あらすじ
太古の森をいだく島へ――学生時代の同窓生だった男女四人は、俗世と隔絶された目的地を目指す。過去を取り戻す旅は、ある夜を境に消息を絶った共通の知人、梶原憂理(ゆうり)を浮かび上がらせる。あまりにも美しかった女の影は、十数年を経た今でも各人の胸に深く刻み込まれていた。「美しい謎」に満ちた切ない物語。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
・人間は自分の手を動かさないと、どんどん他人に対して冷たくなるし、想像力が鈍ってくる。
・毎日少しづつ。いつのまにか取り返しのつかない大きなものになっている。
・人によって、老化のスピードがこうも違うものかと、たまに誰かに会うと思い知らされる。
それは肉体の老化のスピードではなく、精神の老化のスピードなのだろう。
その人の生活圏が老化のスピードを左右する。職場や住環境、接する人間の種類、出入りする店など。
辛気臭い職場で辛気臭い仕事をし、辛気臭い人間としか付き合っていない人間は、当然ながら早く辛気臭くなる。
・幸福な時の思考はワンパターンに陥りがちだが、不幸になると実に様々な事を考えるものだ。
特に、大事にしていたものを失った時には。
・よく似た二人は、自分の似ているところに共感する。
何故こんなに感じるところが似ているんだろうと感動する。
しかし、以心伝心はやがて空虚になり、単なるコミュニケーションの欠如になっていく。
そっくりだからこそ、欠点も鏡のように自分に跳ね返ってくる。
それは自己嫌悪になり、ついには相手への憎悪になる。
同じ部分の欠けている二人は、どんなにもがいても欠落している部分を互いにフォローすることが出来ない。
・旅先で写真を撮るのは社会的な行為なのだ。一緒に旅行したメンバーと、社会的な絆を確認する行為。
それこそ、、証拠作り、アリバイ作りだ。
だから逆に、これだけくだけた利害関係のないメンバーだと、その必要を忘れてしまう。
身体の中に残る旅。そんな旅が出来るのは幸運だろう。そして、恐らくこの旅は、その幸運な旅の一つなのだ。
Posted by ブクログ
何回読み返しても面白い。下巻もあり結構長いけどとにかくよく喋る登場人物たちで、テンポもよく飽きない。章の構成もすごく腹落ちするものだった。特に会話の内容が好きで、本人たちの言い回しを積極的に使いたくなってしまう。
あの憂理がこんな結末を迎えてたなんて信じたくはないけど、、とにかく面白いおすすめの本です。
Posted by ブクログ
これはミステリーなのかファンタジーなのか……。
現実世界の出来事の話ではあるんだけど、そもそも理瀬シリーズに出てくる学校?が現実感が全然ないしよくわからない。
一応、理瀬シリーズの1作に入ってるけど、、全然関係ない人たちが出てきて???となっていたけど、全員憂理の友人だったのか。
アラフォーの男女4人が、日常を離れてY島(おそらく屋久島)に旅をする。
一章ごとに視点が変わっていく。
その度に、視点となる人物の過去や、封印していた思いが明らかになっていく。
展開的にラストは蒔生だと思ってたんだけど、違った。
そして、憂理はもう死んでいるのか!?
Posted by ブクログ
『美しい謎』を考える、学生時代中の良かった男女四人がY島を旅する話。
理瀬シリーズが大好きなのだが、この話は優理がチラチラ出てきていてお気に入り。
個人的には彰彦が1番自分に近く感じた。
Posted by ブクログ
理瀬シリーズを最初から読み返す中で、本作はまだ読んでなかったことに気が付きました。
わくわくして読んでいても一向に理瀬が出てこないぞ・・・?と思っていたら、憂理の話なんですね。
「麦の海~」の中の憂理は、美人だけどあっけらかんとした印象で、あまり謎めいた雰囲気ではなかったのですが、「黒と茶の~」では謎めいた美しい女性という印象でした。
でもそれは、あの学園と理瀨やヨハンが謎めきすぎていたため、憂理が目立たなかっただけだったのかもしれません。
屋久島の美しい自然と非日常感が、参加者それぞれの心の中に眠っていた感情をあらわにするようでした。
読んでいくとどんどんそれぞれの人物の心の中に沈んでいくような不思議な感覚になりました。
上巻では利枝子と彰彦について。
それぞれがその時々の会話などからヒントを得ながら深堀していきます。
この構成になっていると知ってからは、蒔生の話を読みたいなと思っていましたが、彰彦の最後が衝撃すぎて、あっという間に読み終えてしまいました。
今のところ節子には何もなさそう(失礼)ですが、これは期待してしまいます。
下巻が楽しみです。
Posted by ブクログ
「利枝子」
嫌いになりそうな女性と思わせてとても好きな人。冷静で、頭が良くて、蒔生のことがずっと好き。この旅に来て1番よかったのは利枝子なんじゃないかと思う。利枝子の想いはずっと蒔生に向かっていて、下巻だけれど、再婚しないでっていうとことは、特に好き。
「彰彦」
とても明るくて、とてつもない闇を抱えている。お姉さんの本当の気持ちにきっと気づいているのに、絶対に向き合いたくないと思っている感じ。友達だったら1番楽しい人。上巻は、本当に蒔生を愛したふたりの想い。