどりながら、「アクティブラーニング」が強力に推進される背景について考察した本であ...続きを読むる。
 「アクティブラーニング」という言葉は現在、公式には使われておらず、「主体的・対話的で深い学び」と言い換えられているが、考えてみると「主体的」と「深い」は、実は何も言っていないに等しい。「主体的」も「深い」も、目指すべき望ましい学びに決まっているからである。「隷属的で浅い学び」など「学び」ではない。この2語はあらゆる時代の教育に普遍的に通用し、学びの方法について言及しているわけではないので、とりあえず無視するべきだろう。残るは「対話的」であるが、これについて著者は興味深いテータを紹介している。
 2012年の国際学習到達度調査PISAで、数学の授業において、問題解決のためのグループワークをどれくらい行っているかが尋ねられた。実はこの質問に「まったく/めったにない」と答えた生徒の割合が高い国ほど、数学的リテラシーの平均点が高い。例えば、「まったく/めったにない」の割合が71.7%のアクティブラーニング後進国日本が7位であるのに対し、割合が17.7%のアクティブラーニング発祥国アメリカは、36位だった。PISAの高得点で注目されたフィンランドも、「対話的」であるはずのグループワークには積極的ではない。
 なんのことはない、つまり、教える側から見た場合、教える事項、教材、教える環境、対象等、様々な条件によって、最良の指導法が決まる。対話的な方法が有効な場合ももちろんあるし、教える者が説いて聞かせる授業形式が最善な場合もある。至極当然だが、それだけのことだ。そもそも、人の話を真剣に聴くという行動は、極めて「アクティブ」であるはずだ。
 こんなことは教える側にも学ぶ側にも自明であるにもかかわらず、現在この国が「アクティブ」「アクティブ」と呪文のように連呼するのはなぜか。背景には何があるのか、その考察が本書の白眉である。詳しくは是非本書を読んでほしいが、いつの時代も「アクティブラーニング」的な指導法は推奨されていた。「アクティブラーニング」の対極にあるとつい考えがちな、戦前・戦時中においても、である。

 注入主義の教育を排し、「常に自ら進んで学習せんとする強き興味と習慣を養うこと」

 まさに「アクティブラーニング」だが、これは1938年12月の教育審議会の答申「国民学校ニ関スル要綱」の文言である。戦時体制下の教育でも、一方的な知識の注入は非とされ、「アクティブ」な作業や体験を通して、主体的、自発的に学ぶ生徒の育成が目指されていた。ただしそれは、生徒を「皇国ノ道ニ帰一セシメ」るためであり、そのためには生徒に、無理矢理やらされているのではなく、自ら望んで、進んでそうしているという感覚を持たせることが必要だからであった。この図式を現代にあてはめて考えてみると、見えてくることがある。「アクティブラーニング」が教育界ではなく、経済界の要請で始まったことを忘れてはならない。
 本書は、本物の教育関係者必読の本である。教育関係者のみならず、一人でも多くの人に読んでもらいたい。特に、あまりものを考えないように躾けられている若い教員が、本書を「アクティブラーニング」の指南書と勘違いして手に取り、読み通してくれることを願う。

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Posted by ブクログ 2018年10月06日

昨今話題のアクティブ・ラーニング。
本書は、その理念に一定の理解を示しつつも、現在の教育改革で無批判に期待されていることに警鐘を鳴らしている。
大学入試改革まで巻き込む(そして大混乱している)今の状況に照らして、タイムリーな出版だ。

大正新教育や、戦後新教育での〈前史〉を遡ると、方法論としての難し...続きを読むさがはっきりわかる。
一つは理想的に学べる学習者と、そうでない学習者の格差が開いていくこと。
特に初等教育での学びに向かう力は、家庭環境の差でもあるとすれば、社会の格差拡大を促進してしまう。
もう一つは教師の負担の大きさ。
教師が一人一人の学習に適切な援助をしていくには、準備と時間が必要。
なのに、現在、教師の負担は増える一方で、アクティブ・ラーニングを導入しても成果が上がるか。

こういった構造的な問題を抱えての、現在の教育改革、なにか失敗する気しかしない。
欲を言えば、ではどうすればいいか、という糸口が見えるといいな、と思うけれど。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年05月17日

<目次>
はじめに
第1章  アクティブラーニング/主体的・対話的で深い学びとは何か
第2章  近代教育史の「アクティブラーニング」~大正新教育・戦時下教育
第3章  戦後教育史の「アクティブラーニング」~戦後新教育・民間教育研究運動
第4章  平成教育史の「アクティブラーニング」~新しい学力観・総...続きを読む合的な学習の時間
第5章  未来のアクティラーニングに向けて

<内容>
やや前半は重い。ただ読み終わると、大正期から戦前にも似たような動きがあったことがわかる。そして、辛辣な第5章。「アクティブラーニング」の問題点をきちんと指摘する。自分でも思っていた、基礎学力のないところで「アクティブラーニング」をやることの功罪。もっと怖いのは、「アクティブラーニング」は時の権力者に利用されやすいということ。確かに現在の「アクティブラーニング」の本で、批判的思考(クリティカルシンキング)についてはほとんど書かれていない。それからうれしかったのは、「アクティブラーニング」は上手くいかなくても、教師の力量ではない可能性を指摘してくれていること。生徒の向きが前向きでないと、「アクティブラーニング」は上手くいかないのだ。

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購入済み

政治の話題が多いように感じます

kawa 2020年06月25日

アクティブラーニングが、全体主義、ファシズムにつながるという著者の危惧を強く感じました。日本のアクティブラーニングで扱うのは、政治と道徳だけなのでしょうか?
主体的対話的な学習については、何をもって主体的対話的とするのかを、幅を広げればいいのではないでしょうか。自分との対話も対話ですし。アクティブラ...続きを読むーニングの定義を狭くして、わざわざ極端な実践例を並べて持論を展開しているという印象を受けました。
アクティブラーニングを絶賛するのも単純ですし、負の面を並べて政治的な意見を潜り混ませるのも、あまりいいやり方ではないように思います。

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Posted by ブクログ 2019年09月23日

2020年教育改革の先はバラ色の未来なのか?学力は向上するのか?学力格差はどうなるのか?学校や教師の負担は?新しい大学入試は?“学び”の近現代史を辿り、教育改革を疑う。

新しい動きが取り入れるたびに、現場はてんてこ舞いになる。「主体的、対話的で深い学び」は、最終的に授業改善の視点として位置づけら...続きを読むれた。それならそれで、粛々と進めていくしかないのだが。

近現代史の部分は、もう少し丁寧に学んでみたい。

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