あらすじ
アリストテレスによって弁論術・詩学として集成され、近代ヨーロッパに受け継がれたレトリックは、言語に説得効果と美的効果を与えようという技術体系であった。著者は、さまざまの具体例によって、日本人の立場で在来の修辞学に検討を加え、「ことばのあや」とも呼ばれるレトリックに、新しい創造的認識のメカニズムを探り当てた。日本人の言語感覚を活性化して、発見的思考への視点をひらく好著。
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Posted by ブクログ
レトリックは、私たちの言語感覚の深いところにひそみ馴染んでいるというのがよく分かる本だった。
世の中にはいろいろな言葉があるけれど、そうした標準化された既成の言葉を使って、人の数だけある個々の現実、それも時々刻々と変化するものを表現するのは、思っている以上に挑戦的な試みなのだと思わされる。
新しい認識を聞き手と共有するために比喩表現を用いたり、どう言っても虚偽の混じりそうな言葉をあえて誇張して聞き手の理解を求めてみたり、緩叙法では肯定否定の比較を通して心情の流動性までも表したり。そうした工夫が至る所でごく自然に行われているのだから、驚いてしまう。