あらすじ
メフィスト賞受賞シリーズ第三弾! 有り得ぬ館と哲学者の遺言とが惨劇を呼ぶ。放浪の数学者、十和田只人は美しき天才、善知鳥神に導かれ第三の館へ。そこで見せられたものは起きたばかりの事件の映像――それは五覚堂に閉じ込められた哲学者、志田幾郎の一族と警察庁キャリア、宮司司の妹、百合子を襲う連続密室殺人だった。「既に起きた」事件に十和田はどう挑むのか。館&理系ミステリ第三弾!
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Posted by ブクログ
堂シリーズ第3弾。
5角形の館:五角堂を舞台に天才哲学者:志田幾郎の遺産相続のため招かれた11人の男女。そこで志田家の関係者が次々と殺害されていくという物語。今回は宮司の妹:百合子が殺人事件の探偵役として活躍し、もう一人の探偵役の十和田は善知鳥神から問題の出題のごとく、ビデオで見ながら推理していくというもの。今回も叙述トリックが使われており、悟の盲目設定や館が複数存在するなど驚かせる要素が多く面白かったです。今回の視点は百合子であるためわざわざ悟のことを語らないし、時計や光の違和感にも気づかないという所でとても読者に対してフェアだなと思いました。
トリックのトンデモ具合はいつもの通りだが、宮司警視正と十和田の隠された関係性や藤衛の出所など今後のシリーズ展開の布石のようなものが今回出てきたのでこれからのストーリーがますます楽しみになりました。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
十和田只人:津田健次郎
善知鳥神:種田梨沙
宮司司:細谷佳正
宮司百合子:長谷川育美
毒島:畠中祐
志田正胤:速水奨
湊万里:桑島法子
湊亮:高木渉
志田胤次:置鮎龍太郞
志田大人:梅田修一郎
小山内亜美:Lynn
志田三胤:菅生隆之
志田悟:松岡禎丞
辻和夫;銀河万丈
鬼丸八重:鈴木れい子
Posted by ブクログ
最初に出てくる地図がめちゃくちゃ対称だから、実は五覚堂は2個あるみたいなオチなんだろうな〜と思ってたら、予想を超えてきた まだあるんかい
あと建物の仕掛けがどんどんすごくなっていく そんな物理的に密室じゃないことあるんだ 動くんだ
Posted by ブクログ
うーん、まぁまぁかな…。
トリックが雑?大胆?な感じがして、あまりおーっ!とはならない。無理やりすぎる。
これは個人的な好みの問題だが、そもそも数学にそこまで惹かれない。笑 というかよくわからない。
登場人物もあまり魅力的に感じられず、この人たちの推理や人間模様をもっと見たい!とはならない。
綾辻さんの館シリーズの方が洗練されているし読みごたえあるなと思ってしまった。
Posted by ブクログ
○ 総合評価
シリーズ第3弾。前作,双孔堂の殺人に出てきた警視庁警視正の宮司司と,その妹の宮司百合子が再登場。百合子は,同じゼミの志田悟と一緒に,志田悟の相続に立ち会うために,沼四郎が設計したという「五覚堂」に行く。
同じ頃,十和田只人は,善知鳥神に呼ばれ,五覚堂で起こった惨劇の映像を見せられる。善知鳥神は途中で去り,最後は宮司司と十和田只人が事件を解決する。
非常に凝った仕掛けがされた本格ミステリである。
まず,仕掛けられたトリックとして五覚堂が全部で5つ存在するというものがある。善知に呼ばれた十和田が映像を見ていた五覚堂以外にも4つの五覚堂が存在する。十和田が見ていた映像は,十和田がいた五覚堂で過去に起こっていた映像ではなく,別の五覚堂でリアルタイムに行われている惨劇だった。
次に叙述トリック。志田悟は盲目だった。志田悟が盲目であるということは,はっきりと書かれていない。最後に,犯人を絞る条件として,志田悟が盲目なので連続殺人を実行できないとして消去される。分かってみれば伏線はあり,そもそも百合子が悟の付添人として五覚堂に来たのは志田悟が盲目であったから。他にも改めて見ると志田悟が盲目だと分かる描写,伏線が仕掛けられている。
