あらすじ
「兵法家と兵学者は違う」孫武の時代から約150年後、後孫にあたる孫ビンはホウ涓(けん)の影響で兵法のおもしろさに目覚めた。やがて魏につかえ大将軍となったほう涓を訪ねた孫びんだが、その才能に嫉妬し恐れたほう涓の残酷なたくらみに嵌ってしまう。かつての友への復讐と兵法家としての意地を賭けた最後の戦いが始まる。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
下巻の主人公は、上巻の主人公の孫武の子孫である孫臏。「膝きりの刑」の意味である「臏」であるが、「孫繽」が足を切られて自嘲気味に「孫臏」を名乗るという作者の設定の工夫はお見事。後半は自らの嫉妬心で孫品の足を切った龐涓への復讐譚だが、上巻の準主役である「絶対復讐するマン」伍子胥の陰湿なそれとは対照的にカラリと描かれており、クライマックスの馬陵の戦いまで手に汗握る展開であった。また、あとがきで孫武実在説を初めて知った。
Posted by ブクログ
上巻の方がいわゆる孫子その人に関する小説だが、小説としては下巻の方が物語として一貫したが流れがありずっと面白かった。
解説と上巻の前置きを改めて読んでみるとその理由が理解できるような気がする。原典に十分な記述がない孫武と、それよりは逸話が多く残っている孫臏の違いであり、歴史を大きく変えてまで小説を創作するものではないという著者の姿勢によるものであろう。
なかには歴史的事実を顧みない歴史小説もあったりするが、個人的にはこうした姿勢の方が好感が持てる。
さて、それはさておき、孫子の兵法の実践として面白い小説だった。