あらすじ
堂シリーズはついにここまできたか 解説 村上貴史(ミステリ書評家) 謎の宗教団体・BT教団の施設だった二つの館の建つ伽藍島。リーマン予想解決に関わる講演会のため訪れた、放浪の数学者・十和田只人と天才・善知鳥(うとう)神、宮司兄妹。その夜、ともに招かれた数学者二人が不可能と思われる"瞬間移動"殺人の犠牲となる。秘められた不穏な物語がさらに動く"堂"シリーズ第四弾。
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Posted by ブクログ
堂シリーズ第4弾。
え!?えっ!?!?となるシリーズ折り返し地点の作品。
謎の人物:林田呂人によって伽藍島に集められた登場人物達。そこで起きる”ありえない”殺人事件、犯人は一体誰なのか?というストーリーだが、シリーズものの作品として大きな転換点を迎えた作品である。堂シリーズ特有のあり得ないトリックは健在で建物が動くのは今までのシリーズからの流れで想像できたものの、まさか島自体が動くというのは予想できなかったので、とても面白かったです。
そして何よりも今回の目玉はエピローグ後のある人物の”指摘”につきると思います。信用できない探偵役は数知れずだが、まさかシリーズものの中盤でこんな罠を仕掛けてくるとは思わなかった。これは直ぐに次の『教会堂の殺人』も読むしかないではないか!と思わされました。シリーズ転換点として読むべき作品ですので是非読んでみてください。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
十和田只人:津田健次郎
善知鳥神:種田梨沙
宮司司:細谷佳正
宮司百合子:長谷川育美
脇宇兵:興津和幸
小角田雄一郎:緒方賢一
品井秋:富永みーな
大石誉石:谷山紀章
常沢浄:木内秀信
Posted by ブクログ
こういうひっくり返し方、けっこう好みです。
推理が披露される場面で、あれここ説明ついてなくないか、というところをエピローグでちゃんと回収してさらにそこからこう来るとは。次回作待ち遠しい。
Posted by ブクログ
堂シリーズの折り返しから読むという罪を犯した感はある。当然だがシリーズで先のものを読むとネタバレされるわけで…しかし大変面白く読めた。天才たちが織り成すミステリーは気持ちが良い。
確かに数学的には正しいのだろうけど、それでもぶっ飛んだ建造物を使ったトリックは普通のミステリーには無いものだし、嘘だろ…?となる。こういったトリックが生まれる発想力が小説であることを抜きにでも本当にすごい。
今手持ちは本作のひとつ前の眼球堂。これも楽しみになった。
Posted by ブクログ
やけに数学の話をするな〜と思ったら、「前提を間違えると論理的には合っていても間違った結論に導かれる」というのを推理にも当てはめた作品。
探偵の言うことって無意識に信じてしまうけど、恣意的に与えられた前提を鵜呑みにしていないか?ということだよね
このあたりから、その作品自体の面白さはもちろんあるんだけど、シリーズ全体を通した謎に重きがおかれているように感じる。
リーマン定理は本当にあるのか?そのためには主人公も殺人に手を染めるのか……。
ていうか今回の建物が本当にやばい 水平方向の回転じゃなくて垂直方向っていいんだ……
確かに早贄にしようとしたより、上から落ちてきたみたいな姿勢だったけど、その回転は思いつかないよー
Posted by ブクログ
○ 総合評価
堂シリーズの4作目。このシリーズの解決編から雰囲気が変わる。具体的には,伽藍堂の殺人では,これまでシリーズで探偵役を務めていた十和田只人が犯人。十和田只人が,シリーズの黒幕である藤衛の指示を受けて,伽藍島の管理人だった品井秋を利用して連続殺人事件を実行した。