しかし,志田悟が盲目であったという叙述トリックが作品の中であまり効果的に生かされていないのが難点。読者を驚かしたいのは分かるが,消去法で犯人でないと推理する決め手にはなっているものの,作品の中でやや浮いている。というより,いろいろな要素を詰め込み過ぎているために,この叙述トリックが,効果的に生かされていない。
志田正胤と志田万里殺しの密室トリック。これは氷を利用した古典的なもの。凍らせたスポンジを利用した密室トリックとなっている。氷を解かすための仕掛けとして,殺人があった部屋に日光の光が集まる仕掛けになっている。五覚堂が回転するのもそれを効果的なものにしているという仕掛け。これも大掛かりなトリックではあるが,氷か…。密室トリックの物理トリックとしてはあまりにも古典的。これがメイントリックというのはちょっと残念。
二つ目の殺人,志田胤次,志田大人,志田三胤殺しの密室トリックは,壁の隙間を五覚堂を回転させることで大きくして入るというもの。このトリックで大柄な二人を容疑者から外すという消去法にも利用している。これは密室トリックとしては斬新ではある。とはいえバカミスチックでもある。そもそも,館が回転するという仕掛けそのものが,ややバカミスチックでもあるのだが。
犯人は,辻弁護士。そもそもミスディレクションになる人物がいないため,意外性はそれほどでもない。手がかりとしてバンドエイドをキズバンと言っていることは仕掛けてとしてもチープだし,簡単に見抜ける。携帯電話を預かっていたことが,明かりとして利用しているという傍証になっているのは少し面白い。小山内亜美がライターが無くてたばこを吸えなかったというところが伏線になっているところも面白い。
総じてみてどうだろう。周木律らしい作品だと思う。堂が回転するという仕掛けを利用した大掛かりでバカミスチックなトリックと小技の組合せ。その上で,意外性
ある犯人を出そうとしているが,ミスディレクションが上手くないので意外性がそれほどない。伏線は結構あからさまでこれも上手いまで言えず。
要はトリックは結構面白いが上手くいかせていない。小説が下手なのである。面白いかというとそれほどでもなく…総合評価は★3で。
○ サプライズ ★★★☆☆
志田悟が盲目であったという叙述トリックと,辻弁護士が犯人であるという意外な犯人。この2つはもっと小説が上手ければ,より意外性が高い仕上げにできたと思う。小説がさほど上手くないために,そこまで驚けず。★3止まり
○ 熱中度 ★★☆☆☆
冗長。五覚堂内のシーン,十和田と善知鳥の二人のシーン,宮司司のシーンの3つが交互に描かれるのも没入館を削ぐ。小説が上手ければもっと引き込まれると思うだが,そこまで熱中できない。
○ インパクト ★★☆☆☆
志田悟が盲目であるという叙述トリック,館が動いてコンクリートの壁のひずみが広がり,そこから密室に入るというトリックなど,それなりにインパクトがある仕掛けてがあるはずなのに,印象に残らない。見せ方が下手だからだと思う。
○ キャラクター ★★☆☆☆
十和田忠人はそれなりに面白いキャラクター。しかし,善知鳥神や,宮司司,宮司百合子はさっぱり魅力的でない。個性が見えてこない。そのほかの人物は犯人も含めてさっぱり描けていない。このキャラクターの薄さがインパクトの無さや熱中度の低さにつながっているように感じる。
○ 読後感 ★★★☆☆
次につながるという終わり方。いよいよシリーズ全体の黒幕である藤衛が死刑判決を受けた裁判の再審を行い,無罪を勝ち取って出所するという。よって,この作品そのものには読後感というものは感じない。まだ途中という印象