【感想・ネタバレ】新装版 俄 浪華遊侠伝(上)のレビュー

あらすじ

「この銭、貰うた」。逃げた父の代わりに金を稼がねばならなくなった万吉は、身体を張った"どつかれ屋"として身を起こす。やがて生来の勘とど根性と愛嬌を元手に、堂島の米相場破りを成功させ、度胸一の極道屋・明石屋万吉として知らぬ者のない存在となった。そんな万吉に大坂町奉行から密かな依頼がくる。

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匿名

ネタバレ 購入済み

大阪在住なので大体のの場所を
思い浮かべなが読めました。
初めに銭を稼ぐ方法がどつかれ屋とは笑
その後も常識では考えられない方法で
修羅場をくぐり抜けます。
下巻も楽しみです。

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2022年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「そんなこと」
 小春は当惑した。めっさと惚れるな、といわれたところで、どうにもならぬことだ。
「深いのはいかん」
 情愛の深いのは、である。
「サラサラと行け。万事、水が浅瀬を流れるがごとくさらさらと人の世を過ぎてゆく。そいつで行ってもらいたい。淀みの水のようなおなごは、わいはきらいや」
「さあ」
 小春は、、くびをひねっている。どうもこの花婿のいうことは片言でよくわからない。
「要するにやな」
 万吉は、いった。
「わいは極道屋という稼業がら、いつ死ぬかわからん。あすにも、すぱっと」
 頸を煙管でたたいた。
「飛ぶかもしれん。その時、わしを偲んで泣きくさる奴が、この世で一人でも居たらかなわん。ぞっとする」
 小春は、ぼう然とした。
「そやがな。そういうときは、万吉も死にくさったかとさらさらと笑い、あくる日からけろっと忘れてくれるような嫁がええ」
(やっぱり怪態なお人や」
 小春は万吉をじっと見ている。どう理解しようにも理解しようのない人物であるようだった。

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2021年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

江戸末期の任侠モノです。明石屋万吉、晩年の小林左兵衛という実在の人物を描いています。左兵衛は晩年、自分の一生を振り返って、”わが一生は、一場の俄のようなものだ”と言った言葉から題名が付けられている。”俄”とは、路上でやる即興喜劇のことだ。当時、大阪で大いにもてはやされていたようだ。

万吉は一生、智恵より大事なものは覚悟だと思って生きた。この覚悟が万吉を日本一の侠客にしたと言っても過言ではない。万吉のたった一つの特技は、殴られることだ。半殺しの目に合わされても、音一つあげないのである。最初は憎み、次いで驚嘆し、遂には憎悪や驚嘆が尊敬にかわっていくのだ。あいつは度胸の化け物だとも言われた。ただ、万吉は貧乏人が救われることなら、命を張って悪と戦った。入牢も拷問も”行”のように心得ているのだ。幕府に、当時一番ひどい拷問とされた蝦責めの刑にも耐え、知らず知らず、大阪庶民からあがめられる存在になっていった。

明石屋万吉は”無官のお奉行”と呼ばれたり”北町奉行”と呼ばれたりした。むろん、大阪には東西奉行はいるが、北町奉行はいない。明石屋のためなら命を捨てるという男達が大阪には3千人いると言われた。万吉は、江戸や他国の博徒のように直属の子分を持たない。ただ、困っている連中に米をくれてやったり、飯を食わせてやったりしているだけだ。彼らはいざという時、万吉の私兵になり、発揮しようとすれば町奉行所以上の武力が十分に出せるほどの身代となっていたのだった。

そんな万吉の力を、蛤御門の変や戊辰戦争では幕府方が利用する。万吉は幕府方の一柳家の雇われ藩士となったものの、蛤御門の変で都落ちしている長州兵を匿い、逃がした。万吉は自分の役目として、”往来安全”を第一に考え、幕府、長州わけ隔てなく、負傷者を助けた。長州藩の遠藤謹介や桂小五郎なども万吉に助けられたのである。これが維新後、万吉におとずれる様々な災厄から万吉を救うことになるとは本人も考えても見なかったし、そんなことを考えて人助けをしたわけでもなかろう。

結局、万吉が生涯を通して貫いたのは、与え続けることであった。自分の命・金を困っている人を見たら何も考えず投げ出してしまう。一度会った縁を大切にし、そこに自分の命をかけ、そうすることで、日本一の任侠者と名声を得るようになったのだろう。今まさに生きているときにしか使いようがない自分の命を与えることによって、実はそれより大きな、後世にわたる永遠の名誉を得たのである。

全2巻

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2013年11月12日

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