善知鳥神が犯人であり,ハウダニットのミステリと見せかけて,真犯人は十和田只人。これはサプライズではあるが,シリーズの探偵役である人物を犯人にするというのは,いわば禁じ手。サプライズはそれなりにある。しかし,驚愕の真相というほどのサプライズではなく,どこか予想できる展開。それは,善知鳥神と十和田只人のキャラクターがややぶれだしている点からも感じられた。
物語の背景として,リーマン予想やバナッハ・タルキスのパラドックスといった数学のうんちくが披露される。個人的には,こういった数学のうんちくは好き。ただ,こういった数学のうんちくがそれほど面白く描かれていない。特に,リーマン予想は物語の鍵になっている。十和田只人は,ザ・ブックの内容を知るために,リーマン予想を解いたという藤衛の指示に従っており,エピローグでの十和田只人のセリフには「真実に逆らう二人の博士を重力の贄にした。」といったセリフがある。要はリーマン予想の解を藤衛から聞くために,十和田只人が殺人をしたということ。殺人の動機にまでなっている。「リーマン予想は今日,あるいは宇宙そのものの神秘をも明らかにする予想なのではないか,という見方をされることがある。」とまで書かれているが,リーマン予想にそこまでの価値があるということが,物語から伝わってこない。「リーマン予想にはそれだけの価値がある。」と書かれても伝わらない。そう感じさせるような描写がほしいが,そういった描写をするだけの筆力が周木律にはないように感じる。
伽藍堂の殺人では2つの殺人事件が起こる。トリックは,伽藍島が人工的に作られた浮島であり,平面図上で回転するというもの。このトリックはダイナミックであり,バカミス的であるが面白い。さらに島の回転に併せて,伽藍堂も回転する。もともと,BT教団の教祖である昇待蘭童の瞬間移動の奇蹟のために作られたという設定である。
十和田只人は善知鳥神が犯人であるという推理をする。その推理の欠陥を宮司百合子が見つけ,真犯人が十和田只人であると指摘する。これがシリーズ物でなければ,納得はしやすい展開だったと思われるが,これまでのシリーズのお約束を打ち破る展開。善知鳥神が犯人・黒幕と見せかけて,善知鳥神がミスディレクション。犯人は十和田只人だという展開。先にも述べたがいわば禁じ手。禁じ手を使っているにもかかわらず,驚愕というほど驚けなかった。淡々と話が進むし,真の黒幕として存在する藤衛の存在が原因だろう。また,これまでの十和田只人の超然とした雰囲気がなくなり,藤衛からザ・ブックの内容,リーマン予想の解を聞こうとしている小物という雰囲気に成り下がってしまった。
ミステリとしては,伽藍堂が回転するというダイナミックでバカミス的なトリックはそれなりに面白い。シリーズ探偵が犯人という展開もサプライズではあるのだが…十和田只人が単なる小物になってしまっているという展開はマイナス。総合的に見て,★3のデキ
○ サプライズ ★★★☆☆
シリーズ探偵を犯人にしたのだから,もっと驚かしてほしかった。それほど驚けなかったのは,十和田只人のキャラクターが変化し,小物だと感じてしまったからだろう。描き方次第ではもっと驚けたはず。もっと驚ければ評価も上がったのだが…。
○ 熱中度 ★★☆☆☆
それなりに長い作品だが殺人は2つ。数学のうんちくなどで引き延ばしているが冗長に感じた。それほど熱中してよめなかった。
○ インパクト ★★★★☆
伽藍島と伽藍堂の2つが回るというトリックはインパクトがある。シリーズ探偵が犯人という点のインパクトはある。ただ,筆力がないために,そのインパクトを十二分に生かせていない。筆力がある島田荘司なんかが,このプロットで書いていたら傑作になっていたと思う。
○ キャラクター ★★☆☆☆
十和田忠人と善知鳥神のキャラクターがブレはじめている。宮司司と宮司百合子もイマイチキャラクターが定まらない。そのほかの人物は,相変わらずそれなりの学者が出ているが,天才だと感じられない描写。キャラクターの魅力はそれほどでもない。