感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2021年05月14日
すべてを諦め、流れるままに男たちに身を任せてきた夏姫が、最後にみせた意思力のすごさ。圧巻でした。身を切るような覚悟をしなければ、幸せになどなれないということを、教わりました。悪女という評価がないのに歴史に名をのこした珍しい女性です。
Posted by ブクログ 2012年10月26日
『花の歳月』の解説で、宮城谷氏は「風」を作品の中に取り入れているとあった。
確かに、そう意識しながら読むとその表現は多いが、とりわけこの作品では「風」がよく登場したように感じる。
一方、タイトルからメインであろうと思われる夏姫の登場は極僅かで、むしろ彼女の隣で翻弄された男達の出番が多い。
だが、夏姫...続きを読むが「風」なら、作者は、夏姫を夏姫としてではなく、「風」として描きたかったのかもしれない。
そうだとすれば、納得だ。
Posted by ブクログ 2015年10月25日
上巻の最後の方までは存在の希薄だった、主人公・夏姫の物語が動き始める。
下巻の序盤、恩人である家宰の一族を救うために有力者たちに身を投げ出す場面は悲壮で胸が痛い。
幼い頃から抵抗するでもなく、男たちに身を任せて来た夏姫という人物が、よくわからないままで話は進んできた。しかし決して自ら頽廃を好むわけ...続きを読むではなく、喜ぶわけでもないことがわかった。むしろこの時の無私の決意と行動によって彼女の清廉さが際立ち、ようやく彼女の内側の魅力が垣間見えた。隠されてきただけに強烈な印象を伴って。
しかし夏姫の持つ最大にして唯一の武器は、結局はその美貌と肉体であり、男たちは勝手に溺れていく。ここへきて、夏姫の物語は展開すればするほど何もかもが悲劇的である。特に一人息子の子南の苦しみは想像を絶するし、理解されず憎まれるしかない母の気持ちも、また壮絶な悲劇である。
だが物語も後半にさしかかって、ようやく救いの光のようなものが一筋差し込んでくる。それは夏姫に対して欲望ではなく純粋な愛情と優しさを寄せてくれる、それも思慮深く時機を待てる人物の登場である。
運命の恋とか真実の愛とかいうには、なんだか唐突に始まった感じでやはり読んでいて困惑するのだが、そこが主題と思うからそうなのであって、夏姫を取り巻く国々と諸侯、戦争と政治の描写は相変わらず魅力的で、生き生きとしている。
また、夏姫と同じようにここへきて、にわかにスポットを当てられた夏姫の侍女もまた魅力的な女性である。彼女がずっと夏姫を思って寄り添ってきたこと、その事実がこれまでの滅茶苦茶な悲劇をいくぶんでも和らげてくれるようだ。
巫臣と結ばれた後の夏姫の可愛らしさは「童女」のようである。十歳にして「あれは童女ではない」と言われた彼女がようやく本来の姿に立ち返ることが出来たようで、気持ちの良いラストだった。
Posted by ブクログ 2013年01月27日
難しい。これまで傾国の美女の話といえば、その時代の男女の失笑噺が多い。傾国の美女を客観的、男性的目線から捉え、その苦悩を浮き彫りしたところが共感を呼んでると思う。神道と当時の対女性観がよくわかる秀作。
Posted by ブクログ 2009年10月09日
上巻では登場の少なかった夏姫がいよいよたっぷりと登場。しかし、兄は殺され、かけがえのない息子も死に、まさしく作者が意図する時代に翻弄される女性を描いている。しかも、彼女の生き方も首尾一貫しておらず、現実の人間らしくていい感じ。でも、よくまあ調べましたねと言う宮城谷ワールドです。他の作品につながる、い...続きを読むやつなげているのも面白い。
Posted by ブクログ 2009年10月04日
肝心の夏姫の心が見えにくく、最後に心から愛する夫を得た時の変貌ぶりも「?」といった印象が。むしろ楚王とか子南とか武将たちのほうが輝いてました。これは「燃えよ剣」を読んだときの読後感に似てる。
Posted by ブクログ 2009年10月04日
夏姫は幾人もの男たちを通じても物語の中で終始ぼんやりとした存在。読み手はその存在を汲み取ろうとせずに先に進めていくのがいいのかもしれない。そしてようやく人形に命が吹き込まれるような、夏姫に出会う。
史実どおりですがなんといっても成長した夏姫の長男・徴舒が哀れです。
Posted by ブクログ 2021年09月18日
古代中国・春秋時代に生きた夏姫と呼ばれた姫の物語。
絶世の美女であり、夏姫を手に入れたものは次々と滅んでいった。
それ故に希代の悪女とも言われているようですが、
妖艶な美しさが男たちを狂わせていったのでしょう。
かなり色っぽい場面も描かれていますが、
夏姫自身の物語と言うよりも...続きを読む、
夏姫を取り巻く男たちの物語と言った感じです。
国と国の覇を争う心理戦。
読んでいて非常にわくわくしてきます。
Posted by ブクログ 2013年11月24日
楚に移った夏姫は、巫臣と出会い、
自身の宿命?から解き放たれる。
いつも思うけど、宮城谷さんの小説は
本当に読みやすい。
こういう、古代中国の話って、好きだけど
漢字が多くて似た名前が多くて、地理も不明で
すぐにわからなくなっちゃうんだけど。
宮城谷さんにはそれがないんだよなぁ。すごいなぁ。
Posted by ブクログ 2013年05月14日
春秋戦国時代の話。
鄭の国の夏姫という姫が主人公で、その美しすぎる容貌のために波乱万丈の人生を送ることになる。
周陳晋楚斉などいくつもの国同士の戦いに巻き込まれ、夏姫は愛する心を失い幸せに笑えなくなってしまう。
男たちの権力争いや駆け引きの道具とされた女性の悲しみや怨みがメインで描かれているが、どう...続きを読むしようもなく姫に心奪われる男たちの様子もよく描かれている。
結末で救われる。