【感想・ネタバレ】阿蘭陀西鶴のレビュー

あらすじ

江戸前期を代表する作家・井原西鶴。彼の娘おあいは、盲目の身ながら、亡き母に代わり料理も裁縫もこなす。一方、西鶴は、手前勝手でええ格好しぃで自慢たれ。傍迷惑な父親と思っていたおあいだったが、『好色一代男』の朗読を聞いて、父への想いが変わり始める。小説を読む歓びに満ちた、織田作之助賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

井原西鶴と盲目の娘おあいの物語。
あー、こういう親父いるわ、と思いながら、嫌でたまらなくても、その親の面倒を見るのはおあい。
俳人でありながら、俳句ではなく草子ものが当たってしまい、その間に天才芭蕉が西鶴の先をいってしまう。
巻き込まれる娘はたまらないよなぁと思いながら、それでも私もあおいと同じ事をするのだろうと思う。
切なくて、あったかくて、最後に泣かされなんて、もう朝井まかてさんはずるい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

0
2020年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

西鶴の盲目の娘「おあい」からの視点で描いた井原西鶴。
最初の部分は、「おあい」は父親の西鶴の人となりに対して、常に嫌悪感をいだき、それが読者にも伝播し、途中で読むのを止めようかなと思ったほどだった。
人を集めてはお山の大将になり、ひときわ騒がしく、人間の欲望の厭らしさを凝縮したような西鶴が、時を経るに従い、特に俳諧で身を立てようとした西鶴が、草双紙の戯作者へと変貌する当りから、娘の「おあい」は、血の通った情の厚い父親として見直していく。

同時代に活躍した俳諧の西山宗因、其角、芭蕉や、浄瑠璃作者の近松門左衛門などが登場し、この時代に興味をそそられる。

特に、芭蕉は西鶴を厳しく批判し、「点者として見当はずれなことを言い散らして、句の良し悪しをちゃんと判じておらぬ。西鶴は、俳諧をまるでわかっていない」、そしてこう批判したのである。「阿蘭陀西鶴、浅ましく下れり」
それに対して、西鶴は「わしが浅ましゅうなったやと。阿呆か。この阿蘭陀西鶴、名乗りを上げたその日ぃから、さもしゅうて下劣な輩やと自ら触れてあるわい。つつくんはそこか。違うやろ。せっかく町人の、俗の楽しみになったもんをわざわざ難しゅうして、皆が手ぇの届かん排風に祀り上げてんのは己やないかい。ああ、なるほど、お前はんは清いわ、尊いわ、言葉に凝りに凝って磨きをかけて、これが芭蕉の句ぅでござい、はっ、それが何やっちゅうねん。小っちゃい言葉の端切れにこだわって、理詰めにあれこれ判じて。それが一体、何になる。凝り性の澄まし屋がっ。俳諧が何ぼのもんじゃい」

この西鶴の言葉は、著者が一番西鶴の人となりを表現しているような気がする。
また大阪弁を使うことで、より俗っぽい人柄を表している。
そして、西鶴の芭蕉への批判が俳諧そのものへの決別となってゆく。

話が脱線するが、私の好きな大岡信は、その著書「百人百句」に、百人の俳人の一人として「井原西鶴」を取り上げている。以下「百人百句」からの引用。
代表句として、
・長持へ春ぞくれ行く衣更
西鶴は、西山宗因の門の談林派の新風における俊英だった。
一定時間に独吟連句の数を競う「俳諧大矢数」に長じ、42歳の時住吉神社で、一昼夜23500句独吟を興行、世間を驚倒させた。
(略)
井原西鶴といえば「好色一代男」「武道伝来記」「日本永代蔵」「世間胸算用」等の作品で、旧来の物語の伝統を破り、好色物や律儀な武家気質、あるいは町人のしたたかな経済生活を描いて、人間の欲望をいきいきと描写した近世最大の小説家である。
西鶴の小説の簡潔で勢いの強い文章は、俳諧の修行にその基礎があるともいえるだろう。

「おあい」の父への感情の変遷と同じように、最初に読み始めた時の西鶴への嫌悪感が、西鶴の人となりが分かるに従って、徐々に薄れ、そして小説の最後に来て、ちょっぴりと泣かせる、良い小説でした。

最後に付け足すと、前に読んだこの著者の葛飾北斎といい、上記の井原西鶴といい、浮世絵師や戯作者は、人気の割には貧乏で、この時代の社会的地位の低さがよく分かる。

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2017年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おもしろかったよ。ところどころ、日本文学史?風俗史?みたいで読んでてダレる部分もあったけど。目の見えないおあいが上手にお料理したり、家事を切り盛りする様子は情景が目に浮かぶようでした。
西鶴の不器用なおあいへの愛も微笑ましかった。
いいパートナーにめぐりあってほしかったけど、そうはうまくいかないよね

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2025年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〈人は同じ物事を目の前にしても、まるで違う景色を見る。わしはどないな悲恋でもそのまま書くことはない。どこかに人の滑稽さを見てしまうからや〉

父娘関係は普遍的問題。声や仕草だけでなく言葉まで腑に落ちなければ。

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2024年12月22日

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