あらすじ
大正三年、帝大講師・南辺田廣章(みなべだこうしょう)と書生・山内真汐(やまうちましお)は北海道・室蘭港に降り立った。流れ歩く村(ヤイケㇱテコタン)――鬼の襲撃を恐れ、アイヌに擬態し隠れ住むその村には、男女が入れ替わる奇妙な婚礼が伝承されていた。今は亡きその村の、最後の『神に聴く者(イコンヌㇷ゚)』である女のもとに彼らが辿り着いたとき、過去と現在の謎が繋がり、悲しき真実が浮かび上がる。ふたりの少女の贖罪に涙する、民俗学ミステリ。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
暁男さんのお母さん、チㇱが亡くなる前に廣章先生と出会えて、話が出来て良かった。
真汐が熊の首を落とすのにこだわった理由が熊を知らなかったからというのに納得。
確かに位置が分からん心臓突こうとして失敗する可能性あるけど首落としたら終わりですからね。
那賀坊が比佐乃さんをこいさんって呼んだのは何でや思ったけど特に気にして無かったらまさかその呼び方がってびっくりしましたね。
人と違う所があるとは言え、人鬼を物の様に扱う那賀坊をただの人と言えるのか。
那賀坊を殺して全てが解決する訳では無いが、正直そこで江井さんに殺されて良かったと思ってしまう。
全てが分かったから那賀坊がチㇱから村がなくなった話を聞いて「勿体ない」と言ったのが恐ろしい。
鬼とは何か。どちらが鬼なのか。
江井さんの人となりや目的ははっきりと分からないがこの先も無事であればと思う。
遅かれ早かれ村は無くなっていたんだろうな。
生き地獄か何も知らないまま死ぬか。どちらも辛い。
信じることがどれだけ大切で、どれだけ難しいか。
チㇱはタイミングが悪かった。信じきることが出来なかった。
だから息子夫婦に信じることの大切さを伝えて、守るために亡くなった。
比佐乃さんも暁男さんを庇って亡くなった。
大切な人たちが同時に亡くなってしまったけど、どうか前を向いて進んで欲しい。
Posted by ブクログ
奇譚蒐集録シリーズの二作目。前作は沖縄が舞台だったけど、今作は北海道へ飛んである集落に伝わる奇習の謎にせまる。その集落の者は鬼に追われているとして、長く定住することを避け、また男女入れ替え婚のような独特の習俗を持つ。一見アイヌだが、アイヌでも和人でもない。すでに二人を除いて全滅した集落の、その絶滅の謎と奇習の意味を解こうとする帝大講師・南辺田廣章と真汐の旅が物語の縦糸で、これに生き残りの青年と大店の娘の悲恋やら、彼の叔母の過去話やらが絡んでくる。盛り込みすぎな気もするけれど、力作は間違いない。ただ前作に比べると全体に薄味。前作が濃すぎたという言い方もできるから、評価は微妙だけれど、肝心な入れ替え婚の意味に驚きがないのはやはり良くないかな。